年金の受給資格要件が年々厳しくなっている昨今、「定年を迎えたから隠居暮らしを楽しむ」というのも難しくなっています。
そもそも老夫婦世帯でも、月々22~24万円は必要だと言われています。
とてもではありませんが、年金受給だけでは暮らしていけないのが日本の現状です。
そのような社会情勢も手伝ってか、勤労意欲のある高齢者が増えています。
「定年後もバリバリ仕事をしたい。」
「身体の状態に合わせて、適度に仕事を続けたい。」
「お金ではなく、やりがいの為に仕事をしたい。」
それぞれモチベーションは違っても、定年後も就労を継続したい気持ちは同じ。
そして「資格」は就労に対して有利に働きます。
そこで今回は、定年後も活かせる人気の資格を紹介したいと思います。
この記事は、既に定年を迎えたが資格取得を目指している人、定年を見据えて資格の取得を考えている人、定年後の職探しに不安な人に読んでいただきたい内容です。
将来を見据えて何か資格を取っておこう、という方におススメの資格は無数にあります。
心身ともに充実した若者には、就職でも転職でも自分の目的に向かって邁進して欲しいところです。
しかし、社会的にも身体的にも制限のかかりやすい高齢者はそうもいきません。
無理して身体を壊しては意味がないからです。
そのため、定年後を見据えた資格の取り方には、いくつかのポイントがあります。
まずは資格を選ぶ際のポイントに関して説明していきましょう。
とりあえず、気を付けるべきは3つです。
- 自身の経験を活かせる資格を探す
- 社会が求めている資格を選ぶ
- 目的に合う資格を選ぶ
定年後でも、自身がこれまで積み上げてきたキャリアが活かせるに越したことはありません。
例えば不動産関係の仕事をしてきた人は不動産業界の資格を、長年会社の事務に携わってきた人は経理や総務関係の資格を取得するのがおススメです。
なぜなら、これまでの仕事で身に着けた知識が活かせるため、資格取得の勉強が楽になります。
長年の経験や技術が、自身の財産として身についている方ならなおさらです。
さらに資格によっては、勤務実績が考慮され資格取得までの時間を短縮できたり、学科試験などが免除される場合もあります。
自身のキャリアの強みを知っておき、資格に結び付けましょう。
この場合、今までと同じ業界で仕事を継続することになりやすいと言えます。
そのため、これまでの人脈が活かしやすいのもメリットと言えるでしょう。
社会が求めている資格を取得して、求められている人材になってしまえば、定年後の就労に有利です。
どのような人材が求められているかは、ハローワークでの求人や求人サイトから探ることが出来ます。
そのなかで「自分がやってみたい」、「時間や費用的に取得可能」、「知識的に取得できそうな」資格を選んでみましょう。
いずれも場合でも、取得できればニーズに合致するため就労に有利となります。
自身の引き出しが増え、活躍できる場所が増えることでしょう。
定年後に「どのように働きたいか」を考えて資格を選ぶこともポイントの一つです。
「現役世代と同じようにバリバリ働きたい!」といった方は独立開業も可能な資格を選びましょう。
そうすれば、自身で起業することもできるため、自身の心身が許すかぎり働くことが出来ます。
反対に「日々の生活に、潤いを与える程度の収入が上乗せ出来れば良い」「責任が重いのは嫌!」「身体的に無理のない範囲で働きたい」といった方もいるでしょう。
そういう方は、パートやアルバイトでの採用が有利になるような資格を選びましょう。
その場合、講習時間が短かったり、受験費用が安く済むことが多いのも特徴です。
そのような資格でも、場合によっては、上位資格に挑戦出来たり、現役世代並みの給与を望める資格もあります。
既に定年を迎えていたり、資格取得に多くの時間や費用をかけたくない方におススメの資格です。
正規雇用というより、パートやアルバイトなどの非正規雇用を確実に掴みたい方向けの資格を紹介します。
- 介護職員初任者研修
- 普通自動車二種免許
- 危険物取扱者【乙種第4類】
- 医薬品の登録販売者
取り扱う仕事内容 | 利用者の介助など |
資格の種類 | 公的資格 |
取得方法 | スクールでの講習 および修了試験 |
取得費用 | 5~10万円 (スクールによる) |
