「介護タクシー事業を起こして数年たつけど、もう一段階売り上げを伸ばしたいなぁ。」
「もっと安定した介護タクシーの事業運営を行いたいなぁ。」
そう思われる経営者の皆様も多いと思います。
たとえ、困っている人を助けるために始めた介護タクシーであっても、売り上げが伸びるに越したことはありません。
そもそも売り上げがなければ運営できませんからね。
現在、高齢者が増えていく日本社会では、「介護」は需要の高い分野です。
それに従って、「介護タクシー」にも参入する方が少しづつ増えています。
しかし、漫然と同じことを繰り返しているだけでは、売り上げが大幅に伸びることもありません。
そこで今回は、ここ数年で「介護タクシー」に新規参入された事業者や、介護タクシーの起業に興味のある方へ向けて、「介護保険タクシー」を営むメリットについて解説したいと思います。
この記事は…
- 介護タクシー事業に興味のある方
- 福祉タクシー・介護タクシーの開業から間のない方
- 介護タクシーで起業したが、経営が安定しない方
などにお読みいただけると幸いです。
「介護タクシー」とは、移動に不自由のある利用者を目的地まで「送迎」することが業務であり、その際に発生する乗降や送迎に関わる「介護」も行います。
その対価として料金を受け取ります。
このような業務を行うものを一般的に「福祉タクシー」「介護タクシー」「介護保険タクシー」などと呼んでいます。
正確にはそれぞれ違いがありますが、最も大きな違いが「介護保険」が適用になるかならないか?です。
「介護保険タクシー」と呼ばれるものは、その名の通り保険が適用になります。
「福祉タクシー」は保険が適用になりません。
「介護タクシー」はどちらの意味あいでも使われることがあり、取り扱いが曖昧。
そもそも「介護タクシー」という言葉は正式名称ではありません。
そのことがグレーゾーンを作っている一因ともいえるでしょう。
いままで当サイトでは「介護タクシー」を保険適用のスタンスで取り扱ってきましたが、この記事では分りやすくするため、保険適用になるものを「介護保険タクシー」と銘打ちましょう。
つまり「介護保険タクシー」は、介護保険に連動した料金体系で「介護タクシー」業務を行っています。
では、なぜ介護保険と連動することが事業者のメリットとなるのか?
それは新規の顧客層をターゲットとすることが出来るからです。
介護タクシー事業を開業して間もないの事業所では、介護保険タクシーとして運営している事業所は少ないと思います。
というのも、事業所の要件が厳しくて面倒だから。
起業当初から保険と連動させるにはハードルが高いため、取り敢えず介護タクシー事業をスタートさせる方がほとんどだと思います。
事業の運営と並行して保険連動の準備を進める方もいますが、一部に限られてきます。
つまり、それは介護保険を利用しようという顧客層を、みすみす逃していることになります。
そもそも介護タクシーの利用者は、要介護認定を受けている方が主な利用者。
従って、この顧客層を逃してしまうのは、おおきな機会損失ともいえるでしょう。
また、介護保険タクシーを運営している事業所も限られてくるため、他社との競争が少ないのも魅力です。
つまり、新規の競争率が低い顧客層をターゲットにできるため、売り上げのアップが期待できます。
さらに、一定以上の顧客がいるため、安定的な事業経営のプラスになるでしょう。
メリットをまとめると下記の通りになります。
- 介護保険をつかう利用者を顧客にできる
- 他社との競争が少ない
- 売り上げアップが期待できる
新規顧客を得るのに有効な「介護保険タクシー」化も、メリットだけではありません。
もちろんデメリットもあります。
その最大のデメリットが「指定を受けるための要件が厳しいこと」です。
まず、保険適用されない福祉タクシー(介護タクシー)であれば、個人事業主でも構いません。
しかし、介護保険タクシーとなれば、「法人」でなければなりません。
株式会社、合同会社だったり、NPO法人などとといった法人格の取得が必要です。
当然個人事業主と比べて費用も掛かります。
そして、法人格の取得後は、訪問介護事業所として指定される必要があります。
そのためには、訪問介護事業所としての人員基準と設備基準、運営基準の要件を満たす必要があります。
もちろん、要件を満たすためには資格が必要だったりするので、そのための取得費用も必要になってきます。
デメリットをまとめると下記の通り。
- 法人格の取得が必要
- 訪問介護事業所としての指定が必要
- 費用がかかる
当然ながら、介護タクシー事業所としての要件も満たす必要がありますよ。
介護保険タクシーは利用者からみれば、制約の多いタクシーになります。
なぜなら、利用には要介護認定が必要です。
同乗者も原則許されません。
使用条件は、通院などの本人が必要な用事でなければいけません。
そもそもケアマネージャーに相談し、ケアプランに記載してもらう必要があります。
そこまで制約があっても、料金で軽減されるのは「タクシー運賃」「介護料金」「介護用品のレンタル料」の内の「介護料金」だけです。
「タクシー運賃」「介護用品のレンタル料」はそのままで、「介護料金」だけが1割負担となります。
例えば、通常タクシー運賃4000円+介護料1000円+介護用品レンタル料2000円(ストレッチャー代)=7000円かかったとすると、介護保険適用になると6100円の支払いという事になります。
