介護保険タクシーの開業₋訪問介護事務所の3つの指定要件

訪問介護事業所の指定要件

介護保険タクシーを開業するためには、「会社を設立」して、「訪問介護事業所の指定」を受け、「介護タクシーの要件」を満たさねばなりません。

その後も様々なプロセスを経ることになりますが、とりあえずの大きな項目は上記の3つ。

前回の記事では、その中の「会社設立」の仕方について、介護保険タクシーのメリットも交えて説明しました。

そこで今回は「訪問介護事業所の指定」について、詳しく説明していきたいと思います。

要件を取りこぼさないよう注意して、介護保険との連動を実現させましょう。

この記事は…

  • 介護タクシー事業を安定して運営したい方
  • 介護保険との連動を検討している介護タクシー経営者
  • 介護タクシーの起業に興味のある方

…などにお読みいただけると幸いです。

介護保険タクシー開業までの道のり

介護保険タクシーのメリット

まずは前回のおさらいとして、介護保険タクシーのメリットを簡単に説明します。

なんと言っても、介護保険タクシーのメリットは「売上アップが期待できること」です。

なぜなら、相当数いる介護保険利用者を顧客にすることができます。

さらには、指定条件が厳しくライバルが少ないという現状もあります。

つまりマーケティング的に表現するなら、介護「保険」タクシーはメジャー市場でありながら、介護タクシー業界のブルーオーシャンであると言えます。

介護保険タクシー運転手

開業までの道のり

さらに前回のおさらいとなりますが、介護保険タクシーを開業するまでの手順を見てみましょう。

表にすると下記のようになります。

開業までの道のり
  1. 法人を設立する
  2. 訪問介護事務所の指定を受ける
  3. 介護タクシーの要件を満たし、運輸支局へ許可申請書を提出
  4. 法令試験と事情聴取を受ける
  5. 許可証の発行と登録許可税の納付と届出
  6. 運賃と約款の許可申請を行う
  7. 使用する車両の検査と登録
  8. 開業後に運輸開始届を提出

訪問介護事業所の指定を受けるには、いくつもの条件を満たして自治体に認められる必要があります。

また介護タクシーの要件を満たすにも、幾つかの条件をクリアしなければなりません。

次項からそれらの条件を見ていきましょう。

開業までの道のり

訪問介護事業所の指定について

今更ながら、なぜ介護保険タクシーを開業するにあたり「訪問介護事業所」として指定されなければならないのか?

それは、介護保険タクシーというサービスは「訪問介護サービス」の一つだからです。

そのため介護保険と連動するためには、訪問介護事業所になる必要があるのです。

当然、保険が適用されない介護タクシーや福祉タクシーは、その限りではありません。

では、訪問介護事業所の指定を受けるための主な要件は、下記の通りです。

訪問介護事業所の指定要件
  1. 法人格を取得する
  2. 人員基準を満たす
  3. 設備基準を満たす

1.法人格を取得する

なお、1番の「法人格を取得すること」は、「会社(法人)を設立すること」と同じ意味あいです。

ただし、「会社」に限らず「NPO法人」や「社会福祉法人」でも構いません。

要は個人事業主では、訪問介護事業所の指定を受けることが出来ないため「法人格」を取得する必要があるのです。

なかでも重要なのは、定款や登記簿謄本の事業目的です。

介護事業を行う場合は、あらかじめ記載する事業内容が決められています。

それが「訪問介護」と「介護予防訪問介護」です。

例えば、「介護保険法に基づく訪問介護及び介護予防訪問介護事業」というような、事業内容を定款に記載する必要があります。

もし記載されていない場合は、事業目的の変更手続きを行いましょう。

他にも予定している事業があれば、この際に追記しておくことをおススメします。

法人を設立

2.人員基準を満たす

事業所を営むためには、そのための技術や資格をもった人材が必要です。

訪問介護事業所に必要な人員基準は次の通りになります。

訪問介護事業所の人員基準
  1. 管理者
  2. サービス提供責任者
  3. 訪問介護員

1.管理者

訪問介護事業所の責任者を「管理者」と言います。

管理者になるのに、特に資格は必要ありません。

ただし「専従」で「常勤」の1名を、管理者として配置する必要があります

ちなみに「専従」とは、「サービス提供時間帯を通じて、当該サービス以外の職務に従事しないこと」を言います。

また「常勤」とは、「事業所で決められた労働時間を勤務する労働形態」と定義されています。

例えば、1日8時間を週5日の合計40時間…これが決められた労働時間とします。

この労働時間…1週間で40時間を満たしていれば、雇用形態がアルバイトでも常勤とみなすことが出来ます。

つまり管理者は「常勤者」の中から選び、他の役職と兼務することは出来ません。

ただし実状では、サービス提供責任者との兼務を多くの自治体が認めています。

その場合は、管理者業務に支障がない範囲で兼務するよう心がけてください。

不安があれば、事前に自治体へ確認しましょう。

訪問介護事務所の管理者

2.サービス提供責任者

サービス提供責任者とは、簡単に言うと訪問介護員のリーダーです。

そのため常勤の訪問介護員などの中から、一人以上を専従で配置する必要があります。

事業所が訪問介護サービスを提供する時間帯は、必ず一人以上いなくてはいけません。

さらに一定以上の資格を持っていないと、サービス提供責任者にはなれません。

サービス提供責任者になるための資格は以下の通りです。

訪問介護員の資格要件
  • 介護福祉士
  • 介護職員基礎研修課程修了者
  • 実務研修修了者
  • 訪問介護員養成研修1級課程修了者(ヘルパー1級免許保有者)
  • 訪問介護員養成研修2級課程修了者(ヘルパー2級免許保有者)で、3年以上の介護等の業務経験者
  • 看護師・准看護師・保健師