受講時間 (必要な勉強時間) | 130時間 |
合格率 | 非公開 (各スクール作成の試験で高合格率) |
介護職としての基礎知識や基本的な技術を習得するための研修です。
この資格を取得すると直接肌に触れる「身体介助」を行うことが出来るようになり、仕事の幅が一気に広がります。
介護職は無資格・未経験者でも採用が見込める職種ですが、この資格を持つことで採用が有利に働きます。
また資格による給与のアップも見込めるでしょう。
定年後は特に両親や配偶者の介護も考えられる年齢のため、この資格はプライベートでも役立つ資格と言えます。
また、介護業界は慢性的な人手不足が深刻化し、政府主導で介護職員の賃上げに動いているため、業界的にも狙い目と言えます。
取り扱う仕事内容 | タクシーやバスなどの運転業務 |
資格の種類 | 国家資格 |
取得方法 | ①教習所および学科試験・技能試験 ②一発試験 |
取得費用 | 22万円程度 |
受講時間 (必要な勉強時間) | 学科教習19時間 技能教習21時間 |
合格率 | ①35~40% ②一発試験では10%未満と難関 |
介護タクシーやハイヤーなど、お客さんを乗せて目的地まで送迎する「旅客運送」には、普通自動車第二種免許が必要となります。
旅客を乗せて安全快適に送迎するには、高い運転技術が求められるからです。
とはいえ、普段の運転で慣れている方にとっては、そう難しいものでもありません。
受講時間も他の資格より格段に短く、取得しやすい資格と言えるでしょう。
またタクシーをはじめとした運送業界は、慢性的なドライバー不足であり、再就職もしやすい業界となっています。
さらに給与も歩合制がほとんどで、頑張り次第によっては現役時代と同じくらいの収入も夢ではありません。
費用対効果の高い資格と言えるでしょう。
ただし視力や遠近感を測る深視力、聴力にある程度以上の条件が求められます。
取り扱う仕事内容 | ガソリンスタンドや ホームセンターの従業員 |
資格の種類 | 国家資格 |
取得方法 | 誰でも受験可能 テキストなどで自己学習 |
取得費用 | 受験料4,600円 交付申請手数料2,900円 |
受講時間 (必要な勉強時間) | 40~60時間 |
合格率 | 30~40% |
危険物取扱者の中でも、乙種第4類はガソリンやアルコールなどの引火性液体を管理するために必要な国家資格です。
略して「乙4」などと呼ばれます。
乙4は危険物取扱者の中でも、職場の選択肢が増えるため、人気が高いのが特徴。
特に、ガソリンスタンドやホームセンターなどのアルバイトなどに有利です。
また、誰でも受験可能で、勉強もスクールに通う必要もありません。本屋にも多くのテキストが販売されており、2~3カ月程度の自己学習で十分に取得可能です。
とはいえ、他の危険物取扱者よりも合格率は低いのが現状。
なぜなら、受験者の中にはしっかり勉強せず受験している人も多く混じっており、合格率を下げています。
しっかりと対策すれば難しい試験ではありません。
「趣味などの為にアルバイトをしたい」という考えの方におススメです。
取り扱う仕事内容 | ドラックストア等での 医薬品の販売や効果・副作用の説明 |
資格の種類 | 公的資格 |
取得方法 | 独学での取得可能 (ただし就業には実務経験が必要) |
取得費用 | 受験費用13,000~18,000円 登録手数料7000~8000円程度 |
受講時間 (必要な勉強時間) | 250~350時間 |
合格率 | 40~50% |
あまり聞きなれない医薬品の「登録販売者」とは、薬剤師以外で医薬品を販売できる専門家のことを言います。
2009年の薬事法改正により、作られた新しい資格です。
登録販売者は、一般医薬品の約9割にあたる第2類および第3類医薬品を販売することが可能。
また、購入する方に薬の効果や副作用についてのアドバイスも行います。
薬事法の改正により、一定条件を満たした店舗で登録販売者がいれば、コンビニやスーパーでも販売できるようになりました。
そのため、登録販売者の資格を有していれば、これらの店舗での採用が有利になります。
なぜなら登録販売者を手配できない時間帯は、医薬品コーナーを開くことが出来ないからです。
例えば、正規雇用の登録販売者が休みの時間を埋めるために、アルバイト採用されるといったこともありえます。
