介護タクシー事業に興味を持つ人の多くは、「人の役に立ちたい」「社会貢献がしたい」といった思いを持っています。

実際、利用者やその家族から感謝される場面も多く、大きなやりがいを感じられる仕事であることは間違いありません。

しかしその一方で、介護タクシーはれっきとした「事業」です。

事業である限り、収益を確保しなければ継続できない現実も存在します。

せっかく社会貢献が出来る仕事だと思って介護タクシーを選んだ経営者の中には、利用者から沢山お金を徴収することに違和感を覚える方もいます。

反対に、稼げる仕事だと思って始めた方の中には、「思ったよりも稼げない。…けど、地域の足として定着してしまって、辞めようにも辞めれない…」といった方もいます。

では、介護タクシーは「仕事」なのでしょうか。

それとも「使命」なのでしょうか。

そこで今回は、経営者の視点から、その現実と理想について深く掘り下げていきたいと思います。

この記事は…

  • 介護タクシーをはじめてみようと思っている方
  • 介護タクシーを経営しているが、そのあり方に悩んでいる方
  • 何かしらの起業を考えている方

…などにお読みいただけると幸いです。

介護タクシーに「使命」を感じる瞬間

まず、多くの事業者が共通して感じるのは、「これは単なる移動サービスではない」という点でしょう。

例えば、「一人で通院できない高齢者を送迎する」といった介護タクシーでは当たり前の仕事。

この仕事だけで多くの「有意義」が生まれています。

まずは「利用者である高齢者を支えている」こと。

さらには「外出の機会を提供し、生活の質を高めている」こと。

また「利用者家族の介護負担を軽減している」こと。

これだけの有意義を生じさせる介護タクシーという役割は、単なる輸送業の枠を超えているといっても過言ではありません。

特に定期利用の方やその家族からの信頼は強くなります。

印象的なのは、「あなたがいないと困る」と言われる瞬間でしょう。

単なるサービス提供者ではなく、なくてはならない生活の一部として認識されているということでもあります。

また長く続けていると、最期の外出を支えるケースに関わることもでてきます。

その責任の重さと同時に、大きな意義を感じる場面でもあります。

このような経験を通じて、多くの事業者が「使命感」を持つようになっていきます。

現実としての「仕事」ー甘くない経営環境

一方で、経営という視点で見ると、介護タクシーは決して楽なビジネスではありません。

特に苦労するのが以下の3点です。

  1. 利益構造の厳しさ
  2. コストの増加
  3. クレームやトラブル対応

1.利益構造の厳しさ

介護タクシーの基本的な利益構造は「件数×回転率」です。

ところが、介護タクシーは一般タクシーと比べて回転率は低くなりがちです。

というのも、乗降介助に時間がかかったり、1件当たりの拘束時間も長くなる傾向があります。

また、1件で売り上げを伸ばせる「長距離利用」は必ずしも多くはありません。

そのため、売り上げが思うように伸びないケースも少なくないのです。

2.コストの増加

また、介護タクシーは「固定費」…いわゆるコストが多くかかる事業でもあります。

車両のローンやリース代、車両の維持費や保険料、福祉機器の導入費用など、ぱっと思いつくだけでも多くの固定費がかかってきます。

さらには人を雇う場合は「人件費」がかかりますし、事務所や駐車場を借りる場合は「家賃」や「駐車代」がかかります。

特に開業初期は、収益よりも支出が先行することがほとんどです。

そのため、資金繰りに苦労する事業者も少なくありません。

3.クレームやトラブル対応

お金の面以上に苦労するのが「クレーム」や「トラブル」への対応でしょう。

よくあるトラブルが、「サービス内容の認識の違い」です。

また「時間の遅れに対する不満」も、よくクレームとして寄せられます。

さらには、「利用者の家族とのコミニケーション不足」がトラブルに発展することもまれにあります。

こうした問題への対処も、経営者として避けては通れません。

「使命」だけでは続かない理由

介護タクシーに強い使命感を持つことは素晴らしいことですが、それだけで事業を続けることはできません。

なぜなら、前項で記したように、介護タクシーの経営環境は甘くはないからです。

そのため、しっかりとした「収益」が必要になってきます。

もしも収益がなければ、送迎サービスを提供し続けることはできません。

適正な価格設定をしなければ、事業が成り立たないのは明白です。

それでも無理な対応をしようとすれば、必ずどこかで自身の負担が限界に達してしまうでしょう。

特に注意しなければならないのは「良い人であろうとすること」でしょう。

  • 無理な時間外対応を受ける
  • 料金を曖昧にする
  • 過剰なサービスを提供する

こうした行動は一時的には喜ばれるかもしれません。

しかし、長期的には事業を圧迫し、結果的にサービス継続が困難になります。

事業を続けられなくなるということは、経営者であるあなたも困りますが、利用者とその関係者も困るのです。

そのため「使命感」で始めた介護タクシーであっても、「良い人であろうとすること」はやめましょう。

「仕事」としての視点を持つ重要性

では、介護タクシーを長く続けるためにはどうすればよいのでしょうか?

それは「仕事」としての視点をしっかり持つことが不可欠です。

具体的には「サービス範囲を明確」にして、「適正な料金設定」を行うことです。

また「対応できること・対応できないことはしっかり線引きしておきましょう。

たとえ定期利用者から頼まれたとしても、対応できないことであれば、丁寧な説明の上お断りしなければなりません。

さらには「リピーターの確保」や「効率的なスケジュールの調整」を行い、「稼働率」もしっかり管理しましょう。

一般ビジネス同様、このような戦略が介護タクシーでも必要となります。

「経営感覚」のバランスを取ることが、安定した運営につながると心得ましょう。

理想は「使命を支えるビジネスモデル」

では、「仕事」と「使命」は相反するものなのでしょうか。

答えはNOです。

むしろ理想は「使命を実現するためのビジネス」を構築することです。

例えば、

  • 無理のない価格で継続可能なサービスを提供する
  • スタッフにも適正な待遇を用意する
  • 安定した運営によって利用者に安心を届ける

こうした仕組みを作ることで、「使命」はより長く、より多くの人に届けることができます。

前述したように、介護タクシーにとって当たり前の仕事である「送迎」を行うことで、多くの「有意義」が生まれているのです。

まずは、その「送迎」をしっかりと継続できるあなたのビジネスモデルを構築しましょう。

経営者としての覚悟が問われる仕事

介護タクシーは、「やりがいがある仕事」であると同時に、「責任の重い事業」でもあります。

まず、送迎に際して「利用者の命や安全を預かる責任」があります。

また「利用者の家族からの信頼に応える責任」があります。

さらには「事業を継続していく責任」があります。

これらを背負うのが介護タクシーの経営者なのです。

だからこそ、単なる「思いつき」で介護タクシーをはじめることはお勧めしません。

事業を続けるための「戦略」と、責任を背負う「覚悟」が必要になるでしょう。

~最後に ~仕事か使命か、その答えは…

介護タクシーは、「仕事」か「使命」か。

その答えは、おそらく「どちらでもある」です。

使命だけでは続かず、仕事だけでは満足できない。

この二つをどうバランスをとっていくのかが、事業者としての成長を左右します。

これから開業を考えている方も、すでに運営している方も、一度立ち止まって考えてみてください。

あなたにとって、この仕事は何なのか。

その答えが、今後の経営の方向性を決める大きなヒントになることでしょう。

いかがでしたか?

この記事があなたの一助となれば幸いです。