STP分析のポジショニングは、市場における他社との立ち位置を調整し、自社の製品やサービスの差別化を行うことを言います。
こうすることで、競合他社がひしめく市場の中で、自社製品を際立たせ顧客にアピールすることができるのです。
そのため、新たに市場に参入する方こそ、しっかりとしたポジショニングが必要となります。
なぜなら、同等製品を同じ価格で売っても、新規参入の商品は手に取られないからです。
人間は聞き覚えのあるメーカーとないメーカーでは、聞き覚えのあるメーカーの商品を選んでしまうもの。
従って、新規参入企業は差別化を図り、自社の位置取りを明確にする必要があるのです。
そこで今回は「STP分析」のおける「ポジショニング」の重要性と進め方について記事にしたいと思います。
この記事は…
- 起業を志している方
- マーケティングを勉強したい方
- 他社との競争に勝ちたい方
…などにお読みいただけると幸いです。
もちろん新規参入の企業だけでなく、既存企業もマーケティングを怠ってはいけません。
既存企業も常に自社の位置取りを把握しながら、戦略を練る必要があります。
冒頭で紹介したとおり「ポジショニング」とは、市場における他社との立ち位置を調整し、自社製品やサービスの差別化を行なうマーケティング戦略の一環になります。
そして、自社製品の優位性をアピールして、売り上げにつなげます。
言い方を変えれば、ターゲットである顧客に対して、他社にはない「ユニークな価値」をどうやって提供していくかを決めることになります。
また、顧客に「どう優れているか」、競合他社と比較して「どう認識されることを目指すのか」を検討していく事とも言えます。
その結果、利益つながるように戦略を考えていくのが、ポジショニング戦略です。
しかし、ポジショニング戦略を効果的に行うためには、STP分析が手順良く行わなけれていなければなりません。
というのも、「ポジショニング」は、「STP分析」で行われる最終プロセスだからです。
STP分析とは、マーケティング戦略で用いられる代表的なフレームワークの一つです。
- segmentation(セグメンテーション)…市場の細分化
- targeting(ターゲティング)…標的市場の決定
- positioning(ポジショニング)…他社との棲み分け
上記の3つのプロセスで構成され、ポジショニングの前にセグメンテーションとターゲティングを行う必要があります。
つまり、市場の全体像を把握して細分化し(セグメンテーション)、細分化された市場の中から狙う市場を見定め(ターゲティング)、競合他社との位置関係を調整する(ポジショニング)のが一連の流れです。
適切な細分化と自社の強みが活かせる市場を標的にすることで、効果的なポジショニングが出来るというわけですね。
ではなぜ、他社との位置関係の調整が重要なのか?
主だった理由は下記の2つです。
- 顧客に自社の位置づけ(優位性)を印象付けやすくなる
- マーケティング戦術を考えやすくなる
市場には、商品やサービスに関して実に多くの情報が溢れています。
その中で、顧客はなるべく苦労せずに買い物が出来るよう、無意識に購買プロセスを単純化しようとします。
つまり顧客は自分の頭の中でブランドや商品を整理して、それぞれを位置づけしているのです。
例えば、マ〇ドナルドは安価で味もそれなり、モ〇バーガーはファーストフードの中では高級志向…といった位置づけを自分の中に持っています。
この位置づけ…ポジションは購入の度に変化することは稀です。
つまり、一度決定したポジションはそう簡単に覆らないのです。
「ハンバーガーが食べたい。バイト代が出たからちょっとリッチにいきたい。」と思えばモ〇バーガーに行きますし、「給料日前だなぁ」となれば、マ〇ドナルドに行くのです。
実際はロッテ〇アやドム〇ムなど、他の選択肢があるにもかかわらずです。
逆に言えば、企業が狙って自社の位置づけを顧客に印象付けることが出来れば、購買にグッと近づきます。
狙ったターゲットに次回も選んでもらいやすくなるでしょう。
ポジショニングが決まれば、戦略も決めやすくなります。
ポジションに沿ったサービスの提供や商品開発をしやすくなりますし、顧客へのアプローチもしやすくなります。
やみくもにサービスを増やしていくと、他社と類似してしまいがちです。
ポジションを決めることは、自社の戦略にひとつの中軸を作ることと一緒です。
その結果、他社との競合を防ぎ、独自の価値を顧客に提供することが出来るでしょう。
基本的に、顧客はその独自の価値を求めて商品やサービスを購入しています。
しっかりとしたポジションを保つことは、顧客からの信頼を守る事にもつながると心得ましょう。
