心肺蘇生法(CPR)のやり方-動画と説明文でわかりやすく

救命講習とは「心肺蘇生法」と「AEDの使用法」の一連のやり方を習得するためのもの。

これらを行なう事により、目の前で倒れた人を助けられる可能性が上がります。

いわば「命」を「救う」ための講習になります。

今回はその2回目。

この記事では心肺蘇生法のやり方について説明したいと思います。

救命講習の流れ

まずは救命講習を受講すると、大体どんな流れで進んでいくのかを解説します。

スタンダートな普通救命講習Ⅰの流れは下記の通り。

普通救命講習Ⅰの流れ
  1. 座学(動機付け)
  2. 心肺蘇生法とAED使い方のデモンストレーション
  3. それぞれの手技の解説
  4. 実技&フィードバック
  5. 止血法と異物除去法
  6. 質問タイム

座学で「なぜ皆さんに心肺蘇生法を覚えてもらいたいのか」を説明した後、講師が一連のデモンストレーションを行います。

その後、各手技のコツや注意事項を説明したのち、グループに分かれて実技に入ります。

実技は一人ひとり行い、その都度良かった点や修正点を伝え、フィードバックします。

このフィードバックをグループで共有することで、全員のレベルアップを図っています。

救命講習会の実技はグループごと

その後、止血法異物除去法を説明し、最後に質問タイムを設けて終了です。

普通Ⅱでは、その後試験。

上級では、さらに各種の応急処置を学ぶことになります。

また、救命講習の種類でお悩みの方は、前回の記事を参考にしてください。

心肺蘇生法とは

英語で心肺蘇生法は「CardioPulmonary Resuscitation」といい、その頭文字をとって「CPR」と言ったりします。

ちなみに「Cardio=心臓」「Pulmonary=肺」「 Resuscitation=蘇生」となります…そのまんまですね。

つまり心肺蘇生法とは、心臓が止まり、呼吸もしていない人に対して行う蘇生のための手技。

言い換えれば、自分が倒れた人の心臓や肺の代わりになるための手技であると、念頭に置いてください。

具体的には「胸骨圧迫」と「人工呼吸」を心肺停止状態の人に対して繰り返し行います。

心肺蘇生法は応急手当のひとつ

「なんかもうすでに、心肺蘇生法って難しそうじゃね?」

「そもそも命を救う?医者でもない一般市民の自分にもできることなの?」

と思われた方いるかもしれません。

ですが、心配ありません。

なぜなら心肺蘇生法は、あくまで止血や冷却といった「応急手当」の中のひとつだからです。応急手当は簡単に行えるように考えられてますからね。

例えば、膝をすりむいたとき、血の出ている傷口を押さえますよね?

指先を火傷をして冷やするとき、水道水に指をさらしますよね?

「心肺蘇生法」も応急手当のひとつなので、簡単に出来るよう考えられています。

ただ、止血や冷却はワンアクションで完結しますが、心肺蘇生法は「観察」「胸骨圧迫」「人工呼吸」の3つのアクションが必要です。この点だけ少し難しいかもしれません。

しかし、少し練習すれば出来るようになるので、あまり気負わずに練習してみましょう。

心肺蘇生法のやり方

本題の心肺蘇生法のやり方は以下のようになります。

心肺蘇生法の一連の流れ
  1. 周囲の安全を確認する
  2. 反応の確認
  3. 119番通報とAEDの手配
  4. 呼吸の確認
  5. 胸骨圧迫
  6. 人工呼吸
  7. 継続(胸骨圧迫と人工呼吸)

