「救急車を呼ばなくていい社会をつくる」
株式会社VISTAが数々のピッチコンテストで掲げてきたビジョンが、いよいよ実証フェーズへと進む。
2026年6月1日から秋田県由利本荘市で「地域搬送DXプロジェクト」の実証運用がスタートした。
さらに7月1日からは、県都秋田市でも実証運用を開始する予定だ。
これまでVISTAは…
- NIKKEI THE PITCH GROWTHでSMBCベンチャーキャピタル賞
- Miyagi Pitch Contestでオリコ賞
- 仙台X-TECHイノベーションアワード2026で優秀賞
- 秋田市を変えろ!市長即決ピッチで入賞
…と約半年間という短い間に、数々のピッチコンテストで受賞してきた。
投資家、自治体、テクノロジー分野と、様々な方面から評価されたVISTAの「民間搬送エコシステム」。
その構想が、いま実際の地域社会で試されようとしている。
今回の実証運用について聞くと、多くの人がこう思うかもしれない。
「なぜ秋田なのか?」
実は、このプロジェクトにおいて秋田は非常に象徴的な地域だ。
秋田県は全国でも有数の高齢化先進地域として知られている。
人口減少、高齢化、交通空白地帯の拡大。
今後、日本各地で直面する課題が、すでに現実のものとなっている。
一方で、医療機関への通院や退院、施設間移動などの需要は確実に存在する。
しかし、
- 移動手段が限られている
- 家族の送迎負担が大きい
- 搬送事業者を探すのに時間がかかる
…といった課題が積み重なり、地域医療や介護サービスの継続にも影響を及ぼしている。
「VISTAが秋田発の企業だからということもありますが…」
と前置きして、VISTA代表の戸井田氏はこう語った。
「秋田は、日本の未来を先取りしている地域だと思っています。
例えば、高齢化率、人口減少のスピード、インフラの整備環境などなど…問題のある点が多いんです。
だからこそ、ここで機能する仕組みは全国でも通用する可能性が高いといえるでしょう。」
今回の実証運用は単なる地域限定の取り組みではない。
日本の高齢化社会に対する一つの解決モデルを検証する挑戦でもある。

このプロジェクトは、マッチングシステム「カイタクネット」とAIコールセンターによる搬送手配のDX
化を一本柱として推進する。
詳しく説明していこう。
今回の実証運用の中核を担うのが、VISTAが展開する搬送プラットフォーム「カイタクネット」だ。
現在、病院の医療相談員やケアマネジャーが搬送を手配する際には、多くの場合、複数の事業者へ電話をかける必要がある。
しかし、
「今日は予約がいっぱいです。」
「その時間帯は対応できません。」
というやり取りを繰り返すことも珍しくない。
それもそのはず。
秋田市では依頼側が100社以上にのぼるのに対して、搬送事業者は10社程度しかない。
結果として、1件の搬送手配に平均3~5社への架電が必要になる。
時間にすると、搬送手配だけで数十分から数時間を要するケースもあるほどだ。
これでは相談員やケアマネージャーの本来の業務を圧迫してしまう。
カイタクネットは、この課題をデジタルの力で解決する。
依頼内容をカイタクネットに登録すると、条件に合う事業者へ情報が共有され、迅速なマッチングが行われる。
これまで電話とFAXを中心に行われていた業務をオンライン化し、搬送手配の効率化を目指している。
VISTAの挑戦は、単なるWebサービスでは終わらない。
戸井田氏が重視しているのは、「誰でも使えること」だ。
高齢者の中にはスマートフォンやパソコンの操作に不慣れな人も少なくない。
そこで導入されるのがAIコールセンターである。
利用者はこれまで通り電話をかけるだけ。
AIが内容を聞き取り、搬送依頼を受け付ける。
その情報がカイタクネットへ連携され、最適な搬送事業者へつながる仕組みだ。
つまり、電話というに慣れ親しんだ入り口を、DXによる効率的なマッチングを融合させたのである。
「DXというと、どうしてもITが得意な人向けになりがちです。
でも、地域インフラは誰でも使えなければ意味がありません。」
戸井田氏はそう語る。
「スマホじゃなくてもOK。
従来の電話で、AIコールセンターの恩恵を受けることが可能です。」

