「民間救急」は実際に利用したことはないけれど、存在自体は知っている。
一般にはそんな方が多いと思います。
介護&運送業界に生きる介護タクシー事業者でも、その業務内容は何となくしか把握していないのではないでしょうか?
現代の日本は高齢化の進行により、医療と介護の境界線がますます曖昧になっています。
特に移送の現場では、「介護タクシーだけでは対応しきれないケース」が年々増加の一途を辿っています。
その需要増加を受けて注目されているのが 、前述した民間救急(患者等搬送事業) です。
そこで今回は、介護タクシーの事業者・開業予定者向けに、民間救急の仕組みや必要資格だけでなく、車両基準、収益性まで、開業前に押さえておきたいポイントを総合的に解説します。
この記事は…
- 事業の拡大を考えている介護タクシー事業者
- 介護タクシーや民間救急で起業しようと思っている方
- 独立しようと思っている介護タクシードライバー
…などにお読みいただけると幸いです。
介護タクシーは「高齢者や障がい者など、移動に不自由がある方を対象とした送迎サービス」です。
それに対して、民間救急を言い表すならば、「救急車を呼ぶほどではないが、医療的ケアが必要な方の移送」となります。
このような緊急ではない「医療的ケアが必要な方の移送」は、在宅医療の普及によって急増しています。
そのような場合、家族だけでは安全に移動できないケースが多くあります。
その一例を挙げると下記のようになります。
- 退院後の移動
- 転院
- 長距離の医療搬送
- 医師や看護師の付き添いが必要な移動
このような場合は、介護タクシーではストレッチャーや医療器材を常備していないと対応が難しい場面も多くあります。
そのため、より医療に特化した「民間救急」が必要となるのです。
実際に、そのニーズの多さから、民間救急は日々存在感を高めています。

民間救急の正式名称は「患者等搬送事業」といいます。
これは特定の法律に基づく事業許可制度ではありません。
総務省消防庁が定める「患者等搬送事業基準」に基づき、各自治体の消防署が認定する 公的な許可事業 です。
また、道路を移送するという観点から、国土交通省の許可も必要となります。
民間救急の特徴は以下の通りです。
- 緊急ではない医療搬送 を行う
- 救急車(消防救急)とは完全に別
- 車両・スタッフは消防署の「審査・認定」を受ける
- 医療器材の搭載、ストレッチャー固定など一定基準がある
簡潔に言えば、「介護タクシーより医療寄り、救急車より民間寄り」という中間の存在になります。
なお、公的救急や救急車のことを、この記事ではわかりやすく以後「消防救急」と統一します。
ここで消防救急と民間救急の違いについて、見ていきましょう。
とりあえず表にすると、以下のようになります。
| 項目 | 民間救急 | 救急車 |
|---|---|---|
| 緊急性 | なし | あり |
| 費用 | 有料 | 原則無料 |
| 対応スタッフ | 患者等搬送乗務員、看護師等 | 救急隊 |
| 車載設備 | 酸素、吸引、AED 等 | 本格的な救急医療装置 |
| 対象 | 医療的ケアが必要だが緊急ではない人 | 急病や事故等の緊急患者 |
まず重要なのは緊急性。
というのも「民間救急」は、あくまで非緊急です。
つまり、一刻一秒を争うような緊急事態に対応する119の消防救急と競合するものではありません。
そのため、消防救急は車載設備も緊急性の高い救急医療の資器材に特化していますが、民間救急はそうでもありません。
許可をもらうときに消防から求められる装備の他は、事業主が必要だと思える装備を車載しています。
そのため同じ「民間救急」でも、装備品に差がでることがありますし、対応できるケースも違ってくることを覚えておきましょう。
また、消防救急が無料であるのに対し、民間救急は利用者が全額を支払う必要があります。
事業として移送サービスを行っているので、当然と言えます。
民間救急に使用される車両は大きく分けて3つの種類に分けられます。
- ハイエース・キャラバンなどの「救急車タイプ」
- スロープやリフトの付いた福祉車両
- 長距離搬送のために寝台車タイプ

最も使われているのは「救急車タイプ」になります。
全国のほとんどの消防救急では、ハイエースやキャラバンなどをベースとした救急車を使用してます。
そのため、使用期間の過ぎた救急車はその一部が民間などに払い下げられたりしています。
もちろんサイレンなどの緊急車としての装備は取り外され、緊急走行をすることは出来ませんが…。
それらの車両を使用している民間救急は多くいます。
元救急車だけあり、車内レイアウトも使いやすいようになっており、消防署の認定も受けやすいタイプです。
また、福祉車両を用いることも多いです。
これは介護タクシーから民間救急へ事業を拡大した場合に多く、既存の車両を改造するだけでOKのため、初期費用を抑えられるでしょう。
ただし、車内のスペースが狭かったりすると、処置に影響が出るため、許可が下りないこともあります。
さらには県をいくつもまたぐような長距離を専門にしている民間救急では、寝台車タイプを導入することもあります。
消防署が定める「患者等搬送車両の装備基準」は地域ごとに若干違いますが、ほぼ共通して必要な装備は以下の通りです。
- ストレッチャー・車いすの固定装置
- 酸素ボンベ・酸素マスク
- 吸引器
- AED
- 血圧計・パルスオキシメーター
- 救急バッグ
- 救急蘇生用具
- 消火器(火災予防条例に基づく装備)
また、車内レイアウトや衛生面の基準も設けられており、消防署が 実地査察 のうえ認定を行います。
いずれの装備もしっかり使えるか、きちんと固定できているかが審査されます。
もちろん安全基準を満たす必要があり、強度不足や代用品は認められません。
上記は消防署が求める最低限の装備になります。
このほかにも、事業所ごとの特徴に合わせて必要なものを車載しています。

