介護食の種類と区分-状態にあった食事用意を

在宅介護をするとなった時や施設から一時帰宅した時など「食事はどうすればよいのだろう?」と、疑問に思ったことはありませんか?

「必ず介護食を準備しなきゃならない」とか、反対に「皆と同じ食事でいいだろう」と考えたりはしていないでしょうか。

要介護状態の方は、食事にも気をつかわなければなりません。

なぜなら福祉用具や介護用品を個人の体格や状態にあったものを使うように、食事も個人の状態にあったものを用意し、介助する必要があります。

したがって、要介護判定をされていても、他の家族と同じものが食べられるのであれば、わざわざ介護食を用意する必要はありません。

反対に咀嚼や嚥下といった、食べ物を噛み潰す力や飲み込む力が衰えている人は状態にあった種類の介護食を用意する必要があります。

今回は介護食の種類や区分について、解説していきたいと思います。

この記事は、これから在宅で介護が始まる方や近く一時帰宅が予定されている家族の方に、お読みいただけると幸いです。

食事介助の重要性

嚙む力や飲み込む力が弱まった人が、安全に食事が出来るよう調理したものが「介護食」です。

そもそも食事には2つの重要な役割があります。

ひとつ目は栄養を摂取すること。

高齢者でなくとも、日々の生活を健康に送るためには栄養を摂取しエネルギーを体に取り入れなくてはなりません。

加齢とともに食事量は減少しがちです。さらに食べにくさから同じものばかりを食べ、栄養が偏ってしまう高齢者も多くいます。

食事

そのような状態を防ぐのに介護食は適しています。

ふたつ目は食事という行為そのものを楽しむこと。

美味しいものを食べる時、親しい誰かと一緒に食卓を囲む時、人は幸福を感じるものです。

特に、家の中や施設で変化の乏しい生活をしていると、食事は重要な娯楽の一つであり、生活にメリハリを出す要因となるでしょう。

食べる力が弱った人をサポートする介護食は、食事の楽しみを提供する手助けになります。

食事は「生きる力を引き出す」重要な役割を担っていると心得ましょう。

また、介護食はイメージ的に「ミキサーにかけてペースト状にしたもの」を思い浮かべる方もいますが、実際には色々な種類が存在します。

本人の状態に合わせた食事を用意しましょう。

ちなみに、本人の状態を確認する時は、食事中にそっと頬に手を当ててみてください。

そうすることで、食べ物をちゃんと噛んでいるか、むせたりせずきちんと飲み込めているかを感じ取ることができます。

介護食の区分や種類について

食べる力に合わせた介護食の「区分」

介護食は本人の噛む力や飲み込む力に合わせて、以下の4つの区分に分けられています。

そのため介護をする時は、この区分を目安に食事を用意することになります。

区分食べる力の目安適した介護食・例
区分1
容易に
嚙める
かたい物や大きい物は食べづらい。
飲み込める。
・刻み食
・柔らかいご飯
・焼き魚
区分2
歯茎で
潰せる
かたい物や大きい物は食べづらい。
物によって飲み込みづらい。
・ソフト食
・柔らかいご飯~粒のあるおかゆ
・煮魚
区分3
舌で
潰せる
小さく、細かい物は食べられる。
水分が飲み込みづらいことがある。
・ミキサー食
・粒のあるおかゆ
・魚のほぐし煮
区分4
噛まな
くてよい
小さく細かい物も食べづらい。
水分が飲み込みづらい。
・嚥下食
・粒のないおかゆ
・白身魚の裏ごし

食べ物の状態を表した介護食の「種類」

次は、調理法の違いなどによる食べ物の状態別を表した介護食の種類です。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

