「発熱等の症状がある方は、公共交通機関の利用を避けて、病院を受診してください。」
コロナ禍以降、発熱などの風邪症状を発症した方がぶつかる壁のひとつです。
感染防止対策としては、当たり前すぎることなのですが…
これが案外難しいのが現状です。
2019年12月に初めて新型コロナウイルス感染者が報告されました。そこから「パンデミック」と言える勢いで、わずか数ヵ月で世界中に広がり、日本にも到達。
現在に至っても、一向にコロナ禍は終息の気配が見えていません。
そんなコロナ禍の中、山積している課題のひとつが、上記の「公共交通機関の利用を避けて」問題です。
今回は、発熱等の症状がある方が困ってしまうこの問題について、記事にしていこうと思います。
そもそも公共交通機関とは何なのでしょうか。
一般的に公共交通機関とは「利用者に代わって乗客や貨物を輸送する交通機関のこと」であり、「利用には運賃が対価として必要」です。
具体的には鉄道、バス、タクシー、旅客船や貨物船、航空などが含まれます。逆に含まれないものとしては自家用車や自転車、レンタカーなどがあげられます。
ここで「タクシー」が公共交通機関に含まれていることを、少し意外に思った方もいるかもしれません。「公共」とつくと、不特定多数の人が同じ空間を利用するイメージがあるため、「鉄道」や「バス」のみを想像する方も多いためですね。
事実、タクシーは個人利用がほとんどで、解釈によっては公共交通機関に含まない場合もあります。利用時のプライベートな空間は、「公共」のイメージにはそぐわないでしょう。
しかし、タクシーも「利用者に代わって乗客や貨物を輸送」する「運賃が対価として必要な」交通機関。つまり、タクシーも公共交通機関のひとつと言えます。
輸送時は個人利用でも、車両自体は一日のうちに何度も不特定多数の方に利用されますからね。
では「公共交通機関の利用を避ける」ということは、電車、バス、タクシーを使えないということになります。
つまり、徒歩か自転車か自家用車で病院へ、ということになります。しかし体温37.5度以上の方に徒歩や自転車で病院に行けというのは現実的ではありません。
実質的には「自家用車で病院に行くのが前提」ということですね。
そうなると幾つか疑問が湧いてきます。
- 具合が悪いのに運転していいの?
- 自家用車がない人はどうするねん?
- 運転免許がない人はどうするべ?
本人の症状の軽重にもよりますが、具合が悪い時の運転は控えた方が良いでしょう。当たり前ですね。事故を起こしてしまってはどうしもようもありません。
そもそも、自家用車を持っていない人や運転免許を取っていない人も多いと思います。
首都圏在住で自家用車を持つ必要がない人。大学生でまだ免許を取っていない人。高齢者で免許を返納した人などなど…。
風邪症状の方の病院受診には、自家用車の使用を前提としてしています。が、無理がある方々も多くいることは容易に想像できるでしょう。
「自分で運転できないなら、免許のある家族に運転してもらえばいいじゃない」と考える方もいるかと思います。
多分、ご家族は送迎してくれるでしょう。でも、少し待ってください。
なぜなら、こう考えるはずです。
「コロナだったらどうしよう。自分にもうつってしまうんじゃない?」と…
当然の心配ですよね。
病気を治すため病院を受診したいのに、家族を病気にしてしまうことになりかねません。ミイラ取りがミイラになってしまいます。
これこそ、家族送迎の最大の問題点です。
狭い車内の中、コロナ感染のリスクにさらされて、長時間同じ空間に居なければなりません。
例え同居家族で、既に感染リスクを負っていたとしても、家の中と車の中ではリスクの度合いが段違いです。
しかし、現在の制度では家族送迎が一般的。残念ながら、感染のリスクを甘んじて受け入れているのが現状です。
ただし、そのリスクを受け入れられない方々も多くいます。
持病がある方や高齢者など重症化リスクが高い人たちですね。また、どうしても仕事を休めない方々も多いと思います。
そのような方々には、どのような選択肢があるのかを見ていきましょう。
家族の送迎以外で、コロナ患者や疑われる発熱者が移動する手段として考えられるのが、以下の3つになります。
保健所の送迎 | |
救急車の利用 | |
タクシーの利用 |
いずれにしても、気軽に利用できるわけではありません。
それぞれの問題点を見ていきましょう。
保健所の送迎については、現状では無理があります。
確かに、保健所の業務の中には感染症患者の搬送も含まれます。しかし、全国の1日の感染者数が万を超えるような現状では無理があります。保健所は全国あわせても500施設もないのです。
既にキャパシティオーバー状態なのは間違いありません。他の重要な業務も圧迫されているでしょう。
現状では保健所に相談の電話が繋がることすら稀で、専用のコールセンターを設けている自治体がほとんどです。