つまり、1回900円の差額。
しかし、それでも「介護料金1割負担」のメリットは大きいと言えます。
なぜなら通院は定期的に行うもののため、「塵も積もれば山となる」という諺のとおり、最終的な費用を大きく抑えることが出来るからです。
特に透析などで週3回程度通院がある方にとっては、その効果も大きいでしょう。
介護はゴールが分からないマラソンと一緒です。
日々の労力や費用の負担をどれだけ軽減できるかが、介護の継続条件と言っても過言ではありません。
つまり、介護保険タクシーで介護料の負担軽減は、介護全体にも良い影響を及ぼすのです。
前述した介護保険タクシーを開業するには、①法人格を取得…会社設立して、いくつもの要件を満たす必要があります。
満たしてないと、自治体が②訪問介護事業所に指定してくれません。
その上で、③介護タクシーの要件を満たし、運輸局から許可を得る必要があります。
その後も、いくつも手続きがありますが、とりあえず順番としては下記の通り。
- 法人を設立する
- 訪問介護事務所の指定を受ける
- 介護タクシーの要件を満たし、運輸支局へ許可申請書を提出
- 法令試験と事情聴取を受ける
- 許可証の発行と登録許可税の納付と届出
- 運賃と約款の許可申請を行う
- 使用する車両の検査と登録
- 開業後に運輸開始届を提出
今回の記事では介護保険タクシーを起業するための第一歩である、会社を設立することに焦点を当てましょう。
法人格の取得…つまり会社を設立するには、設立前と設立後にいくつもの手順が必要です。
それぞれ見ていきましょう。
- 会社の概要を決める
- 法人用の実印を作成する
- 定款を作成し認証を受ける
- 出資金を払い込む
- 登記申請書類を作成して、法務局へ申請する
会社を設立するには、まず会社の基本事項を定めなければ始まりません。
この内容は、後に作成する「定款」にも記載される内容なので、きちんと決めておきましょう。
- 社名
- 所在地
- 資本金
- 設立日
- 会計年度
- 事業目的
- 役員の構成
- 株主の構成
社名は商号とも呼ばれ、事業内容についてイメージしやすいものや、代表者の理念が込められているものなど、決め方は様々です。
個人事業主から使用している屋号を引き継ぐことも可能です。
ただし既存の有名企業や団体を連想させるような名称は、ともすれば不正競争防止法により損害賠償を求められる恐れがありますので注意しましょう。
所在地とは事務所の住所のこと。
これは法律上の住所であるため、実際の活動地と異なっていても構いません。
例えば、自宅やレンタルオフィス、果てはバーチャルオフィスを所在地とすることも出来ます。
ただし事務所を移転する場合、登記の変更手続きや登録免許税が必要になるため、長期的に活動する場所に所在地を定めておく方が良いでしょう。
また、同一住所に同一の商号がある場合は登記できないので、類似商号には注意しましょう。
資本金の額は2006年に改正された新会社法により、1円からでも法人の設立は可能になりました。
しかし、資本金の額は資金調達時の信用度に関係します。
アナタが銀行なら、返済能力が怪しい資本金1円の会社に融資したくないですよね?
そのため、会社の規模に合った適正な金額を設定するのが望ましいのです。
目安としては、「売り上げが無くても3カ月程度、事業を継続できる金額」と言われています。
会社の設立日は、法務局に設立の登記申請をした日のこと。
郵送の場合は、法務局に書類が到着し、申請が受理された日となります。
特定の日付にこだわる場合は、日にちを逆算して準備しましょう。
ただし、書類に不備ある場合は受理してもらえず、希望した日付にならないこともあります。
法務局の業務がない日も同様です。
会計年度は、決算書を作成するために区切る年度のことです。
会社は一定期間の収支を整理して決算書を作成することが法律で義務付けられており、この区切りとなる年度が会計年度になります。
一年を超えなければ、自由に決算月を選べるので、大抵は会社の繁忙期を避けて設定します。
事業目的とは、設立する会社がどのような事業を手掛けるのかを明示します。
会社の定款にも記載され、取引先や金融機関がチェックし判断材料にする重要な項目です。
そのため、明瞭かつ過不足なく記載しましょう。
他にも、始める予定の事業があれば定款に入れておきましょう。
後から事業目的を変更することも出来ますが、登記の変更手続きが必要となり、登録免許税3万円もかかるので覚えておきましょう。
だからといって一貫性のない目的を並び立てるのは、取引先や金融機関に不自然な印象を与えるため、お勧めできません。
介護保険タクシーを営むため、訪問介護事業所として指定されるには「訪問介護」「介護予防訪問介護」の二つは記載しておきましょう。
役員とは、いわゆる経営者や上位の管理職のこと。
一般的に「代表取締役」「取締役」「監査役」などがこれに当たります。
最低限、取締役を一人決めれば会社設立は可能です。
つまり自分一人で起業する場合は自分を取締役にします。
なお、発起人(株主)との兼任でも問題ありません。
株主の構成とは「持株比率」とも呼ばれ、株式会社において「誰がどのくらい株式を持っているか」を表す事項です。
ちなみに株主とは、設立した会社に出資して会社の株式を受け取る人のことを指します。
なお、会社設立前には発起人と呼ばれ、会社設立時に取締役を選任します。
