転院搬送とは医療機関と医療機関の間で患者を搬送する行為です。
より高度な治療を受けるための搬送であったり、緊急で専門医療機関へ搬送する際に行われます。
また、逆に緊急期がすぎ病状が安定した患者さんを、フォローや総合ケアを目的として二次医療機関へ搬送することもあります。
これらの転院搬送は、救急車を利用することも多いのが現状です。
ただし「緊急性」という観点から、絶対に救急車が必要である事案も多くはありません。
つまり、転院搬送は救急車の不適正利用につながる危険をはらんでいます。
この問題は救急行政の圧迫にとどまりません。
なぜなら、「本来救急車を必要とする人へ、救急サービスを提供できない」という、命の危険までもはらんでいるからです。
人の命を救うべき医療が、命の危険につながる行為を行っていては本末転倒です。
そこで今回は、転院搬送における問題の解決策と、その一案である民間救急の活用について解説したいと思います。
この記事は…
- 医療関係者や介護関係者
- 救急車の適正利用について関心のある方
- 民間救急や介護タクシーの事業者または開業希望者
…などにお読みいただけると幸いです。
転院搬送における問題に対応する解決方法は現状では下記の2つあります。
- 「病院による医療搬送」の充実
- 「民間救急」の活用

前置きなく「医療搬送」と聞くと、救急車やドクターカー、さらにはドクターヘリなどで患者さんが運ばれるのをイメージする方も多いのではないでしょうか?
しかし実際には、急性期を過ぎ入院先の医療機関で治療を行い、ある程度の長距離搬送でも病状に変化がなく対応できる患者さんを別の医療機関へ搬送することも含まれます。
そこに「緊急性の有無」は関係ありません。
逆に言えば、緊急性がなくても「医療搬送」となるのです。
(もちろん救急車やドクターカーも医療搬送に含まれますよ。)
そして、転院搬送問題の解決策として「病院による医療搬送」が選択肢に挙げられます。
この「病院による医療搬送」は主に3つに分けられます。
- 病院が自前で所有・管理している搬送車両による転院搬送
- 病院職員(医師・看護師・救急救命士等)が同乗して行う医療管理下の搬送
- 病院が契約している民間救急・患者等搬送事業者を実質的に病院主導で運用するケース
これらの搬送は、救急車…いわゆる「消防救急」を利用することなく、完結できるので転院搬送の問題解決と急先鋒となることができるでしょう。
さらに、患者さんの状態を一番理解している病院自身が搬送するので、搬送中の容態変化に対するリスクが最も低くなります。
また、転院先の病院とも、仲介がないため調整も齟齬なく行うことが出来るため、メリットが大きいと言えます。
しかし、良いことづくめに思える病院の医療搬送も課題が多くあります。
代表的なものを挙げてみましょう。
- 人手不足
- 車両・装備の維持コスト
- 対応範囲の限界

何といっても、人手不足が最大のネックです。
それでなくとも医療業界も人手不足です。
人材の医師や看護師の獲得競争が激化している中で、医療搬送に人手を回す余裕がないのが実状です。
それでなくとも医療搬送は1人の患者に対し、3人程度の医療従事者が人手を割かれることになります。
患者全体に対するパフォーマンスが下がってしまうと考える医療機関も多いでしょう。
今現在、自前の搬送車…病院救急車を運用している病院でも、人員の多い「平日のみ、日中のみ対応」というのが一般的です。
また、車両や積載装備にもコストがかかります。
当然、病院も誰かが「経営」している以上、赤字では成り立たなくなります。
長く地域医療に貢献するためには、コスト意識は重要。
病院の負担を考えると、病院救急車はコスト上もパフォーマンスが低いと考える経営者も多いでしょう。
さらには、長距離搬送や悪天候に対する対応には限界があります。
病院は医療のプロであって、搬送のプロではないのです。
必要に応じて、消防救急との連携を視野に入れたほうが良いでしょう。
また、長時間の搬送は、残された病棟スタッフの負担が増大することも大きな問題です。

民間救急とは、「患者等搬送事業者」が行う、病院間の転院、入退院の搬送、通院送迎などを担う民間(あるいは医療機関所属)の搬送サービスのことを指します。
この「民間救急」は、看護師や救急救命士など医療有資格者を同乗させることもあり、条件が整えば医師からの指示により医療行為を行うことも可能です。
近年は民間救急を始めとした患者搬送サービス、看護師同乗型搬送など、多様な搬送手段が整備されつつあり、転院搬送問題の受け皿として期待されています。
ただし、民間救急には緊急走行が許可されていないため、緊急性のある患者を搬送することは出来ません。
つまり…
- 緊急性が低い
- 状態が安定している
- 計画的な転院
といったケースの患者搬送に適しており、それらを請け負うことで、消防救急の負担軽減につながります。
- 消防救急の稼働を緊急対応に集中できる
- 医療有資格者同乗で安全性を担保しやすい
- 利便性がある