ただし、この資格は「就業には実務経験が必要」です。
有資格者でも一般従業員として、薬剤師や登録販売者の管理・指導の下で1~2年以上の実務経験が求められます。
実務経験には細かい条件がありますので、興味のある方はシッカリ確かめましょう。
定年をまじかに迎えた方でも「定年後も、高収入を狙って働きたい」「現役世代に負けないくらいに働ける」といった方も多いはず。
とはいえ、気持ちは現役世代と変わらなくても、肉体的に衰えていくのは必定です。
ならば、体に負担の少ないデスクワーク中心の「士業」系の職種を選ぶのがおススメ。
「士業」は独占業務を持つものも多いため需要が高く、年齢不問の求人も多くなり再就職に有利なのです。
その上、独立開業も目指すことが出来る優秀な職種です。
- ファイナンシャルプランナー
- 中小企業診断士
- 宅地建物取引士
- 行政書士
士業とは弁護士や税理士、司法書士など、各分野における高度な専門資格を必要とする職業の俗称です。
ほとんどは、末尾に「○○士」がつきます。
「士」を「サムライ」とも読むことから、「サムライ業」と呼ぶ場合もあります。
士業に明確な定義はありませんが、該当する職業ではそれぞれの分野で専門性の高い業務を行います。
そのため、複雑な手続きに煩わされている経営者などから、多くの需要があります。
なぜなら経営者は費用を払ってでも、経営に専念していた方が利益率が高いですから。
つまり、専門性の高さから難易度が高く有資格者が少ないうえ需要がある士業は、年齢に関係なく活躍しやすい職業と言えるでしょう。
取り扱う仕事内容 | 顧客の資産運用やライフプランニングなどに関する相談・助言 |
資格の種類 | 国家資格 |
取得方法 | ①、認定講座の修了 ②、3級FP技能士の合格者 ③、2年以上の実務経験者 ①~③のいずれかの条件を満たし、2級試験を合格 |
取得費用 | 認定講座受講費用40,000~130,000円程度 (各スクールや通信講座による) ※別途受験費用が必要 |
受講時間 (必要な勉強時間) | 150~300時間 |
合格率 | 40~60%(日本FP協会実施試験) 15~30%(金融財産事情研究所実施試験) |
ファイナンシャルプランナーはFP技能士とも言います。
FP技能士は、税金や不動産、投資、相続、教育、老後など、私たちの生活や家計に関するお金のエキスパート。
その知識を活かして、顧客の人生設計やライフプランの相談を受けるのが仕事です。
例えば、「住宅ローンの負担を軽くするにはどのような方法があるのか?」「現在加入している保険で将来の保証は大丈夫なのか?」といった相談が可能です。
他にも、老後の資金、相続関係、節税対策など、お金に関する分野を取り扱います。
資格には1級から3級までありますが、再就職のために活用するならば2級以上の取得を目指しましょう。
また、再就職先には、ハウスメーカーなどの不動産業界や保険業界などが中心となります。
さらには、自身の人生設計にも役立つため、どの資格を取るか迷っている方は検討してみましょう。
取り扱う仕事内容 | 企業経営に関するアドバイス |
資格の種類 | 国家資格 |
取得方法 | 受験資格は特になし 1次および2次試験合格後、15日以上の実務補習 |
取得費用 | 50,000~220,000円 (各講座、各スクールによる) ※別途受験費用が必要 |
受講時間 (必要な勉強時間) | 1000時間 |
合格率 | 3~8% |
中小企業診断士は、経営コンサルティングに関する唯一の国家資格。
主な仕事は、中小企業の経営課題に関して、その診断と改善をアドバイスすること。
他にも「経営改善計画書」と「経営診断書」の作成や、専門知識をセミナーなどで発信することも仕事の一つです。
また中小企業診断士は、資格を取得していること自体が評価のポイントになります。
その理由は合格率の低さ。
合格率が低いのにわざわざ取得したという事は、定年後の就職に本気であるということです。
さらには、経営学・経済学に関する有用な知識の持ち主であるとも証明されます。
また、この資格を活かして、独立開業もできるのもメリットです。
取り扱う仕事内容 | 宅地建物の公正な取引のサポート |
資格の種類 | 国家資格 |
