介護タクシーや福祉タクシーの開業時には申請書類に主要人事を書き込まねばなりません。
その主要人事には、4つの役割があり、「運行管理者」もその1つです。
では、運転管理者は具体的にどういったポジションなのでしょうか?
字面的にはなんとなく分かっていても、具体的どういった業務があり、どういった資格が必要なのか、兼任可能なのかと問われればはっきりと説明するのは難しいと思います。
そこで今回は、介護タクシーの「運行管理者」について解説したいと思います。
この記事は…
- 介護タクシーや福祉タクシーの開業を考えている方
- すでに開業していて、車両の増台を検討している方
- 運転手からのキャリアアップを考えている方
…などにお読みいただけると幸いです。
ちなみに…開業申請時に選任しなければならない主要人事は以下の通りです。
- 運転者
- 運行管理者(←今回のテーマです)
- 整備管理者
- 指導主任者
運行管理者とは「運転者の疲労・健康状態を把握し、安全に運行できるよう業務管理する人」のことです。
近年まで、バスやトラックなどの運転者が超過勤務などの疲労から、居眠り運転や運転ミスが原因で事故を起こすケースがまれにありました。
お客さんを乗せたバスや重量物を積んだトラックなどが、一度事故を起こせば、人命にかかわる重大な事故に繋がりかねません。
このような運転者による事故を防止するための業務を行うのが「運行管理者」です。
運行管理者は、タクシーやトラック事業を行っている運送会社などに配置が義務付けられており、その資格は「国家資格」になります。
また営業所ごとに配置が必要で、車両数に応じて配置する運行管理者数も増減します。
なお、運行管理者は「旅客」と「貨物」の2種類があります。
なぜなら、この二つでは業務内容が異なるため、管理すべき内容も変わってくるからです。
当然、学ぶ内容も試験内容も変わってくるので注意しましょう。
ここからは「旅客」を中心に解説していきます。

では、何をもって事故防止に努めるのか?
運行管理者の主な業務は以下のようになります。
- 運転者への点呼および身体状態の把握
- 勤務時間、乗務距離の管理
- 運転者への指導監督
- 道路・気象状況の把握と判断
- 事故防止対策と事故の記録保存
運行管理者は、運行業務前の運転者に点呼を行います。
この時、運転者の健康状態と飲酒の有無をチェック。
ここで問題が無ければ、乗務員証を渡します。
当然「疲労している」「アルコールが残っている」などの問題があれば乗務させてはいけません。
そのため、点呼は運行管理者にとって事故防止の最終防衛ラインと心得ましょう。
ただ、名前を呼ぶだけではないのです。
また、帰社した時も点呼を行い、乗務員証を回収します。
なお、点呼時の状態は記録して保存しておきます。
関係省庁への提出義務はありませんが保存義務はあり、事故発生時に確認されることになります。

いわゆる「配車」の管理になります。
配車とは、利用者の送迎にいつどこへ行き、どこで降ろすかの予定を組むことになります。
つまり、この配車を通して、運転者一人ひとりの勤務時間と乗務距離を管理します。
長時間勤務、長距離運転による疲労を考慮して、配車することで事故の発生を防ぎます。
運行記録などをつけておき、業務改善に役立てましょう。
運転者への安全運転指導も業務の一環になります。
基本的な内容は「運転の安全を確保するための基本的事項」と「乗務中の旅客の安全を確保するための留意事項」といった「運転者に守るべき当たり前の内容を再認識させること」です。
【運転の安全を確保するための基本的事項】
- 乗務前・乗務中・乗務後、点呼を受け規定された報告をする
- 始業前・終業後の車両点検、日常点検の実施
- 交通ルールの遵守
- 酒気を帯びて乗務しない…など
【乗務中の旅客の安全を確保するための留意事項】
- 「急」のつく運転はしない
- 安全な速度と十分な車間距離を保つ
- 乗客の状況を確認する
- シートベルトの着用の徹底を図る…など
実に当たり前のことですが、意識することが事故防止には大切だという事ですね。
また、運転者に適性診断を受けさせることも、その1つ。
自己の特性を理解してもらい、運転へフィードバックすることで安全運転を心がけさせます。