重要性が分かっても、漠然とポジションを設定しても成果には繋がりません。
まずはポイントを押さえて、ポジショニングを行っていきましょう。
- 顧客のニーズを正確に把握できているか
- 自社の強みが活かせるポジションを選ぶ
- 企業理念やポリシーと整合性がとれているか
- 適性なポジショニングマップを作成できているか
ポジショニングは他社と差別化を図る行為です。
そのため「自社の独自性を出せるかどうか」という基準に注力してしまいがちです。
しかし、その基準のみでポジションを設定すると、顧客からニーズのないポジションを選択してしまう恐れがあります。
例えば、高級住宅街に安価が売りな雑貨店を出店しても売上は望めません。
多少のお値段が張っても質を求める客層には響かないのです。
つまり、競合がいないという理由だけでポジションを決定せずに、あくまで顧客のニーズが一定以上見込める上でポジションを決定する必要があります。
そのためには、顧客が購買するかどうかを決めている重要な要素…購買決定要因【Key Buying Factor…(KBF) 】を正確に把握しておく必要があります。
その把握のためマーケティング調査はしっかりと行っておきましょう。
そして、購買決定要因なかでも重要度の高いものを軸に、ポジショニングを考える必要があります。
顧客のニーズに合わせ、重要度の高いKBFを選ぶことは重要です。
それと並んで重要なのが、自社の強みを活かせるポジショニングをすることです。
質が高い製品を提供していた会社が、新規事業では安さを売りにした製品を販売することになった場合、今までの強みを活かしづらくなります。
というのも、質の高さで勝負してきた会社にはそれに合わせた人材や資材、販路を確保しています。その上で競争に打ち勝ってきたのです。
しかし、それが安さを売りに出すとなると、ノウハウのほとんどが使えなくなります。
それぞれの準備を一から始めなければなりませんし、追加の投資も必要になるでしょう。
逆にこれまで積み上げてきた強みを活かせるならば、追加投資は最小限で済みます。
そればかりか、これまでのターゲットも興味を持ち、新たなポジションでも顧客になってくれる可能性が大いにあります。
「顧客に対し、質が高く耐久性のある製品をお届けする。」という理念を掲げている企業が、安価を売りにしたポジショニングをすると、企業理念との整合性が取れません。
一時的に売り上げは上がるかもしれません。
しかし「安価だが機能が限られ壊れやすい製品」では、これまでの顧客には特に悪印象を与えてしまいます。
「○○企業の製品だから、安くてもしっかりしたものだと期待したのにガッカリだ。」とレビューされる恐れもあります。
企業理念に反する戦略は、新たな顧客を獲得するどころか、従来の顧客に見限られてしまう可能性さえあります。
そのため、顧客のニーズや差別化も大切ですが、自社が掲げる理念やポリシーとの整合性も重視しましょう。
ポジショニングを成功させるには、前項までの1~3項目を意識する必要があります。
顧客のニーズを調査し購買決定要因を特定。また自社の強みを活かし、企業理念に沿ったポジショニングをする必要があるのです。
そのためには、まず適正なポジショニングマップを作成する必要があります。
このポジショニングマップを用いて、自社の立ち位置を明確にすることこそ、ポジショニング成功のポイントと言えるでしょう。
次項から、そのポジショニングマップの作成手順について説明します。
大前提として、ポジショニングを行う前に「セグメンテーション」と「ターゲティング」を行っておく必要があります。
なぜなら前述したようにポジショニングは、STP分析の最終プロセスだからです。
第一ステップであるセグメンテーションで、市場を細分化します。
例えば、地域や気候による地理的変数や、年齢や職業による人口動態変数など、特定の基準により市場を細分化していきます。
第二ステップのターゲティングで、細分化された市場の中から参入する市場を決めます。
この時、「6R」とよばれるフレームワーク(市場規模、成長性、優先順位、到達可能性、競合性、反応の測定可能性)を活用するのが効果的。
その上で自社の勝率が良さそうな細分化された市場にターゲットを絞ります。
そして、第三ステップであるポジショニング…ポジショニングマップへの作成とつなげます。
ポジショニングマップとは、自社の商品やサービスが市場のどの位置にあるのかを可視化するために、異なる2つの購買決定要因で作る図表のことです。
マップの作成手順は以下の通りです。
- 顧客の購買決定要因(KBF)を列挙する
- 列挙したKBFから決め手になる要因を抽出し、軸を決める
