介護タクシーを開業しようと思っていても、なかなか踏み出せない。
そんな方も多いと思います。
開業には色々な不安が付きまといますから。
例えば、開業にかかるお金ってどのくらいだろう?介護タクシーを始めたらお客さんは来てくれるのか?
などなど……
なかでも「開業して軌道に乗せて、無理なくやっていけるのか?」という不安は特に大きいと思います。
開業後の収支は事業の継続に直結しますからね。
せっかく頑張って開業したのに1~2年で廃業したら目も当てられません。
そこで今回は、介護タクシーの年間収支について、個人事業主と法人を比較しながらその概要を見ていきましょう。
この記事は…
- 介護タクシーや福祉タクシーの開業を志している方
- 介護タクシーの年間の収支に興味のある方
- 第二の人生の仕事を探している方
…などにお読みいただけると幸いです。
介護タクシーは個人事業主でも営業許可を取ることが出来るため、会社などの法人を作らなくても起業することが出来ます。
両者の違いは、起業にあたっては設立の手間と費用。
また、経営にあたっては税制の違いなどがありますが、詳しく知りたい方は下記のリンクをチェックしてください。
この記事では、個人事業主と法人の違いを下記の表のように設定します。
| 区分 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 車両台数 | 1台 | 2台 |
| 稼働日数 | 月22日 | 月22日 |
| 稼働内容 | 1日あたり病院3往復(片道運行6回) | 同条件を2台分 |
| 人員 | 自分のみ | 社員(ドライバー)1名+経営者(役員) |
| 税制 | 青色申告(所得税) | 株式会社(法人税) |
| 対象車両パターン | 軽自動車/ミニバン/ハイエース | 同様 |
主に車両と人員。そして税制面で違いが現れます。
法人は2台で稼働し、当然人員も2名…社員と経営者(ドライバーを兼ねる)とします。
これらの違いをもとに、営業車のパターンを変えてシミュレーションしていきましょう。

まずは、個人事業主の売上概算を見てみましょう。
各車両についての1回あたりの売上金が違うのは、レンタル品の代金分としています。
これは結構厳しめな概算になります。
というのも、介助料は基本介助料500円としてしか入れていませんし、医療機器のレンタル代(ストレッチャー代など)も1000円として計算しています。
実際は行った介助に対して料金は加算されます。
その上、ストレッチャーのレンタル代も相場は2000~3000円なので、均したとしても1000円では安い見積もりでしょう。
とはいえ「事業継続は可能か?」という趣旨のシミュレーションだと考慮し、厳しめの概算を算出しました。
| 内容 | 軽自動車 | ミニバン | ハイエース |
|---|---|---|---|
| 1回平均売上(運賃+介助料) | ¥2,500 | ¥3,000 | ¥3,500 |
| 1日売上(3往復=6回) | ¥15,000 | ¥18,000 | ¥21,000 |
| 月間売上(22日稼働) | ¥330,000 | ¥396,000 | ¥462,000 |
| 年間売上(12ヶ月) | ¥3,960,000 | ¥4,752,000 | ¥5,544,000 |
ちなみにお客さんに支払ってもらう運賃などの料金に関しては、個人事業主でも法人でも額は変わりません。
これは一般タクシーでも同じですね。
したがって、法人は車両2台稼働なので、単純にこの倍となります。

