「子供たちは遠方に住んでるけど、まだまだ頭も身体も動くから、自分はひとりでも大丈夫。」
「長年一人で暮らしてきたし、お金も生活レベルも維持できている。これからも問題ないよ。」
心身共に健康で、お金の心配もない場合、そう考えられている高齢者の方も多いかと思います。
しかし、自分の死後に葬儀やお墓、現在の住まいをどうするのか?という問題は消えません。
なぜなら死後事務処理問題は、現在の健康や経済状況と関係ないからです。
特に身寄りがない方や家族・親類の手を煩わせたくない方にとっては、頭の痛い問題でしょう。
そのような問題の解決手段として有効なのが「死後事務委任契約」です。
今回は自身の死後に残る問題を解決する「死後事務委任契約」について、どのようなことを委任出来るのか?どのような方が検討するべきなのかを解説していきたいと思います。
この記事は…
- 身寄りのない方・家族の手を煩わせたくない方
- 内縁関係のパートナーがいる方
- 遠方に高齢の親御さんがいる方
- 生前契約に興味のある方
…などにお読みいただけると幸いです。
自身が亡くなった後の問題を解決し、憂いのない老後を謳歌しましょう。
人は亡くなると、その後に「どうしても必要となる仕事」が生じます。
そのような死後の仕事を、生前に第三者に委任しておくのが「死後事務委任契約」です。
例えば、葬儀の契約や行政への届出、各種契約の解約・変更などがその仕事に当たります。
しかし、その仕事は煩雑で多岐に渡るため、「家族に迷惑をかけたくない」と考えている方や、頼れる身内がいない方にとって、「死後事務委任契約」は問題を解決するとても有効な手段となるでしょう。
なお、各種の事務手続きを自身の希望にそって行うよう依頼することが出来ます。
つまり、死後事務委任契約は故人の遺志を最後まで尊ぶための契約でもあるのです。
この「死後事務委任契約」は、老後の日常をサポートする「生前事務委任契約」や、認知能力が衰えてきた時のサポートとなる「任意後見契約」と並ぶ、「生前契約」の一つとなります。
また、故人の為に行うものとして「遺言執行」があります。
ここでいう「遺言」とは、財産の継承に関する故人の希望です。
つまり、遺言に記載された内容で法的拘束力を持つのは、財産分配などの相続に関する事項や遺言執行者の指定など、財産の継承に関する内容に限られます。
例えば「パソコンやスマホの中身を見ずに処分して欲しい。」といった内容に拘束力は無いのです。
そのため、財産継承以外の内容で希望がある場合は、死後事務委任契約を結んでおくと良いでしょう。
では、どのような方に「死後事務委任契約」が必要なのでしょうか。
具体的には下記のような方になります。
- おひとりさま
- 家族と絶縁している方
- 家族や親族に負担をかけたくない方
- 事実婚・内縁関係のパートナーがいる方
- 火葬以外の葬儀形式を希望する方
おひとりさまの場合、葬儀や納骨、財産の処分方法が決められていないと、周囲の方や施設に迷惑がかかる可能性が高くなります。
なお、自治体では火葬・埋葬はしてくれますが、それ以外の死後事務は基本的に行ってくれません。
おひとりさまの場合は、死後事務委任契約を行っておいた方が良いでしょう。
基本的には、故人の遺族や親類などの身内が死後事務を行います。
しかし家族がいたとしても絶縁状態であれば、死後事務を頼めないことも多いでしょう。
頼んだとしても断られる可能性も高いと思います。
かと言って、普段付き合いのない親類に死後事務だけを頼むこともはばかられます。
このような場合も、委任契約をしておいたほうが良いと言えます。
また身内が遠方にしかいない場合や、仕事で忙しい場合も往々にしてあるでしょう。
自身の生活を守るため、死後事務のみに集中しているわけにもいきません。
そのような場合、家族や親族に大きな負担をかけることになります。
また家族がいても高齢であったりすると、行政への届出、各種契約の解約、遺品整理などの事務作業は複雑で手間がかかり、現実的に厳しいものがあります。
このような場合も委任契約をしておけば、負担を避けることができるでしょう。
パートナーと内縁関係だったり、事実婚である場合は、戸籍上配偶者と認められず法定相続人になれません。
そのため、死後事務に関する手続きが行うことが出来ません。
手続きをスムーズに進めるためには、お互いに死後事務契約を結んでおくと良いでしょう。
樹木葬や散骨など火葬以外を希望する場合も、死後事務契約を行っておくと良いでしょう。
なぜなら、家族が本人の遺志を反映した葬儀を行ってくれるとは限らないからです。
葬儀に自身の遺志を確実に反映したい場合は、委任契約を締結しておきましょう。
では、具体的に死後事務委任契約で委任できる内容を見ていきましょう。
- 葬儀などに関する手続き
- 関係者や友人・知人への連絡
- 行政への届出
- 家賃や介護費・医療費などの清算、各種契約の解除
- 遺品や家財の整理・処分
- Webサービスやデジタルデーターの解約・処分
- ペットの引継ぎ
まずは葬儀に関する手続き全般です。
依頼者が亡くなってから、真っ先に生じる手続きとなります。
具体的には以下の4つ。
- 遺体の引取り
- 葬儀や火葬に関する手続き
- 埋葬・お墓に関する手続き
- 供養に関する手続き
葬儀・埋葬前に病院などから遺体を引き取ります。