介護食の種類
  • きざみ食
  • ソフト食
  • ミキサー食
  • 嚥下食
  • 流動食

きざみ食

きざみ食とは、食事を小さく刻んで食べやすい大きさにしたものです。

食べやすい大きさなら良いので、大きさは要介護者によって様々。

また必要以上に刻まないようにして、咀嚼力の維持にも努めましょう。

施設によっては1~2cm角だったり、みじん切り近くまで刻んであったり様々です。

さらに最大の特徴は、食事自体は健康な人と同じものなので、味や雰囲気が損なわれにくく、食事を楽しみやすい点です。

ただし食材によっては、細かい方が食べにくかったり、硬いままのものもありますので、合わせた調理が求めらます。

ソフト食

噛みやすさ、飲み込みやすさを意識して、できるだけ柔らかく調理した食事で、歯茎や舌だけで潰せることが特徴です。

原形を保ったまま、どれだけ柔らかく作れるかがポイント。

例えば硬いお肉や繊維の多い野菜でも、長く煮込んだりすることで柔らかくなります。

また、細かくした食材を再形成することもあります。

見た目は食事の原型を保っているので、食欲減退を防ぐことができます。

施設によっては、ソフト食の事を「軟菜食」といったり、名称が違うことがあります。

ミキサー食

食べ物をミキサーにかけてポタージュ状にしたものを「ミキサー食」と言います。

ミキサー食は噛む必要がなく、飲み込む力の衰えた人でも食事がとれます。

ただし、液体状にするため、飲み込む時に気管へ入ってしまう「誤嚥」が生じやすくなります。そのため、一般的には片栗などでとろみをつけて誤嚥を防止しています。

ミキサー食はその見た目から食欲がわきにくかったり、敬遠されてしまいガチです。

そのような場合は調理前の食材を見せるなどして、要介護者の安心を引き出す必要があります。

ただでさえ、水分が多いミキサー食は食事量が取りづらいため、見た目からも敬遠されてしまうと低栄養状態になってしまう恐れがあるため注意しましょう。

嚥下食

嚥下食は食材をミキサーにかけるところまではミキサー食と同じです。

異なる点は、ミキサーにかけた食材をさらにゼリーや寒天などで固め、口の中でのバラツキを抑えている点。

これにより誤嚥を防ぐ効果が期待できます。

特に嚥下能力が弱っている方に向いています。

ただし、ゼリーや寒天は切れが良く、ベタつきを抑えるように調整しておかなければ、喉に張り付き窒息の恐れが出てくるので注意しましょう。

また、嚥下食を「ゼリー食」と分かりやすく呼ぶこともあります。

流動食

流動食はスープ状になっており、固形物が取り除かれています。

そのため、噛む必要がなく、飲み込むだけで食事ができます。ただし、食事の楽しみが乏しく、栄養摂取に重きが置かれています。

消化に良い物が選ばれるので、食材的にも形状的にも特に胃にやさしい食事になります。

よって胃の調子が悪い時や手術後の人に向いています。

メニューの幅は狭く、具体的にはおかゆの上澄みである重湯や具なしの味噌汁、茶わん蒸し、ヨーグルトなどが該当します。

介護食を作る時のポイント

噛む力、飲み込む力が衰えた要介護者のために介護食を作る時は、以下の5つに気をつける必要があります。

介護食を作る時のポイント
  • 栄養バランス
  • 噛みやすさ
  • 飲み込みやすさ
  • 塩分
  • 見た目

栄養バランス

人間は加齢とともに食事量が減ることは仕方ありません。

そのため高齢者は必要な栄養素が不足がちとなります。

特に介護が必要な高齢者は、食事のしやすさに重点が置かれてしまうので、栄養面は後回しになってしまいます。

調理の段階で、不足する栄養素を含んだ食材を多く選びましょう。

自分で出来ることを多く残し健康を維持するためには、栄養バランスがとれた食事が必要ですね。

栄養

噛みやすさ

高齢者が栄養不足になる原因の一つに「食材を噛めなくなった」というものがあります。

つまり、噛む力が衰えたため食事そのものの量を減らしたり、噛めない食材を避け特定のモノしか食べなくなることが原因です。

これでは栄養が不足し、偏りも出てしまいます。

このような事態を避けるためには噛みやすさが重要です。

食材の大きさを細かくする、軟らかく煮る、食材のスジに切れ目を入れる等の工夫で食べやすい食事を意識しましょう。

飲み込みやすさ

また、噛みやすさの他に飲み込みやすさも重要です。

飲み込む動作を「嚥下」と言いますが、この嚥下も加齢とともに筋力が衰え、少しづつ嚥下能力は下がっていきます。

嚥下能力が衰えると、窒息や誤嚥性肺炎などの危険性が増えていきますので、飲み込みやすい食事を作ることは重要なのです。