次は経費について出してみましょう。
経費は変動費と固定費別で車両タイプ別に計算しています。
変動費は主にタクシーが走行した分にかかってくるため、個人でも法人でも経費に違いはありません。
| 項目 | 軽自動車 | ミニバン | ハイエース |
|---|---|---|---|
| 燃料費(年) | ¥200,000 | ¥300,000 | ¥400,000 |
| 整備・オイル・タイヤ | ¥80,000 | ¥100,000 | ¥120,000 |
| 保険(対人・車両) | ¥150,000 | ¥180,000 | ¥200,000 |
| 消耗品・通信・雑費 | ¥70,000 | ¥80,000 | ¥100,000 |
| 小計 | ¥500,000 | ¥660,000 | ¥820,000 |
タイヤ代は交換などでかかる年とかからない年がありますが、あくまで均した金額と考えてください。
また、長距離送迎などが入ると高速道路の料金がかかってきます。
まさに「変動費」ではありますが、それ以上の売り上げが見込めるため、今回は割愛しています。
固定費は絶対にかかってくる経費のことです。
毎年(毎月)確実にかかるため、固定費をいかに少なくできるかが大事。
うまく抑えられれば、結構な額の支出を減らすことが出来るでしょう。
| 項目 | 軽自動車 | ミニバン | ハイエース |
|---|---|---|---|
| 車両リース/減価償却 | ¥300,000 | ¥500,000 | ¥700,000 |
| 自動車税・車検・駐車場 | ¥100,000 | ¥120,000 | ¥150,000 |
| 携帯・事務費 | ¥60,000 | ¥60,000 | ¥60,000 |
| 小計 | ¥460,000 | ¥680,000 | ¥910,000 |
例えば、車両は中古で買い上げてしまえば、リース代は浮きます。
事務所も自宅に兼ねてしまえば、余計な家賃を抑えることが出来るでしょう。
介護タクシーの起業では、開業と同時に事務所を借りるパターンはほぼほぼありません。
仮事務所となると、最低でも月10万円は見積もらねばなりませんからね。
そのため、上記の表には取り上げていません。

それでは以上の概算をもとに、年間収支のシミュレーションを見てみましょう。
| 車種 | 年間売上 | 年間経費(最小) | 営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 軽自動車 | ¥3,960,000 | ¥960,000 | ¥3,000,000 | 76% |
| ミニバン | ¥4,752,000 | ¥1,340,000 | ¥3,412,000 | 72% |
| ハイエース | ¥5,544,000 | ¥1,730,000 | ¥3,814,000 | 69% |
個人事業主における年間収支は以上の通り。
ですが、ここに税金を計算する必要があります。
個人事業主の場合は、所得税と住民税を合算すると税率は約20%です。
したがって、手取りは約250万~300万円ほどとなります。
法人の場合は、2台稼働のため売上・経費はほぼ倍となります。
ただし、社員のドライバー1名(年収300万円程度)を雇うことが前提となるため、人件費がかかることに注意が必要です。
| 車種 | 年間売上 | 年間経費(2台分+人件費) | 営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 軽自動車×2 | ¥7,920,000 | ¥2,420,000(経費)+¥3,000,000(人件費)=¥5,420,000 | ¥2,500,000 | 32% |
| ミニバン×2 | ¥9,504,000 | ¥2,680,000+¥3,000,000=¥5,680,000 | ¥3,824,000 | 40% |
| ハイエース×2 | ¥11,088,000 | ¥3,460,000+¥3,000,000=¥6,460,000 | ¥4,628,000 | 42% |
なお、法人税はの23%を引くと、純利益は200万~360万円となります。
ちなみに、自身の収入となる役員報酬は経費として計上できます。
そのため、個人事業主より節税効果は高くなります。

| 項目 | 個人(軽) | 個人(ミニ) | 個人(ハイ) | 法人(軽×2) | 法人(ミニ×2) | 法人(ハイ×2) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 年商 | 396万円 | 475万円 | 554万円 | 792万円 | 950万円 | 1109万円 |
| 経費 | 96万円 | 134万円 | 173万円 | 542万円 | 568万円 | 646万円 |
| 営業利益 | 300万円 | 341万円 | 381万円 | 250万円 | 382万円 | 463万円 |
| 純利益(税後) | 240万円 | 273万円 | 305万円 | 190万円 | 294万円 | 356万円 |
| 利益率 | 76% | 72% | 69% | 32% | 40% | 42% |
介護タクシーにおいて、個人事業主と法人の収支を比較した場合、個人の方が圧倒的に高い利益率となります。
というのも、人を雇うと300万円程度の人件費がどうしてもかかります。
これが法人の利益率を下げている原因ですが、重要なのはそこではありません。
注目すべきは、法人の方が個人より高い純利益を上げているという点です。
(一部異なりますが、次項で解説。)
これらは事業を小規模に行うなら、個人事業主の方が効率が良く向いており、事業拡大時には法人化した方が良いことを示しています。
個人事業主は効率が良い反面、ドライバーが自身のみで送迎できる回数が決まっています。
つまり売り上げに上限があります。
ですが、送迎車を増台し法人化を行えばその限界が拡大し、純利益の増加が見込めます。
さらには、役員報酬などで経費化を拡大することができ、節税的にも有利。
事業拡大時には法人化を前提に進めましょう。

