
介護タクシーは「許可を取れば始められる」事業です。
ですが、開業した介護タクシーが安定して続くかどうかは、また別の話。
実際に黒字化できるかどうかは、開業前の地域ニーズ調査でほぼ決まってしまうといっても良いでしょう。
特に都市部と地方・過疎地では、需要の構造も競合環境も大きく異なります。
そこを理解せずに介護タクシーを始めてしまうと大変です。
思ったように売り上げが伸びず、廃業の危険性すら出てくるのです。
そこで今回は、初心者でも実践できる具体的な調査方法を紹介しながら、都市部と地方それぞれで押さえるべきポイントを解説したいと思います。
この記事は…
- 介護タクシーの開業を志している方
- 開業して間もない介護タクシー事業者
- 第二の人生の仕事で悩んでいる方
…などにお読みいただけると幸いです。
意外かもしれませんが、介護タクシーは固定費の比率が高いビジネスです。
たとえば、車両代、保険、燃料費などは、利用がゼロでも発生します。
さらに事務所や駐車場などを借りていると、固定費は一気に増額します。
そのため「なんとなく需要がありそう」で始めると、稼働率不足で赤字になるケースが少なくありません。
赤字を回避するためにも、開業前の「ニーズ調査」は必須といってよいでしょう。
そしてニーズ調査は、単に「高齢者が多いか」を確認することではありません。
具体的に、次の3点を明確にすることが必要です。
- 誰が(どの層が)利用するのか
- 何のために利用するのか(通院・転院・買い物など)
- どれくらいの頻度で利用が見込めるのか
これを数字と現場の声で把握することが、事業成功の第一歩と捉えましょう。

冒頭にも記載したとおり、都市部と地方では環境が大きく異なります。
まずは基本調査で、自身が開業したい地域の「環境」を整理しましょう。
- 人口・高齢化率の確認
- 医療・介護施設数の把握
- 競合調査
以上は、都市部でも地方でも共通して行う項目です。
まずは市区町村の統計資料や地域包括支援センターの公開資料から、以下を確認します。
公的な公開資料なので、だれでも閲覧可能です。
- 65歳以上人口
- 要介護認定者数
- 高齢者単身世帯数
大事なのは、単純な人口規模だけではありません。
特に重要なのは「要介護認定者数」です。
なぜなら介護タクシー事業者にとって、ここが潜在顧客層となるからです。
次に見るべきは地域内にある病院や施設です。
なぜなら、送迎需要はこれらを中心に発生するからです。
そのため次にあげる施設は、確実に把握する必要があります。
- 病院・クリニック
- 透析施設
- 老人ホーム
- デイサービス
まずは、これらの数と立地を地図上に落としておきましょう。
また把握しておくべき項目の一つが「競合」についてです。
せっかくニーズが沢山あっても、それ以上の競合がいては意味がありませんからね。
- 介護タクシー事業者数
- 一般タクシー会社の福祉対応状況
- 料金体系
とりあえず、以上の項目は調査しておきましょう。
介護タクシーのみならず、一般タクシーの事業所にもUD規格の車両で福祉対応しているところも存在します。
さらには、要介護度の低い利用者の中には、料金の安さから一般タクシーを選ぶ人もいるくらいです。
十分競合足り得ますので、調査から外さないようにしましょう。
また、都市部では競合密度が高いため、価格競争にならない差別化ポイントを探す必要があります。

当然ですが、都市部では地方より人口多く、顧客となる高齢者層も多くいます。
つまり、「競合」も多く存在するということです。
そのため、都市部では「需要はあるが競争が激しい」という特徴があります。
そのことを踏まえ、都市部では以下の項目を特に調査する必要があります。
- 競合の空き時間帯
- 病院との紹介関係
- 緊急・当日対応ニーズ
まずは、競合となる他の介護タクシー事業所の数社へ電話してみましょう。
「当日依頼は可能か?」
「午前中は混んでいるか?空きの多い曜日は?」
…など、利用客としての質問をしてみるのです。
これにより、予約の取りやすさや空き時間帯などが判明します。
例えば、空きが少なく、混んでいるなら需要が多い証拠です。
参入の余地があると考えてよいでしょう。
都市部では地方以上に「紹介ルート」が売上を左右します。
そこで、紹介ルートの有力候補である病院やケアマネージャーに「困りごと」をヒアリングしましょう。
もちろん相手方の迷惑になっては「紹介」どころではありません。
こころよく受け入れてくれる相手方に絞りましょう。
その際、漏れがないよう以下のようなテンプレートを使うと便利です。
- 予約が取りづらい時間帯はありますか?
- 利用者からよく聞く不満は何ですか?
- どんなサービスがあれば助かりますか?
- 現在、紹介している介護タクシーは何社ありますか?
この調査をしっかり行うことで、「夜間対応」「階段介助強化」などの差別化要素が見えてきます。