そもそも、発熱時のファーストコールはかかりつけ医となっていますからね。
保健所による送迎またはその手配でも、よほど特異な事案のみの対応と考えた方が良いでしょう。
救急車の利用については、容態が悪くない限り考えない方が良いでしょう。
そもそも、救急車は「緊急性のある傷病者を病院へ搬送するための車」です。1分1秒を急がないと亡くなってしまう患者さんを救うための緊急自動車、ということを忘れてはいけません。
軽症の方が利用したため、救えたはずの命が亡くなってしまう可能性もあるわけです。「移動手段がないから救急要請しました」は適正な利用ではないのです。
もちろんご自身や家族に緊急性があると判断した場合は、迷わず利用しましょう。
タクシーは公共交通機関のひとつであるため、本来発熱等の症状があれば利用は避けなければなりません。
事実、今までのタクシー業界の大手は「発熱などの症状がある方は、ご利用をお控えください。」とコメントしている事業所がほとんどでした。
しかし、感染者数の爆発的な増加。保健所のキャパシティオーバー。家族送迎の感染リスク…。
このような現状を鑑み、利用可能なタクシー事業所も増えてきています。
「with コロナ」という考え方が、浸透してきたことも関係あるでしょう。
ただし、事業所によりその利用方法や条件に違いがあります。
利用前に電話してよく確認しましょう。
タクシー業界はマスクの完全着用、こまめな消毒、飛沫防止シートの設置などの各種感染防止対策を行っています。
しかし、これらの対策は通常の乗客に対しての標準的なものです。
運転手や乗客同士の感染を抑えるための対策ですね。
感染対策をしている事業所だからといって、コロナ患者や陽性疑いの人を搬送してくれるわけではありません。なので、まずは発熱者の搬送が可能かどうかを確認しましょう。
「コロナタクシー」や「発熱専用タクシー」などの名前で事業を展開しているところもあります。
また「民間救急」や「介護タクシー」は、コロナ患者や発熱症状の方を搬送してくれる確率が高く、介護や処置を念頭に置いている分、一般タクシーよりも融通が利くことが多いです。
それぞれの利用対象者大まかに区分すると、以下のようになります。
利用対象者 | |
---|---|
一般タクシー 「コロナタクシー」 「発熱専用タクシー」 | ・コロナ軽症者 ・発熱等の症状がある人 ・コロナ陽性の疑いのある人 |
「介護タクシー」 「福祉タクシー」 「民間救急」 | ・軽症者や発熱等の症状がある人 ・軽症ではないが緊急性のない人(救急車を呼ぶほどでない人) ・車イス等を使用していて発熱等の症状がある人 |
救急車 | ・緊急性のある人のみ |
一般タクシーの「コロナタクシー」などは、自分で動ける方を対象としています。利用者と運転手は極力接触が無いように支払いも電子決済にするなど、工夫されています。
なので、運転手からの介助等は受けられないものと考えてください。
事業所によっては、公共交通機関以外に移動手段がないことや、家族などの送迎が受けられない場合に限るなどといった条件付きの場合があるため、利用前に確認しましょう。
緊急性はないが、運転手からの介助が必要な人は「介護タクシー」や「民間救急」から探しましょう。
また「介護タクシー」や「民間救急」などでは、家族の感染リスクを軽減するため利用される場合もあります。こちらも事業所へ確認しましょう。
コロナやコロナ疑い・発熱時などに、公共交通機関の利用を避けるには、自家用車の使用が前提です。
しかし、自家用車や運転免許のない方がいることや、自家用車の使用が前提では、家族へ感染リスクを負わせてしまうなどの問題もあります。
現在ではコロナ陽性者に対応したタクシー業者も出てきており、公共交通機関しか手段のない方や、感染リスクを抑えたい方々の受け皿になり始めています。
感染リスクを負った「家族送迎」か、費用のかかる「専用タクシー」の利用か。
タクシー利用の場合、自分の利用対象に適した区分に沿って、事業所へ問い合わせてみましょう。
私たち「救急救命士の介護タクシービスタ」は、コロナ陽性者や発熱症状の方の搬送も行っています。
救急車は必要ないけど、搬送手段に困っている家族の方。現在症状は安定しているけど、病院に着くまで悪化しないか心配だという方。搬送中の感染リスクが心配な方。
「ビスタ」にお任せください。
秋田で事業を展開しております。お近くにお住まいの方は、是非お気軽にお問い合わせください。
できるだけご要望に沿えるよう、努力させていただきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、コロナ2類から5類へ移行し1年以上経過した現在の生活上の注意点やタクシー事情などを記事にしました。
よろしければこちらもお読みください。