介護タクシーの開業を考えている人が不安に思うことの一つが、「事故が起きた場合の責任」です。

特に高齢者や身体の不自由な方を乗せる仕事であるため、「普通のタクシーより責任が重いのではないか」と感じる人も少なくありません。

なかには、開業に二の足を踏んでしまう方もいらっしゃいます。

ですが、必要以上に恐れる必要はありません。

実際のところ、介護タクシーで事故が起きた場合の責任は、事故の種類によって変わります。

交通事故として扱われる場合もあれば、介助中の事故として事業者の安全配慮が問われるケースもあります。

しかし、事故の内容や責任範囲を正しく理解し、保険や対策を整えておけば、必要以上の責任を取らされることはないでしょう。

そこで今回は、「介護タクシー 事故 責任」というテーマを中心に、実際に起きやすい事故の種類、責任の範囲、事故が起きたときの初期対応、そして保険対策まで詳しく解説します。

この記事は…

  • 介護タクシーの開業を志している方
  • 開業希望者だが、不安のある方
  • 開業して間もない、介護タクシー経営者

…などにお読みいただけると幸いです。

介護タクシーの事故は「運転中」より「介助中」が多い

介護タクシーの事故というと、追突事故や接触事故などの交通事故を想像する人が多いかもしれません。

しかし実際には、交通事故よりも「介助中の事故」が多いと言われています。

理由は、利用者の多くが高齢者や身体機能が低下している方だからです。

歩行が不安定であったり、車椅子を利用していたりするため、乗り降りの際のわずかな段差やバランスの崩れが事故につながります。

そのことを理解できていない新人だったり、うっかり失念していたりすると事故の確率は跳ね上がります。

そのため、介護タクシーでは安全運転に気を付けるのはもちろんですが、それ以上に乗降介助の安全管理が非常に重要になります。

よくある介助事故トップ3

介護タクシーで実際に多い事故は、主に次の3つです。

介助事故トップ3
  1. 車椅子スロープでの転倒
  2. 車椅子固定ミスによる車内事故
  3. 歩行介助中の転倒

それぞれの事故について詳しく見ていきましょう。

1.車椅子スロープでの転倒

最も多い事故の一つが、スロープを使った乗降時の転倒です。

車椅子利用者は、スロープを使ってそのまま車内へ乗り込むことが多くあります。

しかし、スロープの角度が急だったり、雨の日で路面が滑りやすかったりすると、車椅子が不安定になり転倒することがあります。

特に注意が必要なのは、坂道や傾斜のある駐車場です。

車椅子が前後に動きやすくなり、思わぬ事故につながることがあります。

スロープ使用時は、必ずブレーキ確認を行い、ゆっくりと乗降することが大切です。

2.車椅子固定ミスによる車内事故

また車椅子の固定ミスも、介護タクシーで起こりやすい事故です。

車椅子は専用の固定ベルトで車体に固定しますが、固定が不十分だと急ブレーキやカーブの際に車椅子が動いてしまいます。

その結果、利用者が転倒したり、体をぶつけたりすることがあります。

また、シートベルトの装着を忘れてしまうケースもあります

車椅子の固定だけでなく、利用者自身のシートベルトも必ず確認する必要があります。

このタイプの事故は、事前の確認で防げるものがほとんどです。

そのため、出発前チェックが重要。

急いでいても、習慣化する癖をつけましょう。

3.歩行介助中の転倒

車椅子ではなく歩行で乗車する利用者の場合、歩行介助中の転倒が起きることがあります。

高齢者は足の筋力やバランス感覚が低下していることが多く、玄関の段差や駐車場の傾斜などでつまずくことがあります。

特に冬場や雨の日は路面が滑りやすくなるため注意が必要です。

歩行介助では、急がせないことが何より重要です。

利用者のペースに合わせてゆっくり移動することで、多くの事故を防ぐことができます。

※運転中の交通事故の場合

もちろん、通常の交通事故が起きる可能性もあります。

追突事故や接触事故など、一般車と同じような事故は貰うこともあるため、防ぎきることは出来ません。

この場合の扱いは基本的に一般車両と同じで、自動車保険によって補償されます。

利用者が怪我をした場合でも、対人保険や搭乗者傷害保険などで対応することになります。

つまり、交通事故そのものは特別な扱いになるわけではありません。

むしろ介護タクシーで注意すべきなのは、先に紹介したような介助中の事故なのです。