緊急性の低い転院搬送を民間に振り分けることで、消防救急の現場対応遅延や過重労働を抑制できるでしょう。
これにより、転院搬送問題の根本を解決することが出来る可能性すらあります。
実際に検討会資料や自治体の取り組みで「転院搬送の一部を民間に委託」する効果も報告されています。
気になる方は下記のリンクからご確認ください。
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-151/02/shiryou2.pdf?utm_source=chatgpt.com
民間救急の搬送であっても、医療的ケアが求められる場面が多くあります。
それに対し、看護師や救急救命士が同乗する民間救急では、点滴の管理やモニターの監視などが医師の指示のもと行うことが出来るとされており、移送中の患者管理がしやすいのが特徴です。
これらの事情から、介護タクシーなどよりも病院の要請基準に合致するケースが多くあります。
また医療機関としても、安心して任せることが出来るでしょう。
なにより、医療搬送で割かれていたであろう人手を、病院で活用できるメリットは大きいでしょう。
また民間救急は有償だからこそ、追加オプションには柔軟に対応してもらえる可能性が高いです。
例えば、追加の医療機器が必要な場合はレンタルで調達してくれます。
もちろん、利用者には費用請求が増えることになります。
しかし、だからこそ柔軟な対応が期待でき、利便性は高いといえるでしょう。
医療搬送では、コストと労力の面から嫌がられる長距離搬送も、民間救急であれば利益になるため喜ばれます。

メリットが多い民間救急による転院搬送も、以下のような課題があります。
- 認知度や情報共有の不足
- 料金負担の制度設計
- サービスの質の管理と連携ルールの策定
第一に認知度の不足です。
医療従事者なら見聞きしたことはあっても、患者さんにとって「民間救急」は初めて聞くという方も多いはずです。
ましてや自分が搬送されるとなると、その情報不足から不安になる方も多いでしょう。
また、医療関係のみならず、認定するはずの消防側にも民間救急に関する知識が高いと言えないのが現状です。
そのため民間救急の概要から、管轄地域の民間救急事業者に関する情報の共有は必須といえます。
第二に料金の問題です。
民間救急は有償だからこその利便性がありますが、基本的にその料金は高いと感じるでしょう。
もちろん事業者側から見れば、二人のスタッフ報酬と運賃、医療機器のオプション代など適正な請求です。
しかし、利用料金の高額化は利用者の幅を狭め、民間救急の普及そのものが阻害される原因にもなりえます。
患者、病院、行政の負担割合をどのように設定していくかが重要といえるでしょう。
第三にサービスの質の管理と連携のルールが取り上げられます。
病院や消防救急の代わりといえる民間救急。
そのためサービスの質の管理は重要です。
資格はもちろん、再教育などでの質の担保が求められます。
また、医療・消防・民間救急の連携ルールに関して、地域のメディカルコントロール協議会での合意形成が求められるでしょう。

- 転院搬送の明確な基準づくり
救急車を使用すべき転院搬送と、民間搬送で対応可能なケースを明確に区別するガイドラインの整備が求められます。
患者の状態、医療依存度、搬送距離などを総合的に評価する仕組みが必要となります。
2.地域医療連携の強化
急性期・回復期・慢性期の医療機関が日頃から連携し、転院を前提とした治療計画を立てることで、突発的な転院搬送を減らすことができます。
3.民間搬送の制度的支援
民間搬送の質の担保や費用補助、情報提供の充実が求められます。
患者・家族・医療機関が安心して選択できる環境づくりが重要です。
4. 国民への理解促進
救急車は「誰でもいつでも使える便利な移動手段」ではなく、限られた公共資源であるという認識を社会全体で共有する必要があります。転院搬送においても同様です。
いかがでしたか?
転院搬送は、患者にとって次の医療につながる大切なプロセスであり、日本の医療を円滑に機能させるために欠かせない存在といえます。
しかし、現状は消防救急に偏っており、救急車の適正利用の観点からも問題があります。
医療搬送では、現状の医療業界の人手不足を鑑みれば、問題の解消は難しいでしょう。
その点、民間救急は事業者数の少なさや認知度の低さなど課題はあるものの、問題を解消できる可能性は大いにあります。
今こそ、そのあり方を見直さなければ、救急医療体制そのものが疲弊して、崩壊を招きかねません。
救急車の適正利用、民間救急の活用、地域医療連携の強化。
以上の三つを柱として、転院搬送の質と効率を高めていくことが、これからの日本の医療に求められています。
一人ひとりの患者にとっても、最適な搬送手段を選択できる社会を目指し、医療従事者、行政、そして私たち市民が共に考えていくことが重要となるでしょう。
この記事があなたの一助となれば幸いです。

またビスタサポートでは、介護タクシーの開業支援事業を行っています。
- 介護タクシーを開業したい方
- 介護・医療スキルを活かして起業を目指したい方
- 既に介護・看護の事業を行っているが、サイドビジネスも考えている方
- 第二の人生のため、何かしらのビジネスを検討している方
…などなど、介護タクシーに狙いを定めている方でも、はっきりとしたビジョンが無い方でもOKです。
もちろん介護タクシー事業に興味のわいたケアマネージャーの方も大歓迎!!
まずは、下記のページから弊社ビスタサポートに無料資料請求してみましょう。
あなたのお悩み、ビスタがしっかりサポートさせていただきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。