取得方法 | 誰でも受験可能 就業には2年以上の実務経験 or 実務講習の受講が必要 |
取得費用 | 一般的なスクール講座費用10万円~ (独学でも勉強可能) ※別途受験費用や登録料などが必要 |
受講時間 (必要な勉強時間) | 300~500時間 |
合格率 | 15~17% |
宅地建物取引士は通称「宅建士」とも呼ばれ、新しく「士業」入りした職種です。
2014年以前は「宅地建物取引主任者」や「宅建主任者」とも呼ばれていました。
主な仕事内容は賃貸物件の斡旋や不動産の売買。そのため不動産業界で需要の高い資格です。
特に不動産会社の営業職には人気が高く、マッチした資格と言えるでしょう。
しかし、営業は歩き回るような体力勝負の面もあります。
そのため、定年後を見据えると不動産の購入や売却、相続などといった顧客の相談を受ける業務を希望するのがおススメです。
ただし、宅建資格は取得時だけでなく、登録や更新にもコストがかかるので注意しましょう。
この宅建試験は年間20万人以上が受験する最大規模の国家資格。
そのうち3000人以上の受験者が50代以上で、定年後を見据えた一定の受験者層がいることが伺えます。
取り扱う仕事内容 | 官公署への提出書類の作成代行 |
資格の種類 | 国家資格 |
取得方法 | 誰でも受験可能 |
取得費用 | 50,000~100,000円程度(各講座による) さらに就業には登録費や入会金、年会費が必要 |
受講時間 (必要な勉強時間) | 1000時間 |
合格率 | 10~12% |
行政書士は、依頼人の代わりに官公署へ提出する許認可などの書類を作成したり、提出の代行を行います。
主な仕事は「書類作成」「許認可申請の代理」「相談」の3つ。
特に許認可に関する書類は、会社の設立手続きや建設業の営業許可、飲食店などの開店許可など、多岐に渡り複雑なものが多くあります。
そのため、多くの方が困難な書類作成に悩んでいるため、需要があります。
現在、行政書士として業務を行う方の多くが独立しています。
そのため、定年後に独立開業を目指している方にはうってつけと言えるでしょう。
休みが平日の方は、定年前に副業で始めてみるのも良い経験となります。
ただし行政書士として働くには、各行政書士会に登録する必要があり、その後も年会費を払う必要が出てきます。
都道府県により差がありますが、入会金は20~30万程度、年会費は8万円程度。
決して安くない金額が、維持コストとしてかかることに注意しましょう。
士業は定年後に独立開業を目指すのに良い業種ですが、合格率や勉強時間から挫折してしまう方もいるでしょう。
また「そもそもデスクワークが嫌い」という方もいるでしょう。
そのような方は「介護タクシー」の開業を目指してみてはいかがでしょうか?
必要資格は上記に挙げた「普通自動車二種免許」と「介護職員初任者研修」のふたつ。
さらに介護保険との連動しない「福祉タクシー」で良いという方は「普通自動車二種免許」だけでもOKです。
通常開業には、事務所や店舗、車庫、人員などが必要となります。
しかし介護タクシーは、条件を満たせば「自宅との兼用OK」「自宅駐車場との兼用OK」「必要な人的要件が自身ひとりで兼任OK」です。
つまり、お客様を送迎する「福祉車両」を1台用意できれば開業することが可能です。
もちろん書類の整備や最低限の初期費用は必要ですが、他業種の開業よりもずっと安価に始めることが出来ます。
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人生100年と言われる昨今、多くの方は60歳の定年後にも就労の必要性が出てきています。
しかし、定年後も現役並みに働き続けるか、仕事量をセーブして身体的に余裕のある働き方を選ぶのかは人それぞれ。
どちらにせよ、自分の望む働き方で就労を継続できるに越したことはありません。
定年を迎えていない方は、開業も見据えた資格取得の準備を始めることをおススメします。
既に定年を迎えている方は、社会のニーズにマッチし、かつ取得しやすい資格を選んでみてはいかがでしょうか。
この記事があなたの一助となれば幸いです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。