選出には自分を選ぶことも可能です。
法務局に設立登記の申請をするには、会社の実印が必要となります。
そのため、社名が決まったら実印を作り、法務局で実印を登録する際に必要な書類である印鑑届書も忘れないようにしましょう。
2021年の法改正があり、オンライン化で使用頻度が減ったとはいえ、実印を使う場面はまだまだ多いのが現状。
設立のタイミングで作成しておくと、手間も省けると思います。
また、実印の作成に合わせて、会社の運営でよく使われる銀行印や角印、ゴム印なども作成しておくと良いでしょう。
登記申請を行う際に必要なのは実印(代表印)のみです。
しかし、他のあらゆる書類に実印で押してしまうと、紛失や盗難時のリスクが高まります。
書類に応じて印鑑を使い分けることで、リスクの分散を図りましょう。
定款とは「会社の憲法」ともいわれ、会社を運営する上で根幹を成す重要な規則です。
そのため定款の作成は会社設立の中でも最も時間がかかる項目です。余裕をもって準備しましょう。
定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」があります。
それが以下の5つ。
- 発起人の氏名及び住所
- 社名(商号)
- 事業目的
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価格または最低額
これらが無いと定款が無効になってしまうため、必ず記載しておきましょう。
次に、作成した定款は公証人(法務大臣に任命された法律事務の専門家)から、問題が無いことを証明してもらう必要があります。
手続きは本店の所在地のある公証役場で行うことが出来ます。
また、定款の認証には、発起人の印鑑証明書と認証手数料5万円。
さらに、紙の定款の場合は収入印紙代4万円が掛かります。
ちなみにPDF化した電子定款での提出には印紙代がかかりません。(ただし電子署名のためのソフトや機器類が必要になります。)
定款の認証が終わったら、資本金の払い込みです。
ただしこの時点ではまだ会社設立登記がされていないので、払い込みは発起人個人の口座になります。
前述したように、初期費用のほか、3か月分の運転資金を払い込んでおくことをおススメします。
登記申請の際には資本金の振込みを証明する書類が必要です。
そのため、口座と振込み履歴がわかる通帳のコピーを用意しておきましょう。
資本金を払い込んだら、2週間以内に会社設立の登記申請を行いましょう。
申請は管轄する法務局で行えます。
必要な書類は定款の記載内容により異なるため、法務局の相談窓口や司法書士などの専門家に相談するのが一番です。
申請時に必要となる書類の一例は下記の通り。
- 設立登記申請書
- 登録免許税分の収入印紙
- 定款
- 発起人の同意書(発起人会議議事録など)
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 監査役の就任承諾書
- 発起人の印鑑証明書
- 資本金の払い込みを証明する書面
- 印鑑届書
- 登記用紙と同一の用紙
登記申請は原則として代表者が行いますが、司法書士等の代理人によっても可能です。
その際は委任状が必要となります。
そして、書類に不備が無ければ、1週間から10日程度で登記が完了し、無事に会社設立となります。
ようやく終えた会社設立の手続きも、まだ終わりではありません。
なぜなら会社には様々な税金がかかります。
管轄の税務署に法人設立届出書などの必要書類を提出しましょう。
他にも、市町村役場や都道府県税事務所などにも届出が必要です。
また、社会保険に加入するため、年金事務所に届け出が必要です。
健康保険や厚生年金保険への加入といった手続きがあります。
さらに従業員を雇う場合は労災保険と雇用保険の加入手続きが必要となります。
労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークで手続きできますので忘れないようにしましょう。
- 税金関係の手続き
- 社会保険関係の手続き
- 労働保険関係の手続き
なお、申請までの期日が短いものもあるので、早めに動きだしましょう。
介護保険タクシーを開業するためには、まずは会社を設立しなければなりません。
個人事業主と比べると手続きの量も多く、手順も複雑です。
ですが、新規の顧客が獲得しやすいメリットもあり、売り上げの向上や安定化に繋がります。
設立時には費用も掛かりますが、仕事量が増えることを考慮すると、十分に元が取れる可能性が高いでしょう。
それは手続きを専門家へ委託した時でも同様です。
ビスタサポートでは、フランチャイズパートナー募集の一環として、介護タクシーで起業を志す方へのサポートも行っています。
介護タクシー事業には興味あるけど、手続きなどの複雑なことを考えるとちょっと・・・
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需要が高く、供給が低い介護タクシー業界。
あなたも、この介護タクシー業界を共に盛り上げていく同志になってみませんか。
いかがでしたか?
次は介護保険タクシーの開業に必要な「訪問介護事業所の指定基準」や「介護タクシーの要件」について、記事にしたいと考えております。
この記事があなたの一助となれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。