ここで現状の手配方法と実証運用における手配では、どのような違いがあるのかビフォーアフターをまとめてみた。
| 項目 | 現状(before) | 実証(after) |
|---|---|---|
| 手配方法 | 複数事業者への電話ループ(3〜5社) | Webワンタップ または AIに口頭で依頼 |
| 事業者への依頼 | 1社ずつ電話で確認 | 複数事業者へ同時に配車依頼を送信 |
| 手配所要時間 | 数十分〜数時間 | 数分以内 |
| 業務負担 | 電話対応に時間を奪われる | ワンタップ または AI任せで完了 |
| 車いす・ストレッチャー 対応 | 対応可能事業者を1社ずつ確認・調整 | 対応条件をAIに伝えるだけで自動マッ チング |
| 事業者側 | 電話を取れず機会損失 | 非同期で受注、機会損失を解消 |
| ITリテラシー | スマホ・PC操作が前提 | Webでも電話でも同じAIに到達 |
ここから見て取れるのは、依頼者側の負担が大幅に削減されるというメリットだ。
依頼工程が1回で済み、あとはAIに任せてしまうことが出来る。
AI任せなのに、その入り口は電話でもOKなのだから、驚きだ。
また、事業者側にもメリットがある。
というのも、従来介護タクシーや民間救急の事業者は長年の信用や紹介により顧客数を増やし事業を拡大するものだ。
しかし、今後はカイタクネットに事業登録するだけで、条件に合う依頼が舞い込むこととなる。
つまり、事業拡大に最も必要な新規顧客の獲得が容易になるのだ。
さらにはカイタクネットとAIコールセンターにより、運転中の機会損失が確実に減ることになる。
つまり地域搬送DXプロジェクトは、利用者側にも事業者側にもWin Winをもたらすプロジェクトだといえるだろう。
さらにいえば、この実証運用は高齢者などの交通弱者に対する交通インフラ整備であるともいえる。
この実証運用が成功すれば、自治体にとっても大きなメリットをもたらすだろう。

今回の実証運用で期待される成果は以下のとおりである。
- 搬送手配時間の短縮
- 医療相談員やケアマネジャーの負担軽減
- 高齢者の移動手段確保
- 地域医療の継続性向上
- AIを活用した地域搬送モデルの確立
以上のような多岐にわたるが、VISTAが見据えるのは、さらにその先だ。
秋田で成果を上げることができれば、同様の課題を抱える全国の自治体への展開も現実味を帯びてくる。
ピッチのステージで語られた構想は、いま社会実装の第一歩を踏み出した。
「救急車を呼ばなくていい社会」
その未来は、秋田から始まろうとしている。
「救急車を呼ばなくていい社会をつくる」
これは、緊急時の救急要請を否定するものではない。
ただ、救急車を呼ぶ方の中には、本来は通院や退院の付き添いがいれば、救急車を呼ぶ必要がない方も一定数含まれているのが現状だ。
VISTAは、このような移動手段が見つからず119番に頼らざるを得ない方々の受け皿となるシステムを作ろうとしてる。
つまり、車イスやストレッチャー対応の医療移動サービスが、必要なときに必要なだけ届く社会を実現することで、本当に救急車を必要とする方のための余力を社会に残したいと考えているのだ。
「地域搬送DXプロジェクト」は、その第一歩といえるだろう。

秋田県由利本荘市で2026年6月1日からスタートした「地域搬送DXプロジェクト」の実証運用は同年11月30日までの6か月間となります。
詳しくは下記リンクを参照してください。
なお、秋田市では、2026年7月1日から2027年2月28日までの8か月間の予定で行われます。
実証運用中は、その成果を当ホームページにて報告しながら、運用を進めてまいりたいと考えています。
皆様にも注目し、運用に参加していただけると幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。