そして故人の希望に沿って、葬儀社へ依頼し、葬儀内容の確認を行います。
また、菩提寺へ連絡し僧侶の手配のほか、納骨・埋葬・供養などの手配も合わせて行います。
葬儀や供養方法になどに希望があれば、契約時に伝えておきましょう。
故人が亡くなった事実を関係者や友人・知人へ連絡してもらいます。
自営業であれば、高齢でも仕事を続けていた方もいらっしゃるでしょう。
その場合、取引先などの関係者への連絡は不可欠です。
また親しい友人などへメッセージがあれば、依頼しておくと良いでしょう。
大きな行政手続きは以下の3つです。
- 健康保険証・介護保険証などの返還
- 年金資格喪失の届出
- 住民税や固定資産税などの税金の納付
主に保険や年金、税金などお金に関わる事由です。
この他にも死亡届や火葬の許可申請なども行わねばなりません。
前述したように、相続人でない方が行政手続きを行うためには、死後事務委任契約をしておく必要があります。
そのため、内縁関係のパートナーがいらっしゃる方はご注意ください。
アパートやマンションを賃貸していた場合は、その解約と原状回復、不動産の明け渡しなど一連の作業が必要です。
もちろんそれまでの家賃や諸経費の清算も必要となります。
その他にも病院や介護施設に関する費用も同様です。
また、公共料金の精算と解約手続きをしなければなりません。
遺品の整理や家財の処分も委託できる対象です。
通常、家財は廃棄や売却などの手続きを行いますが、一部の家具や家電は資産ともなります。
その場合は相続の対象となりますので、相続人に断りなく処分してしまうとトラブルに発展しかねません。
遺品整理を委任する場合は、依頼人と受任者で、どこまでをどのように処分するのかを契約時にしっかりと決めておきましょう。
また各種契約の解除は、不動産の賃貸や公共料金だけでなくWebサービスなども必要です。
特に利用頻度の少ないWebサービスは見落とされがちですので、気を配らねばなりません。
有料サービスの解約手続きを怠ると、いつまでも利用料金が請求され続けます。
さらには親族が知らないネット銀行や証券口座などの決済を放置してしまうケースもありますので、注意が必要です。
SNSなどのアカウントも放置してしまうと乗っ取りや荒らしの原因になりますので、確実に削除する必要があります。
家族がデジタル関係に不慣れな場合は、無理せず委任しておきましょう。
依頼する時は、死後事務委任契約の受任者がスムーズに解約手続きが出来るよう、アカウントのIDやパスワードを伝えておくと良いでしょう。
また遺品の整理には、物理的な品物だけでなくデジタルデーターの整理も依頼することが出来ます。
今の時代、スマホやパソコンに個人情報が確実に残っています。
さらに本人が秘密にしておきたいデーターがあることもあります。
家族や親類にバレたくない時は依頼すると良いでしょう。
ペットを飼っている場合、死後に残されたペットの引継ぎ先を決めておく必要があります。
引継ぎ先となる親戚や知人、施設などに、あらかじめ了承をもらっておきましょう。
死後事務委任契約で依頼できる事務手続きは多岐に渡りますが、当然出来ないこともあります。
代表的なのはふたつ。
ひとつ目は、前述した「財産継承に関わる内容」です。
具体的には、相続分の指定、遺産分割方法の指定などの「相続に関する手続き」や、子の認知や相続人の廃除などの「身分関係に関する手続き」などは出来ないことになります。
財産そのものに関する手続きも、基本的には財産の相続人が行うことになるので、死後事務委任契約では依頼できません。
ふたつ目は、「生前に発生する手続き」です。
あくまで死後事務委任契約で依頼できる内容は、自身の死後に関してのみ。
生きている間の介護や生活の補助、財産の管理などに関しては依頼できません。
これらのサポートが必要になる場合は「生前事務委任契約」や「任意後見契約」などの「生前契約」を検討してみましょう。
弊社ビスタサポートでは、NPOりすシステム様の「生前契約」をお勧めしています。
生前契約とは、当記事で紹介している「任意後見制度」を含めた、「生前事務委任契約」と「死後事務委任契約」の三つのサポートから成り立つ契約です。
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また、生前事務委任契約について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
さらに任意後見制度についてはこちらをご覧ください。
いかがでしたか?
死後事務は多岐に渡り、手続きも煩雑です。
このような死後事務が、両親が亡くなった場合も、当然のようにロクに悼む間もなくやってきます。
ましてや自分が人生の伴侶より先に亡くなった場合、残された最愛の伴侶や子供にこれらの煩雑な事務仕事を丸投げしてしまうことになります。
死後事務委任契約で家族の苦労を取り除くという選択は、最後に家族へ残す愛情の証とも成り得るでしょう。
残された家族に苦労を掛けたくないなと感じた方は、一度「死後事務委任契約」を検討してみてください。
死後の問題を事前に解決しておき、憂いを無くしておきましょう。
次回は死後事務委任契約について、契約の流れや費用の相場、注意点などを紹介したいと思います。
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