介護タクシー事業は個人でも法人でも行えます。
しかし、起業のコツに「小さく始めて大きく育てる」という言葉があるように、介護タクシーでも個人事業主として起業し、その後法人化するケースが多いです。
事業が軌道に乗ってくれば、法人化を考えるのは自然な流れでしょう。
ですが…
「法人化への適切なタイミングは?」
「個人事業主としての営業許可はどうなるの?手続きの方法は?」
様々な疑問が浮かぶ上、実際に複雑な手続きが待っていると思うと、二の足を踏んでしまう方もいるでしょう。
そこで今回は、介護タクシーの法人化について、そのタイミングや手続きの流れについて解説したいと思います。
この記事は…
- 経営が軌道に乗ってきた介護タクシー事業主
- 収益アップを狙っている個人事業主
- 介護タクシーや福祉タクシーの開業に興味のある方
…などにお読みいただけると幸いです。
法人化とは、個人事業主が会社を設立して、その事業を法人に引き継ぐことを指します。
事業を引きつぐ「法人」とは、法律によって個人と同様の人格を持つ組織のことで、登記申請をすることで事業活動を行うことが出来るようになります。
一般的にいう「会社」は法人の一種で、利益を目的として事業を行う組織で、「株式会社」や「合同会社」などがあります。
また、法人には「会社」だけでなく、NPO法人や社団法人、医療法人など、様々な法人が存在します。

法人化すると様々なメリットがあると言われています。
主なメリットを列挙していきましょう。
- 一定以上の売上があれば、税金を安くできる
- 経費に計上できる範囲が広い
- 賠償範囲が有限
- 社会的な信用が高まる
- 優秀な人材を確保しやすい
- 事業の継続がしやすい
個人と法人では税金の取られ方が違います。
そのため一定額以上の売上があれば、法人に有利なケースが多く、法人化する一番の理由に挙げれます。
他にも経費面の優遇や賠償範囲が出資額に限定されること、社会的信用度が高いなどの恩恵があります。
法人化にはメリットが大きい一方、もちろんデメリットも存在します。
- 赤字でも税金は支払わねばならない
- 社会保険に加入する必要がある
- 会計や事務手続きの負担が大きい
- 会社を設立するには費用がかかる
一番大きなデメリットも税金です。
なぜなら、法人は赤字でも一定額の税金が課せられるからです。
他にも従業員が一人でもいれば社会保険に加入する必要があり経費が掛かりますし、会計などは複雑で自身の手には負えなくなるでしょう。
そもそも会社の設立には費用がかかります。
個人事業から法人へ移行する時は、このようなメリットとデメリットを比較検討しなければなりません。

一般的には、所得800万円、売り上げ1000万円を超えた場合、法人した方が良いとされています。
他にも「事業の拡大」や「大きな資金調達」のタイミングが挙げられます。
つまり、介護タクシーに当てはめると下記のようになります。
- 税制上有利になる売り上げが、安定して見込める時
- 従業員を5人以上雇いたい時
- 営業車両を5台以上にしたい時
売り上げが安定しているなら、個人事業主として所得税を払うより、法人税の方が安くて済むケースが多いです。
なぜなら、法人税は原則23.2%ですが、個人事業主の場合は所得が900万円を超えると33%となります。
800万円は丁度その境ですから、法人化の検討に値するというわけです。
また、介護タクシー事業は売り上げをアップするために、増員・増車して事業拡大します。
拡大して4台までなら人事に大きな変化は必要ありません。
しかし5台以上となると、「運行管理者」と「3級以上の整備士or2年以上の実務経験者」の二人を雇う必要が出てきます。
個人事業主として募集をかけても、応募はほとんどないでしょう。
しかし法人である会社として募集をかければ、集まる確率は格段に高くなります。
そのため、5台以上の増車時は、まさに法人化に適したタイミングだといえるでしょう。