下の動画は東京消防庁が公開している心肺蘇生法とAED使用方法の動画です。

記事の説明と組み合わせると、理解が早まると思いますので、是非ご視聴ください。

東京消防庁公式:成人の心肺蘇生法

1.周囲の安全を確認する

倒れている人を見ても即座に駆け寄ってはいけません。必ず周囲の安全を確認しましょう。

例えば、道路の真ん中に倒れている人に駆け寄ると、自分がひかれてしまうかもしれません。

人一人を助けるのに、自分が犠牲になっては元も子もありませんからね。

状況にあわせて安全を確保し、それから近づきましょう。

2.反応の確認

次に傷病者の反応を確認します。

耳元で「大丈夫ですか?」と声をかけましょう。

反応がない場合は声を大きくし、肩を叩きながら再度「大丈夫ですか?」と繰り返しましょう。

心肺蘇生法:反応の確認

それでも反応がない場合は、傷病者に異常があると判断し、大声で周囲に助けを求めます。

3. 119番通報とAEDの手配

駆け付けてくれた人に、119番通報AEDの手配を依頼しましょう。

群衆になっている場合は、目を見て手で指してお願いします。セリフは次の通り。

「この方は意識がありません。あなたは119番して救急車を呼んでください。」

「あなたは近くからAEDを持ってきてください。」

どうしても協力者がいない場合は自分で119番通報してから、次の呼吸の確認に移ります。

ちなみに119番通報すると、消防の通信員が電話口で次の手順を指導してくれるので安心です。

その場合は手技がしやすいようスピーカーフォンモードにしましょう。

4.呼吸の確認

次に傷病者が「普段の呼吸をしているか」を確認します。

傷病者の脇に両ひざで立ち、10秒以内で胸やお腹の上下運動を上から見て、呼吸の有り無しを確認します。

現在はコロナ流行期ですので、あまり顔と顔を近づけるのはやめましょう。

心肺蘇生法:呼吸の確認位置
呼吸なしと判断するポイント
  • 胸やお腹に動きがない時
  • 10秒観察しても呼吸をしなかった時
  • しゃくりあげるような動きしかしない時(死戦期呼吸)

しゃくりあげるような呼吸を「死戦期呼吸」と言いますが、呼吸は出来ていません。

この「死戦期呼吸」は心臓が止まりそうな時に稀に見られる症状で、なんとか酸素を取り込もうと口回りの筋肉だけが動いている状態です。肺を動かす、胸やお腹の動きが無いため、酸素を取り込めていないのです。

ポイントは普段通りの呼吸をしているかどうか?」です

普段通りの呼吸がない」=「心停止」と判断して、胸骨圧迫を開始します。

もし、反応はないが「普段通りの呼吸がある」場合は、様子を見ながら救急車の到着を待ちましょう。

5.胸骨圧迫

普段通りの呼吸がなければ、すぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始します。

ハンカチなどがあれば口元に軽く被せ、ウイルスの飛散を抑えてから始めてください。

やり方は、あなたの重ねた両手で、傷病者の胸の真ん中「強く」「速く」「絶え間なく」圧迫します。

この時、「骨折させてしまったらどうしよう」などの、危害を恐れてはいけません。

なぜなら、あなたの胸骨圧迫がなければ助からないからです。

胸骨圧迫のポイント
  • 押す場所は傷病者の胸の真ん中
  • 組んだ両手の付け根(手掌基部)を当てる
  • 肘を伸ばし、胸が5cm程度沈むよう垂直に圧迫
  • 速さは1分間に100~120回のテンポ
  • リコイル(胸が元の位置まで戻るよう)に気を付ける
心肺蘇生法:胸骨圧迫の手の組み方

まずは片手の付け根(手掌基部)を傷病者の胸の真ん中に当てて、もう片方の手を組んでください。

後は肘をのばし、自分の体重を使って、垂直に胸を圧迫します。腕の力だけで押すと、スグに疲れてしまいます。

また圧迫と圧迫の間は力を抜いて、胸を元の位置まで戻します。これをリコイルと言います。

そうしないと血液が心臓に戻ってきません。手は胸に触れたまま、5cm押したら5cm戻す意識を持ちましょう。

そして、胸を30回「強く」「速く」「絶え間なく」圧迫します。

この繰り返しで、傷病者の体内で血流が再開し、全身に血液が回ります。

6.人工呼吸

次に人工呼吸にうつります。

人は意識を失うと重力にひかれて舌が下がってしまい、稀に空気の通り道である気道を塞ぐことがあります。

そのため、頭部後屈あご先挙上法を用いて気道確保を行います。

片手を額に当て、もう片方の手の2本の指であご先に当てて、傷病者の頭を後ろにのけぞらせ(頭部後屈)、あご先を上にあげます(あご先挙上)。

これで舌が持ち上がり、気道が開通します。

後は、額に当てた手の人差し指と親指で傷病者の鼻をつまみ、口と口を合わせて息を吹き入れます。

コツは以下の通り。

人工呼吸のポイント
  • 口対口で鼻をつまみながら吹き込む
  • 胸が上がる程度の量でよい
  • 1回、1秒間かけて吹き込む
  • 2回続けて試みる(失敗しても3回目にいかない)
  • 10秒以内におえる
心肺蘇生法:気道確保と人工呼吸のやり方