交通事故による通行止めや渋滞を把握につとめ、運転者へフィードバックします。
または台風や大雪などの異常気象による運行の可否などを判断し、事故防止に努めます。
必要があれば、安全を第一として配車の組みなおしを行います。
運転者へ事故防止対策の指導を行うほか、車両へ非常信号器具の備えをしておきます。
また、事故を起こした場合の対応も行います。
重大事故に関しては、即時報告の義務があります。
しかし軽度の事故に関しては、年1回の「輸送実績報告」でまとめて報告することになります。
ですので、軽度でも事故の記録は保存しておきましょう。
前述したとおり、運行管理者は国家資格です。
取得するには2つの方法があります。
- 国家試験合格
- 実務経験と必須講習の修了
ひとつめは国家試験に合格することです。
試験の概要は以下の通りです。
- 受験資格~運行管理者の実務経験1年以上or運行管理者の基礎講習(16時間)修了
- 試験時間~90分
- 受験料 ~6800円
ただし、受験するには、実務経験(もしくは基礎講習の修了)が必要ですので注意しましょう。
ふたつめは無試験で取得する方法です。
5年以上の実務経験と所定の講習を5回以上受ければ、資格を取得できます。
また、これらの実務経験は「申請する地域での経験」になるので、東京なら東京の、大阪なら大阪での実務が必要になります。

また、介護タクシーの運行管理者を選任する場合は次のことに注意しましょう。
- 車両数5台未満は資格が必要ない
- 常勤であること
- 地域によっては兼任できない
- 人事で変更する時も届出が必要
そもそも、車両5台未満の営業所の運行管理者は資格が必要ありません。
「少ない台数だから、資格が無くても管理できるでしょう」といったところでしょうか。
資格を取る場合は、まずはこのようなところで実務経験を積む必要があるんですね。
もしくは運行管理の業務を補助していれば、実務経験と数えられます。
介護(福祉)タクシーは、車両1台・運転手1人で運営しているところが多いので、多くの事業所は資格が必要ないことになります。
ただし事業を拡大する時、5台以上になる場合は有資格者が必要です。
ちなみに「自家用車有償運送の許可車両」…ペルパータクシーも1台に数えられますので注意しましょう。
車両台数に対する運行管理者の必要人数は以下の通りです。
5台未満 | 1名(運転者以外) |
5台以上 | 有資格者1名 |
40台以上 | 有資格者2名 |
これより40台が増えるごとに、有資格者1名の増員が必要です。
なお、複数名の運行管理者を選任する場合は、そのうち一人を複数の運行管理者を管理する責任者である「統括運行管理者」に選任しなければなりません。

運行管理者は常勤の職員でなければいけません。
バイトや派遣といった立場で指導は困難でしょう。
「運行管理者」は「運転者」と兼務できない地域があります。
運転する人と管理する人は別々が好ましいという考えですね。
なお、兼任できない地域は「北海道、近畿、中部、中国、四国」になります。
開業時の申請だけではなく、運営していく中で運行管理者が変更した時も届出が必要になります。
運輸局への変更届を忘れないようにしましょう。
いかがでしたか?
運行管理者は配車の管理を行い、点呼などの運行前チェックをすることで、運転者による疲労などに起因した事故を未然に防ぐ役割があります。
介護タクシー業界は1人1台体制が多いため資格が必要になることはまれですが、資格がなくとも運転管理者を選任して、その役割を全うしなければなりません。
また、5台以上になると資格は必須です。
そのため、事業拡大時には考慮する必要が出てくるでしょう。
介護タクシーの場合、運行管理者の資格を取るには4台以下で運用しつつ「1年以上の実務を積みながら国家試験に合格する」か「5年以上の実務経験と所定の5つの講習を修了する」必要があります。
なかには「試験も講習もパスして、早く事業拡大に踏み切りたい!」という方もいるかもしれません。
そのような方は「有資格者を雇用する」のもひとつの方法ですので検討してみましょう。
この記事があなたの一助となれば幸いです。

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