地方は当然ながら人口が少ないため、利用者の絶対数も少なくなります。
だからといって、介護タクシーが成り立たないわけではありません。
なぜなら競合も少ないうえ、高齢者の割合は高いからです。
ですが、成立条件が都市部より複雑なのは確かです。
そのため自身の地域の基本調査は、都市部よりも丁寧に行うべきでしょう。
- 通院距離の長さ
- 公共交通の状況
- 透析・定期通院の有無
まずはバス路線や鉄道の本数を確認し、交通が不便な地域を特定します。
狙うべきは「その地域の交通インフラとなること」です。
そのため、見つけた空白地域に他の競合がいないことも確認すると良いでしょう。
また、見つけた地域が病院から遠く、回転率が上がらないからと言って候補から外す必要はありません。
なぜなら、介護タクシーは移動距離が長いほど単価は上がるからです。
場合によっては「待機料」で補うことも可能です。
介護タクシー事業を安定させる最も効率的な方法は「定期利用者」を確保することです。
つまり「透析患者」や「週3回デイサービス利用者」は、安定売上の柱になります。
そのため、地方では「少人数でも継続利用」をより意識して、日々の接遇を行いましょう。
地方向けのヒアリングに使うテンプレートは、以下のようになります。
- 透析利用者は何人いますか?
- 送迎で困っている家庭はありますか?
- 家族送迎が難しい時間帯は?
- 自治体の移送支援制度はありますか?

ここで都市部と地方の比較を確認しておきましょう。
| 項目 | 都市部 | 地方・過疎地域 |
| 競合 | 多い | 少ない |
| 単価 | やや低め | 距離次第で高め |
| 安定性 | 変動大 | 定期客で安定 |
| 調査の重点 | 差別化 | 継続利用 |
どんな調査もまずは初めてみないことには、勝手がわかりません。
そこで行動しやすいようチェックリストを用意しました。
自身にとって、難易度が低いところからで構いませんので、まずは行動してみましょう。
基礎データ収集
- □ 要介護認定者数を確認
- □ 高齢者単身世帯数を確認
- □ 医療機関数をリスト化
- □医療機関や施設をマップに落とし込み
現場ヒアリング
- □ ケアマネ3名以上に面談
- □ 病院ソーシャルワーカーへ訪問
- □ 既存事業者へ電話調査
需要予測試算
- □ 想定利用者数
- □ 月間利用回数
- □ 平均単価
- □ 月売上予測
例えば…
定期利用者5名 ・週2回利用 ・1回8,000円 の場合、
5人×月8回×8,000円=月32万円
このように具体的に数字へ落とし込みます。
想定が甘くなければ、これで介護タクシーが成立するかしないかが、見えてきます。
いかがでしたか?
介護タクシー開業の成否は、地域ニーズ調査で決まります。
都市部では競合との差別化、地方では継続利用者の確保がポイントです。
テンプレートを活用しつつ、有意義な調査を行いましょう。
そして数字と現場の声をもとに、勝てるエリア戦略を構築しましょう。
また、調査とは「やって終わり」ではありません。
「強みは何か」「主要ターゲットは誰か」「1日の目標稼働件数は何件か?」…まで明確にして、事業計画書に反映させましょう。
都市部なら「迅速対応型モデル」、地方なら「定期通院特化型モデル」など、戦略を言語化し、明確な目標とすることが大切なのです。
この記事があなたの一助となれば幸いです。