ちなみに業務規模により、サービス提供責任者を増員する必要があります。

業務規模とは、月間の延べサービス提供時間(450時間ごと)や訪問介護員数(10人以上につき)で算出します。

とりあえず開業当時は一人いれば、大丈夫だと思われます。

しかし、中長期的に事業を続けていくには、最低二人以上の責任者が必要となって来るでしょう。

また、サービス提供責任者の中にペルパー2級(現行の介護職員初任者研修修了者)の方がいれば、介護報酬が減額されてしまいます。

そのためサービス提供責任者には、実務者研修以上を修了した方を指名しましょう。

3.訪問介護員

実際に送迎を行う従業員の中にも、一定以上の訪問介護員がいなければなりません。

当然ながら、訪問介護員となるには資格が必要です。

訪問介護員の資格要件は下記の通り。

サービス提供責任者の資格要件
  • 介護福祉士
  • 実務研修修了者および(旧)介護職員基礎研修課程修了者
  • 介護職員初任者研修修了者
  • (旧)訪問介護に関する1級・2級課程修了者

訪問介護事業所として指定を受けるには、有資格者が一人いれば良いというわけではありません。

常勤換算方法」で2.5人以上が勤務している必要があります。

訪問介護員の男女

※常勤換算方法とは

事業所に配置されている訪問介護員数が「常勤で何人分に相当するのか?」を算出するための計算方法です。

一般的な事業所では1日の労働時間が8時間。それが週5日で合計40時間となります。

介護事業では1週間あたり、全ての労働時間を就業することを「常勤」というのでしたね。

正社員で週に40時間働く人は「常勤」ですし、アルバイトでも週40時間以上働けば常勤です。

ただし常勤換算方法では、2人のアルバイトが20時間づつ働いても、1人分の「常勤」とみなすことが出来ます。

つまり、常勤者(1日8時間以上を働く人)が2.5人働くのと同じだけの時間…

8×2.5=20時間を働く訪問介護員を配置すれば良いのです。

具体例は下記の通り。

常勤2名(8×2=16)、非常勤1名4時間(1×4=4)…合計20時間で可
常勤1名(8×1=8)、非常勤3名・各4時間(3×4=12)…合計20時間で可
非常勤5名・各4時間(5×4=20)…合計20時間で可
常勤1名(8×1=8)、非常勤3名・各3時間(3×3=9)…合計17時間で不可
(常勤の勤務時間を8時間とする。なお、1日20時間の就業時間が必要なる。)

なお、この要件は申請時だけではなく、訪問介護事業所に指定された後もずっと適用されます。

たとえ仕事が無かったとしても…です。

そのためシフトを回すための人数は、余裕をもって確保しておく必要があるでしょう。

計算式

3.設備基準を満たす

訪問介護事業所の指定を受けるためには営業所が必要となります。

その営業所における設備の基準は以下の通り。

設備基準の要件
  1. 専用の区画
  2. 相談スペース
  3. 設備および備品

1.専用の区画

事業の運営に必要な広さの専用区画を設けること、とされています。

ただし、広さに明確な規定はありません。

最低でも、事務室および相談スペース合わせて10畳程度は必要だと言われています。

他事業と同一の事務室であっても構いませんが、訪問介護事務所分として明確に区分されている必要があります。

また、自宅開業を検討している方は、特に専用区画を作ることを意識してください。

住居と事務室の区画が完全に分かれており、訪問介護事業所としての独立性が保たれている必要があります。

なお、事務所は賃貸でも構いませんが、賃貸契約は必ず法人名義で行う必要があります。

また、使用目的も「事務所」とする必要があります。

訪問介護事業所

2.相談スペース

相談スペースは必ず設けなければなりません。

基本的には4人が座れるテーブルと椅子、またそのためのスペースが必要です。

専用の個室がなければ、プライバシーを確保できるようパーテーションなどで区切っておく必要があります。

3.設備および備品

事務所として鍵のかかる書庫、パソコン、電話およびFAXが必要となります。

また感染予防のため、手洗い用の石鹸および消毒液が必要です。

さらに、そのための手洗い場が必要です。

事務所として賃貸している場合でも、賃貸スペース内にトイレや洗面所、給湯室があれば問題ありません。

また、オフィスビルなどで共有スペースにしか手洗い場がない場合でも、基本的にはOKです。

ただし、その共有の水道設備が感防止のための手洗い場として、使用許可されていることが条件となります。

そのため、オフィスビルや貸事務所の場合は、契約前に確認しておきましょう。

手洗い場

介護タクシーの要件

次に、介護保険タクシーを開業するには、国土交通省の運輸局から事業許可を得なければなりません。

そのためには、介護タクシーに必要な3つの要件を満たす必要があります。

その要件とは下記の通り。

介護タクシー開業に必要な3つの要件
  1. 人的要件
  2. 設備要件
  3. 資金要件

それぞれの内容については、下の参考記事の「開業に必要な3つの要件」の項目で詳しく説明していますので、是非お読みください。

~最後に~

介護保険タクシーを開業するには、訪問介護事務所としての要件を満たして自治体に指定され、その上でさらに国土交通省の運輸局に介護タクシーの要件を満たし営業許可をもらわねばなりません。

人的にも設備的にも、それぞれの法律に基づいた要件を満たしていく必要があります。

そのため、準備に時間も費用も手間もかかり、計画的を立てて実行しなければ、開業がいつになるかわかりません。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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