民間救急は原則2人の乗務員で搬送します。
消防救急では3名が基本であるため、少ないように感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、民間救急は緊急性のない人が搬送の対象です。
運転手が一人、もう一人が利用者の見守り&応急処置となりますので、決して少ないわけではありません。
その証拠に、退院の場合や車いすのみを使用する時など、緊急性や重症度が低い場合には1名乗務も可能なのです。
そして民間救急の乗務員に必要な資格は以下の通りです。
- 患者等搬送乗務員基礎講習
- 医師、看護師、救急救命士など
患者等搬送乗務員基礎講習は、消防署や防災・救急協会などの認定団体が実施している講習です。
利用者の緊急時の対応や応急手当、搬送技術を学ぶことができ、民間救急には必須の資格となっています。
ただし有効期間が2年間と設定されています。
というのも救命処置などの手技は使用頻度も低く、一定のレベルを保つためには定期的な受講が必要だからです。
そのため、民間救急の乗務員であっても、3年目には再受講が必要となるので注意しましょう。
講習は3日間(8時間×3回)で、事業を休まなければならない時もあるので計画的に再受講しましょう。
また、地域や認定団体によっては、自宅などでの事前学習で講習時間を短縮できる場合もあります。
事前に確認しておきましょう。
つまり医学に関する知識をなにかしら修めている人…ということですが、多くの自治体では次のように表現されています。
医師、助産師、保健師、看護師、救急救命士、准看護師、医学士、看護学士(看護大学や大学の看護学部を卒業している、または看護大学・大学の看護学部卒と同等の学力があると認められた者)、または 患者等搬送乗務員基礎講習を修了した者と同等以上の知識・技術を有する者として消防長が認め、適任証の交付を受けている者
多少の違いがあることもありますが、意味するところは同じです。
つまり民間救急には、介護タクシーにはない「医療的観点」が必要になるということですね。
そのため、事業所によっては看護師や救急救命士の資格を必須としていることも多いです。

民間救急の利用例は主に下記のようになります。
- 入院・退院の移送
- 病院から別病院への転院
- 県外のリハビリ病院への長距離搬送
- 看護師付き添いでの帰省
- 自宅から施設への移動
- 医療処置がある方の通院・検査移送
いずれにせよ、介護タクシーでは対応が難しいケースで民間救急が利用されることが多いです。
介護タクシー事業者が民間救急を導入するメリットの最たるものは、その収益性でしょう。
というのも、介護タクシーと比較すると民間救急は明確に「高単価」だからです。
高単価になる理由を、ざっと挙げると以下の通りです。
- 長距離移送
- 看護師・救命士などのスタッフ追加料金
- 医療器材使用料
- ストレッチャー搬送費
介護タクシーの客単価が 5,000〜10,000 円だとすると、民間救急は 20,000〜150,000円以上 になることも珍しくありません。
特に民間救急の利用シーンは、県をまたぐような長距離の移送が多くあります。
この長距離移送が、大きな利益率の根源となっています。
その他にも、民間救急として業務するために必要な「看護師などの乗務員の報酬」、「医療機器の使用料」なども収益に関わってきますので覚えておきましょう。

医療と介護の境界を扱う「民間救急」。
そのため、法令違反など注意点が多く、事業体制の整備と乗務員の教育は絶対不可欠です。
- 医療行為の線引き(違法行為の防止)
- 看護師の確保
- スタッフ教育
- 車両と設備の維持費
- 消防署の査察・書類管理
- 保険加入(賠償責任)
特に注意が必要なのが「医療行為」です。
基本的に民間救急は「応急手当」以外の医療行為は出来ません。
決して法令違反などにならないよう、線引きをしっかりと行い、乗務員を教育しておきましょう。
ただし、医師や看護師の同乗があれば行える医療行為も多く、安心して長距離搬送が行えるでしょう。
そのため搬送元の医療機関と事前に連携し、医師や看護師の同乗を依頼する必要があります。
さらには、看護師資格などを持つ民間救急乗務員が搬送元の医師の指示を受けて、一定の医療行為(点滴管理や酸素投与、吸引など)を行う場合あるようですが、「可能」と明文化されたものはありません。
あなたの地域の自治体に事前確認するは不可欠といえます。
また、もしもの場合に備えて、保険の加入も怠らないようにしてください。
いかがでしたか?
民間救急は、介護タクシーの延長線上にありつつ、より医療に寄った専門サービスです。
これからの医療・介護のニーズを考えると、民間救急は確実に成長する市場です。
さらには収益性も高いため、参入の価値は高いと言えます。
ただし、人員や車両・設備の面から参入へのハードルが高いことも事実。
また「医療行為」という法令違反への危うさが、ハードルをさらに高くしているといえるでしょう。
しかし、だからこそ、あなたの地域で「民間救急」の看板を掲げている事業者はいまだ少ないはず。
あなたの英断で、地域のニーズを独占できる可能性もあるのではないでしょうか。
この記事があなたの一助となれば幸いです。
次の記事では、実際に「介護タクシー+民間救急」で事業をどのように拡大できるのか、具体的な導入ステップと収益モデルを解説したいと思います。

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