息はおもいっきり吹き込んではいけません。

なぜなら吹き込む量が多いと、肺ではなく胃に入ってしまうから。そうすると、胃の中の残留物が逆流し、嘔吐してしまう原因となります。

胸が上がる程度で良いので、2回に分けて吹き込みましょう。

吹き込む時は、脇目で胸が上がっているのを確認します。

たとえ失敗しても2回までとし、胸骨圧迫に戻りましょう。

7.継続(胸骨圧迫と人工呼吸)

あとは胸骨圧迫の30回人工呼吸の2回を継続します

これはAEDの操作にうつるか、救急隊が到着し交代する直前まで、継続してください。

もし協力者がいるならば、心肺蘇生法は2分間を目途に交代しながら行いましょう。もしくは胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を1サイクルとし、5サイクル行った後に交代しましょう。

疲れると有効な圧迫が出来ません。

心肺蘇生法:胸骨圧迫は交代しながら

また、場合によっては人工呼吸を省略しても構いません

例えば、顔面や口の近くに出血が見られる時や吐物が付着している時などは、病気が感染する恐れがあるため人工呼吸は控えます。

また口と口の接触がためらわれる時などでも、人工呼吸を省略しても構いません。

さらにコロナのような感染症が流行している時期は人工呼吸は避けた方が無難です。

その代わり胸骨圧迫を連続で行いましょう

もし、一方弁のついたポケットマスクなどを持っているなら、積極的に使って感染防止に努めてくださいね。

心肺蘇生法のまとめ

心肺蘇生法は「観察」「胸骨圧迫」「人工呼吸」の3アクションで成り立つ応急手当です。

それぞれのポイントは以下の通り。

呼吸なしと判断するポイント
  • 胸やお腹に動きがない時
  • 10秒観察しても呼吸をしなかった時
  • しゃくりあげるような動きしかしない時(死戦期呼吸)
胸骨圧迫のポイント
  • 押す場所は傷病者の胸の真ん中
  • 組んだ両手の付け根(手掌基部)を当てる
  • 肘を伸ばし、胸が5cm程度沈むよう垂直に圧迫
  • 速さは1分間に100~120回のテンポ
  • リコイル(胸が元の位置まで戻るよう)に気を付ける
人工呼吸のポイント
  • 口対口で鼻をつまみながら吹き込む
  • 胸が上がる程度の量でよい
  • 1回、1秒間かけて吹き込む
  • 2回続けて試みる(失敗しても3回目にいかない)
  • 10秒以内におえる

心肺蘇生法を行なっている間は、人工呼吸やAED操作以外の時間は、出来るだけ絶え間なく胸骨圧迫を行うことが大切です。

なので、救急車のサイレンが聞こえてきたからといって、止めてはいけません。救急隊が近くまで来ている安堵感から、ついつい手を止めて、誘導に出てしまう人がいます。

気持ちはよくわかりますが、救急隊に引き継ぐ瞬間まで、胸骨圧迫を続けてください。

なぜなら、あなたの心臓は今のこの瞬間も動いているでしょう。

あなたは傷病者の心臓なのです

あなたの絶え間なく行う胸骨圧迫が、救命のタイムリミットを引き延ばしてくれるのです。

最後に~ビスタの取り組み

私たち「救急救命士の介護タクシービスタ」では、事業所のある秋田市内で救命士を派遣し救命講習会を開催しています。

派遣する救急救命士は、講師として数多くの受講生を指導してきました。

開催や派遣に関する費用は無料です。

町内会の開催時刻や会社の終業時間に合わせた講習会も可能ですので、ぜひ電話やwebでご相談ください。

次回は救命講習のもう一本の柱「AEDの使用方法」について説明します。

続けてご覧いただけると嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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