救命講習の二大柱「心肺蘇生法」と「AEDの使い方」。
これはそのまま救命措置の二大柱ともいえます。
前回の記事では「心肺蘇生法」のやり方を解説しました。
今回は「AEDとはなんぞや?」を解説した後、「AEDの使い方」を詳しく解説していこうと思います。
あなたの目の前で誰かが倒れた時、後悔しないためにも心肺蘇生法のやり方とAEDの使い方を習得しましょう。
目次
AEDって聞いたことあるかな?
AEDってあれでしょ。
心臓に電気ショックかける機械でしょ。
そのとおり。
心肺停止状態の人に使う、命を救うための機械だよ。
その電気ショックで、止まった心臓が動き出すんですよね。
それは違うよ。
勘違いしている人が多いけど、心臓を動かすための機械ではないんだ。
じつはAEDは心臓の動きを止めるための機械なんだよ。
えっ!!どういうことですか!?
止めたら駄目じゃないですか!
でも命を救うのためには必要なんだ。
どういうことか説明していこう。
AEDの正式名称は「Automated External Defibrillator」といい、その頭文字をとって「AED」と呼んでいます。
日本語に直すと「自動体外式除細動器」といいます。
名は体を表すという言葉の通り、AEDの役割もその名称からわかります。
どういうことかというと…
- 「自動」=自動化されているので誰でも使うことができる
- 「体外式」=体の外にパッドを貼って使う
- 「除細動器」=心室細動を取り除くための機械
要は「誰でも使用可能な、心室細動を取り除く医療用の機械」ということ。
では「心室細動」ってなんでしょう?
そもそも心臓は「ドックン、ドックン」と、全体を大きく拍動することで、心臓内にある血液を全身に押し出しています。
しかし、AEDの電気ショックが必要になる状態の時は「ブルブル」と心臓の表面だけが細かく震えています。
そうなると、心臓は血液を送ることができず、脳は働かなくなり、呼吸も止まってしまいます。
この心臓が細かく震えた状態を「心室細動」というのです。
ちなみに心臓の役割をすごく簡単に説明した動画がこちら↓
大阪ライフサポート協会と株式会社モンキャラメル様が制作した「救え!ボジョレー」です。
倒れた人に胸骨圧迫を行うと、細動状態の心臓にも血液が回るようになります。
その血液中の酸素とエネルギーを使い、心臓は再び動こうします。
しかし、細動状態の心臓は震えることにエネルギーを消費してしまうのです。
つまり心室細動が正常な拍動を邪魔してしまうわけですね。
では、どうすればよいのか?
そう、AEDの電気ショックで「心室細動を取り除く」と良いのです。
電気ショックが成功すると心臓は「ピタリ」と停止してしまいます。
そこに胸骨圧迫を行って、心臓に拍動するための酸素とエネルギーを含んだ血液を流します。
そうすることで、再び心臓が正常に拍動する可能性…救命の可能性が生まれるのです。
つまり「異常な動きをしている心臓を止めてあげること」が、AEDの役割だと言えます。
まずはコチラの画像をみてください。
AED本体には番号が振られ、ケースにも番号に応じた簡単な説明書きが書いてあります。
また、傷病者に貼るパッドにもその位置がイラストで描かれており、わかりやすくなっています。
AEDの製造メーカーはいくつかありますが、どのメーカーも分かりやすく、誰でも使えるように工夫を凝らしています。
音声でも教えてくれるので、電源さえ入れてしまえばこっちのモノ!!