なお、法人の軽自動車2台体制だけ、純利益が個人より劣っています。
これはせっかく増大しても、軽自動車2台では効率が悪いことの表れでもあります。
確かに軽自動車は経費は抑えられますが、寝たきりの方などの利用層の幅を広げられません。
これが最終的な利益に繋がらない原因となります。
よって、増台時はタイプが違う送迎車にすることをお勧めします。
今回のシミュレーションで「思ったより稼げないな…」と思った方もいらっしゃるでしょう。
ですが、介護タクシー事業者には、このシミュレーションよりもたくさん稼いでいる方は多くいます。
そもそも、シミュレーション自体が厳しめですからね。
諸説ありますが、介護タクシーの年収は500万円と言われています。
少なく感じた方のために、増益化の道筋を簡単に上げておきましょう。
- タイプ別の送迎車を増台する
- 送迎回数および単価を上げる
- 付き添い等の介護サービスを行う
- レンタル品の充実
まずは前述したとおり、タイプ別の車両を増台することです。
これにより客層が広がり、今まで利用できなかった方に利用してもらえます。
2つ目に送迎回数や単価を上げること。
増台することで、1台よりも客の依頼を断らなくても良くなり稼働率が上がります。
すると、送迎の回数が増えるだけでなく、遠くからの依頼も受けやすくなり単価が上がります。
3つ目は介護サービスの提供です。
付き添いや院内介助などに力を入れると、それだけで2000円程度の増額が見込めます。
また自社でストレッチャーなどのレンタル品を用意するのも良い手です。
高い利用率が見込めるストレッチャーなどを自前で用意すると、その分の利用料を丸々自社の利益にできます。
つまり、介護タクシーの増益には「運賃」以外の料金にも、目を向ける必要があるのです。

いかがでしたか?
シミュレーションの結果、個人事業主での年商は400~550万円、純利益は240~300万円。
法人になると、年商は800~1100万円、純利益は200~360万円。
つまり、1台増台し法人化すると50~60万円の増益が見込めることになる。(もちろんタイプ別などの戦略が必要。)
これらの数字から、考察すると以下のようになる。
- 個人事業主は高利益率
小規模・自分1人で運営するなら非常に効率的。
ただし、稼働上限が1台なので売上の伸びに限界。 - 法人化はスケール拡大時に有利
2台以上運営・従業員雇用・車両増加を想定するなら法人の方が有利。
社会保険・経費化の範囲も拡大し、節税余地がある。 - 車両タイプによる利益率の違い
ハイエースは初期投資・維持費が高いが、
高単価送迎やストレッチャー対応で売上が伸び、利益率も一定水準を維持。
もちろんシミュレーション以上に稼いでいる事業者も多くいます。
増益には「利用者が何を求めているか?」というニーズをとらえた戦略が大切となる、ことを心得ておきましょう。

またビスタサポートでは、介護タクシーの開業支援事業を行っています。
- 介護タクシーを開業したい方
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- 既に介護・看護の事業を行っているが、サイドビジネスも考えている方
- 第二の人生のため、何かしらのビジネスを検討している方
…などなど、介護タクシーに狙いを定めている方でも、はっきりとしたビジョンが無い方でもOKです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。