介護タクシーを法人化するには、下記の2つの方法があります。
- 法人として新規許可申請して許可を得る方法
- 個人から法人に事業譲渡して認可を受ける方法
法人として新規で許可申請を受ける場合は、別人が許可を受けることと同義ですから、現在受けている許可番号を引き継ぐことは出来ません。
その代わり、事業譲渡よりは手続きが楽な場合が多いです。
対して、事業譲渡の場合は今ある「設備」「施設」「人員」を、会社の持ち物にする契約が必要になります。
個人から法人への譲渡、もしくは法人への賃貸契約しなければなりませんし、対外契約に関しては法人名義で結びなおしが必要です。
そのため事業譲渡は新規より、かなり手続き量が多くなります。
手続き量が多くなる事業譲渡ですが、「資金チェックが無い」というメリットがあります。
新規で許可を得る場合は必ず銀行残高を運輸局からチェックされます。
その結果、残高が不足していると判断されると新たな許可が下りません。
しかし、譲渡の場合は調べられることがないので、「手持ち資金がないだけ」という方はコチラを検討しましょう。
では、事業譲渡による法人化の流れを見てみましょう。
- 法人の設立
- 個人と法人間で譲渡契約
- 申請と認可
- 権限の移転や付与の手続き
この記事では、運営者が変わらない個人から法人への事業譲渡…いわゆる「法人なり」を想定しています。
ですが、別組織間の事業譲渡(A社からB社へ)であっても、大まかな流れは変わらないことを覚えておきましょう。

まずは個人から事業を受け渡すための「法人」を用意しなければなりません。
原則、どのような法人でもOKですが、「株式会社」「合同会社」「NPO法人」を選択する方が多いです。
「運送事業を行う」旨を、定款に必ず記載しておきましょう。
また既に法人を設立している場合は、定款の目的欄に「一般乗用旅客自動車運送事業」の文言を入れる必要があります。
書き換えして目的を変更しましょう。
法人が用意出来たら、次に個人と法人で事業を譲渡する契約書を作成します。
個人事業で使っていた車両、営業所、休憩所、車庫などの譲渡契約を交わします。
この時、個人の持ち物を法人にいくらで譲渡するか…
つまり「対価」の記載が認可申請に必要になります。
経営者が一緒でも、個人から別人に譲渡するわけですから、対価が必要になるというわけですね。
というわけで、何をいくらで譲り渡すのかを決めておきましょう。
この法人化を機に「個人」と「法人」の資産をきっかりと分けて、整理することを強くお勧めします。
例えば、法人に譲渡できない「自宅兼営業所」などは、個人の物件を法人に貸し出す賃貸契約を明示するか、新たに営業所を法人で用意しましょう。
なお、対価を含めた主な記載内容は以下の通りです。
- 事業譲渡における対価
- 譲渡の時期・方法
- 人員の異動
- 設備や機材などの所有権や使用権
- 停止条件付きの契約とするか否か
他にも多くの項目がありますが、漏れが生じないよう注意しましょう。
また、「譲渡譲受認可申請が下りた後」の条件で契約書を作成して、譲渡自体は許可後に行ってください。
スムーズに移行しやすくなります。

契約書を作成したら、許可申請を出しましょう。
管轄の運輸局へ「事業譲渡譲受認可申請書」と「自動認可運賃申請書」を提出します。
あらためて運賃の認可を受けておく必要があるので注意しましょう。
提出後、認可が下りるまで約3~4ヵ月程度かかります。
そして、待ちわびた認可が下りたら、各種の譲渡契約を実行に移ります。
使用する車両や営業所など、設備や環境の所有権・使用権原を移転・付与する手続きを完了させましょう。
また、従業員との雇用契約は法人名義で結びなおすことになります。
その際、主要人事も申請時どおりに選任しなおしましょう。
これにより法人として事業を運営できる環境が整い、運営が可能となります。
なお、運輸を開始した後に「譲渡譲受完了届」の提出が必要です。
忘れやすいので注意しましょう。
介護タクシーの法人化は、個人で運営していた事業をまるっと法人に譲渡する作業です。
なぜなら、運送業は「施設」「設備」「人員」に許可要件が付いているので、それらを丸ごと譲渡しなければ事業は継続できませんし、許可も下りません。
もし譲渡できない場合は、要件を満たしている「代わり」を用意することになります。
これらの譲渡契約の内容には十分な注意が必要です。
記載内容に漏れが生じてしまうと、営業が出来なかったり、認可自体が取り消しになったりします。
恐ろしいですね。

それなのに「何を、どこまで、どのように」処理すればよいのか、解りにくいのが現状の制度です。
そのため…
「法人したいけど、何から取り組めばいいのか見当がつかない。」
「自分なりに考えてみたけど、あってるのか不安だ。」
という方も多くいらっしゃいます。
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最後までお読みいただきありがとうございました。