なので、初めての方も心配せずに行ってください。
中にはケースを開けただけで、電源が入る機種もありますよ。
ではここからは、AEDの使い方に移ります。
- AEDの到着まで心肺蘇生法を実施
- AEDが到着したら電源をいれる
- 胸部を確認し、電極パッドを貼る
- 心電図の解析中は触らない、触らせない
- 必要があれば電気ショック
- 心肺蘇生法を再開する
こちらは前回の記事でも紹介した、東京消防庁が公開している心肺蘇生法とAED使用方法の動画です。
1分40秒からAEDの説明に入ります。
記事の説明と合わせると、理解が深まりますので是非ご覧ください。
救命処置は心肺蘇生法とAEDの使用を組み合わせることで、大きな効果を発揮します。
AEDが到着するまで、心肺蘇生法を繰り返しましょう。
心肺蘇生法のやり方は前回の記事をご覧ください。
次に手配していたAEDが到着したら、傷病者の頭の近くに置き、電源をいれましょう。
また、持ってきてくれた人と協力し、心肺蘇生法とAED操作を分担して行いましょう。
すると胸骨圧迫の中断時間が短くなり、傷病者の救命確率を高めます。
AEDの電源さえ入れてしまえば、あとはAEDが音声で次の指示を出してくれるので安心です。
次は電極パッドを傷病者の胸部に貼り付けます。
貼り付け位置は下のイラストの通り。
二枚のパッドで心臓を挟む位置に貼り付けます。
未就学児はパッド同士が触れ合わないよう、胸と背中に貼り付けます。
まず、パッドを貼りつけるには胸部を上半身を裸にする必要があります。
しかし、一枚づつ服を脱がせる時間はありません。
ほとんどのAEDには、ハサミが備え付けられています。スグに脱げないような服装ならば、そのハサミを使って衣類を裁断しましょう。
胸元から腰に向かって切断した方が安全です。
そして胸が露出したら、4つほど胸部の確認事項があります。
- 胸部が濡れていないか
- 貼り薬がはられていないか
- アクセサリーはないか
- ペースメーカーが埋め込まれていないか
心臓が原因で倒れた人は、大量の冷や汗をかくことがあります。胸の前面が濡れている場合は拭き取りましょう。そのための布がAEDには付属しています。
同様に、湿布などの貼り薬がある場合、とって拭きましょう。
さらにネックレスのようなアクセサリーがある場合は、パッド貼付けの邪魔になってしまいます。スグにとれない場合は顔の方に寄せてしまいましょう。
また、胸部の皮膚下にペースメーカ埋め込まれていることがあります。皮膚の盛り上がりでわかります。その場合、5cm以上離してパッドを貼りつけましょう。
そして最大の注意事項ですが、パッドは皮膚に密着させましょう。
パッドを貼りつけると自動で心電図の解析が始まります。
その際、AEDが音声で解析を始めることを教えてくれます。
解析が始まったら、傷病者に触れないようにしましょう。他の人に触らせてもいけません。
なぜなら、AEDが正確な心電図を判断できなくなってしまうからです。
せっかく電気ショック適応の心室細動の波形なのに、解析が失敗してしまったら…千載一遇のチャンスを逃すことになります。
よって、解析中は絶対に傷病者に触れてはいけません。
救助者も、みずから「触れないでください」と周囲に教えましょう。
そして心電図の解析が終了し、適応の波形であればAEDは電気ショックのための充電を開始します。
その際、AEDは「充電中です」とメッセージを流します。
その間に、救助者はもう一度離れるように周知しましょう。
充電が完了したら、最後にもう一度、誰も触れていないことを確認し、電気ショックをかけます。
また、適応外の波形であれば、「電気ショックは不要です。」とメッセージが流れます。その場合は、ただちに心肺蘇生法を再開してください。
電気ショックをかけ終わったら、即座に心肺蘇生法を再開します。
前項目「心拍再開を邪魔する心室細動」の説明の通り、電気ショックが成功していれば、心臓は停止状態です。
その心臓に心拍再開のエネルギーを送るため、一瞬でも早く胸骨圧迫を行いましょう。
また、2分後にはAEDが再び心電図の解析を始めますので、あとはAEDのメッセージに従って行動してください。
基本的にはAEDの解析(と電気ショック)→心肺蘇生法の繰り返しです。
AEDの操作を含む心肺蘇生法を止める時は2つのパターンがあります。
ひとつ目は救急隊と交代する時です。
交代する直前まで胸骨圧迫を続けてください。そして交代した後、現場の状況や実施した手当、電気ショックの回数などを救急隊へ教えてください。
ふたつ目は傷病者が目を開けたり、「普段通りの呼吸」が戻った時です。
この時は心肺蘇生法をいったん中止し、傷病者の観察を行います。呼吸が再び弱まったりしていないか確認しながら、救急隊の到着を待ちます。
この場合でもAEDの電源は落とさずに、パッドも貼り付けたままにしておきましょう。
- 「自動」=自動化されているので誰でも使うことができる
- 「体外式」=体の外にパッドを貼って使う
- 「除細動器」=心室細動を取り除くための機械
「心室細動」という「異常な動きをしている心臓」を電気ショックで止めてあげることが、AEDの役割です。
また、どのメーカーのAEDも簡単に使えるよう工夫されています。
- AEDの到着まで心肺蘇生法を実施
- AEDが到着したら電源をいれる
- 胸部を確認し、電極のパッドを貼る
- 心電図の解析中は触らない、触らせない
- 必要があれば電気ショック
- 心肺蘇生法を再開する
AEDは電源さえ入れてしまえば、音声で次の行動を教えてくれます。
聞き漏らさず、確実に行動しましょう。
また電気ショック後の2分間は「ゴールデンタイム」とも呼ばれ、最も心拍再開率の高い時間帯です。
千載一遇のチャンスを生かせるよう、救命講習の受講をおすすめします。
私たちビスタでも、秋田市内であれば皆様のもとに救命士を派遣して救命講習を開催しています。気軽にご相談ください。
次回はその他の応急手当について説明していきます。
この一連の記事が、いざという時にあなたの背中を押す助けになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。