ポイントは食材に熱を通し飲み込みやすくすること。また、液体状にしたものは片栗などでとろみをつけること、ゼラチンで固めてのど越しを良くすることなどです。

塩分

さらには塩分にも気を使いましょう。

高齢者は持病で高血圧にかかっている方が多くいます。

食事に塩分が多いと、血管中の塩分濃度を下げるため水分が多く流入し、一時的に血圧が上がってしまいます。これが、脳の血流量を増やし「脳出血」の原因ともなります。

塩分を控えめにすると食事は味気ない物になってしまいがちです。

しかし、出汁や酢、香辛料を用いることで、美味しく味をつけることができます。

塩を控えめに、塩分量をコントロールすることを心がけましょう。

見た目

食事に見た目は重要です。

食欲のわき方によって、食事量…栄養の摂取量が変わってくるためです。

きざみ食やソフト食は原形に近かったり、原形を残していることが多い為、問題はあまりありません。

ただし、ミキサー食には気を使った方が良いでしょう。

ミキサーにかける時は食材別に掛け色が濁らないようにする、食材の色にあう食器を用いるなどの工夫が考えられます。

柔らかい物は型抜きして形を整えても良いでしょう。

レトルト食品も活用しよう

介護食を毎回作るのは手間がかかります。介護者に余裕があるのなら良いのです。

しかし、疲れている時に、通常食と介護食の両方を3食ごとにいちから用意するのは現実的ではありません。

そんな時は介護食をレトルトにするなど手間を省く工夫も必要です。

もちろん通常食の方をレトルトにする時があっても良いと思います。

「介護の疲れ」は積み重なると、「介護離れ」に繋がります。

疲れを溜めないよう、手間を省くときも必要であると心得ましょう。

レトルト食品

レトルト食品のメリット

介護食にレトルトを用いるメリットは以下の通り。

レトルト食品を用いるメリット
  • 介護者の負担軽減
  • 種類も豊富
  • 長期保存がきく

なんといっても、介護者の負担が軽減されるのが一番のメリット。

作る手間の削減、調理時間の短縮、献立を食材から考え始める必要もありません。

また、レトルト食品は種類も豊富です。

食べられるもの中心となってしまう介護食は、自分で作るとどうしてもレパートリーが偏ってしまいます。

そんな時に、レトルト食品を活用するのも良い手段です。自分では作れない物、作りづらい物は無理せずレトルトに頼っても良いでしょう。

さらに、レトルト食品は保存も効きます。

買い置きしておくだけで、いつでも食べることができる、調理の手間がない、時間を短縮できる、この事実は心に余裕を持たせてくれるでしょう。

レトルト食品のデメリット

良いことだらけに感じるレトルト食品もデメリットがあります。

まず第一に割高であること。

やはり食材を買って自分で調理するよりは割高になります。

第二に味の調整が出来ないことです。

レトルト食品なので既に味がついています。

そのため、細かい味付けができない、好みの味に調整しにくい、といった点はデメリットと言えます。

まとめ

介護食には色々な種類があり、本人の区分に合わせる必要があるとわかって頂けたかと思います。

要介護者にとって、食事はマッチしたものでないと窒息や誤嚥の原因にも成りえるのです。

そのため食事を用意する人や介助する人は、噛みやすさや飲み込みやすさを考慮してください。

そういった気配りが事故を未然に防ぐでしょう。

また本人に適した食事を用意しても、食べてもらわなければ意味はありません。

そしてせっかく食べてもらえるならば、楽しく生きる活力を引き出す食事にしたいものです。

そのためにも、安全に楽しく食べるための食事介助の方法も確認しておきましょう。

しかし、食事の度にそれだけ気をつかっていれば、介護する方も疲れてしまいます。

疲れている時は無理せず、介護用のレトルト食品なども活用しましょう。

種類も豊富にあるので、定期的に献立に組み込んでも良い方法です。

長く続く介護を無理なくこなしていくためには、手間を省いて疲れを溜めないことも重要なのです。

この記事があなたの一助となれば幸いです。

また、私たちビスタは「介護タクシー」という介護関連の中の限られた分野ですが、皆様のお役に立ちたいと考えております。

長距離移動に介助が必要な方。

車移動の際、苦労されているご家族。

私たちにご連絡ください。ビスタがそのお悩みを解決します。

最後までお読みいただきありがとうございました。

食事介助

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です