介護タクシー事故の責任範囲

介護タクシーで事故が起きた場合、責任の範囲は事故の種類によって変わります。

前述したように交通事故の場合は、基本的に一般の自動車事故と同じ扱いになります。

過失割合に応じて、自動車保険で補償されます。

一方、乗降介助中の転倒や車椅子固定ミスなどは、事業者の安全配慮義務が問われる可能性があります。

安全確認を怠っていた場合には、事業者責任になるケースもありえます。

ただし、利用者の急な体調悪化や持病による発作などは、通常は事業者責任にはなりません。

ですが体調が悪い状態を見過ごして搬送した場合などは、問題になる可能性もあります。

ですので、送迎前の様子をよく観察しておくことが大切です。

事故リスクに備える保険

介護タクシーでは、事故リスクに備えて複数の保険に加入することが一般的です。

というか、入らなければ怖くて事業は出来ないでしょうし、やるべきではありません。

そもそも「自賠責保険」と「任意保険」には入っていないと、営業許可はおりません。

それらを含めて介護タクシーが入る一般的な保険は以下の通りです。

介護タクシーが入る保険
  • 自動車保険(自賠責保険および任意保険)
  • 搭乗者傷害保険
  • 事業者賠償責任保険
  • 車両保険

車を運転するものとして自動車保険…いわゆる自賠責と任意保険に入るのは当然です。

さらにいえば、事業者はほぼ全員が対人対物無制限にはいられています。

介護タクシーとして特に重要なのが「事業者賠償責任保険」です。

これは乗降介助中の事故などを補償する保険で、介護タクシーの仕事では非常に重要です。

これらの保険を合わせても、年間の保険料は数万円から十万円程度が一般的です。

万が一の事故に備えるための必要なコストだと、割り切りましょう。

また、保険については以前にも記事にしていますので、こちらもご確認ください。

事故が起きたときの初期対応

事故が起きた場合、最も大切なのは落ち着いて初期対応を行うことです。

対応が遅れたり誤った対応をすると、トラブルが大きくなる可能性があります。

定期的に、基本的な対応の流れを確認しておきましょう。

初期対応の流れ

①安全確認利用者のケガや体調を確認
②救急要請必要があれば119番通報
③警察へ連絡交通事故ならどんなに軽微でも警察へ連絡
④保険会社へ連絡加入している保険会社へ事故報告
⑤記録事故の状況(場所・時間・状況)を記録
⑥説明利用者や家族に真摯に説明

まず重要なのは、利用者の安全確認です。

高齢者の場合、見た目には怪我がなくても後から痛みが出ることがあります。

少しでも異常があれば、医療機関を受診してもらいましょう。

利用者の身体が第一優先ですからね。

保険を適用する際には、医師の診断書が必要となるので、その取得もお願いしておきましょう。

また交通事故の場合、利用者のケガや体調を確認したのち、安全を確保するよう心がけましょう。

例えば、車両のボンネット部分が損傷しているのに、エンジンをかけたままにするのは危険です。

エンジンを切り、利用者とともに車外の安全な場所で、警察や救急の到着を待ちましょう。

軽微だからと言って警察に連絡しないのは、良くありません。

事故証明がなければ保険が使えないこともあるのです。

そして何より、介護タクシーとして大切なのは、利用者と家族への誠実な説明です。

事故が起きた事実を隠したり、曖昧にしたりすると、後々大きなトラブルにつながる可能性があります。

冷静に状況を説明し、誠実に対応することが信頼関係を守ることにつながります。

~最後に~

いかがでしたか?

介護タクシーの事故と責任について不安を感じる人は多いです。

しかし実際には、事故の多くは日常的な安全確認によって防ぐことができます。

特に注意すべきなのは運転中の事故よりも、乗降介助や歩行介助の場面です。

車椅子の固定確認や利用者の歩行サポートなどを丁寧に行うことで、事故のリスクは大きく減らすことができます。

また、万が一事故が起きた場合でも、利用者の安全確認を最優先にし、警察や保険会社へ連絡するなど適切な初期対応を行うことが重要です。

介護タクシーはリスクゼロの仕事ではありませんが、正しい知識と準備があれば安全に運営できる仕事です。

開業を考えている方は、事故対策と保険の備えを整えたうえで、安心して事業をスタートさせてください。

この記事があなたの一助となれば幸いです。