- 他社の分析を行い、マップに配置する
- 自社のポジションを決める
- 必要に応じて、ポジションを決めなおす
ポジショニングマップは縦と横の2軸から構成されています。
マップを作成するには、まず顧客が商品やサービスを選ぶ基準(購買決定要因・KBF)を把握していく必要があります。
購買決定要因は、それぞれの商品やサービスによって様々。
例えば、スマートフォンでは「OS」「性能」「価格」「カメラ性能」「大きさ・重さ」「バッテリーの持ち」「扱いやすさ」「対応アプリ」等々、実に多くの要因があります。
また、KBFはターゲットとする顧客層によって変化することに注意しましょう。
若年層とシニア層とでは、求めるスマートフォンが全く違いますよね。
あくまで、ターゲットとする顧客のKBFを考慮した上で、列挙することが大切です。
次に、列挙したKBFの中から、ターゲットにとって特に重要なものを複数抽出します。
この抽出した中から、2つのKBFがマップの縦軸と横軸になります。
なぜ2つかというと、軸が多すぎると狙いがブレて、顧客に効果的なアピールが出来なくなります。また一つに絞ると差別化要素が極端に少なくなり、他社と差別化しにくくなります。
抽出する際、自社の優位性をアピールできるポイントも洗い出しておくと良いでしょう。
そのポイントを軸にすると、強みを活かした上で他社との比較がしやすくなります。
ただし、「他社と差別化を図りやすい」という理由だけで、軸を設定してはいけません。
というのも、顧客のニーズを満たせなくなる恐れが高くなるからです。
そのため、ターゲットの顧客が重視する要素を軸にいれておくことは必須です。
いくら自社のスマホが「カメラ性能」と「バッテリーの持ち」に自信があっても、シニア層の軸に「扱いやすさ」を抜かしては勝負になりません。
例えば、シニア向けスマートフォンでは「価格」「扱いやすさ」「大きさ・重さ」などを軸の候補にするのが望ましいでしょう。
2つの軸を決定したら、競合する他社をマップ上に配置します。
多くの競合がいる場合は、微妙な位置関係を決めるのは難しいので、一度で行う必要はありません。
まずはざっくりと配置してみましょう。
その後、同僚などと相談ながら、マッピングすると良いでしょう。
そうすると、2つのKBFからみた市場の配置図が可視化されてくるでしょう。
その結果、競合が少ない空白域も見つけやすくなります。
最後に自社が目指すべきポジションを決めていきます。
マップの密集域を避け、自社の優位性が出しやすいポジションを探すことで、自然と差別化が出来てしまいます。
しかし、単に空白域を選べば良いというわけではないことに注意しましょう。
空白ということは、ビジネスにならない要素が隠れている可能性があります。
事前によく調査しましょう。
また空白域であっても、自社の強みが活かせないポジションや企業理念にそぐわないポジションには注意が必要です。
前述したように、「ノウハウが生かせない」「追加投資が必要」などといったデメリットが存在します。
下手をすれば、自社のブランドイメージに傷がつくかもしれません。
以上の事に注意して、差別化できるポジションを決めます。
その後は、そのポジションを確固たるものにし、顧客に認知してもらえるよう、マーケティング戦略を練っていくのです。
また、一度ポジションを決めたら終わりというわけではありません。
というのも、決めたポジションで成果が出なければ、ポジションを決めなおす必要があります。
それにはまず、成果が上がらない原因を突き止めなければなりません。
ポジションが顧客に受け入れられてないのか?
市場環境が変わったのか?
自社のポジションに新たな競合が参入してきたのか?
それぞれ原因は違いますが、必要に応じてポジションを取り直す「リポジショニング」を行うことも検討しましょう。
一方、顧客にポジショニングがうまく伝えられていないのが原因であれば、マーケティング施策の問題です。
訴求手段を見直しましょう。
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いかがでしたか?
ポジショニングで他社と差別化を図るのは、売上を伸ばす第一歩です。
STP分析を順序良く行い、自社に合ったポジショニングで顧客を確保しましょう。
そのためにも、適切なポジショニングマップを作成する必要があります。
いずれポジショニングマップに注目した記事を掲載したいと思いますので、お待ちください。
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最後までお読みいただきありがとうございました。