介護タクシーの予約方法として、近年は専用アプリやWEB予約フォームも少しずつ増えてきました。
しかし実際の現場では、いまだに電話予約が主流という事業者が大半ではないでしょうか。
高齢者本人やそのご家族、ケアマネジャーにとっては、「電話で直接話せる安心感」が何より重要だからです。
信頼が第一の介護タクシーですから、電話対応の良し悪しによって、利用の可否に繋がるのは自明の理といえます。
利用者側にとっては、利用前に事業者を査定できる数少ない機会なので当然です。
一方で、一人で介護タクシーを開業・運営している場合、電話対応は大きな負担になりがちです。
運転、介助、事務作業をこなしながら、いつ鳴るかわからない電話に対応するのは簡単ではありません。
そこで今回は、一人介護タクシー事業者に向けて、電話対応を無理なく効率化するための考え方と具体的な工夫、ツールの使い方を解説します。
この記事は…
- 介護タクシーの開業を志している方
- 開業して間もない介護タクシー事業者
- 何かしらの事業を始めようと思っている方
…などにお読みいただけると幸いです。
まず、電話対応がなぜこれほど大変なのかを整理してみましょう。
主な理由は以下の通りです。
- 運転中・介助中は電話に出られない
- 出られなかった電話の折り返しが増える
- 料金や対応内容など、同じ質問が何度も来る
- 聞き間違いやメモ漏れによるトラブルの不安
電話は即時性が高い反面、他の業務を中断させる割り込み作業になりやすいのが特徴です。
当然、運転や介助などの「現在」の業務を優先させなければなりませんが、電話に全く出ることが出来ないと「未来」の業務が無くなってしまいます。
いわゆる「機会損失」です。
ほとんどの事業者は「できる限り電話に出て、依頼を受けたい」でしょう。
しかし、介護タクシーは一人一台体制の事業所がほとんど。
一人で運営しているからこそ、電話対応の負担は想像以上に大きいのです。

電話対応の負担が大きいからと言って、受付のため明日からもう一人雇うというわけにもいかないでしょう。
そのため、電話対応をできる限り効率化する必要があります。
主な工夫は以下の通りです。
- 電話対応の「基本ルール」を決める
- よくある質問は「電話の前」に解決する
- 「留守番電話を戦力」にする
- 電話の内容は「型(テンプレ)」で聞き取る
効率化の第一歩は、ツールの導入ではなく、電話対応の「基本ルール」を自分の中で決めることです。
たとえば「運転中には出ない。」などといったルールを決めておくと良いでしょう。
このような基準さえしっかり作っておけば、電話に「出る」or「出ない」で迷うことが無くなります。
ひいては、自分や利用者の安全にも関わることですので、しっかりと決めておきましょう。
もちろん「基本ルール」は事業者の皆さんが独自で決めることです。
が、参考まで以下に例を示しておきます。
- 運転中は無理に出ない
- 電話対応は営業日の〇時~△時まで
- 留守番電話が入っていない着信は折り返さない
- 折り返しは当日中(または翌営業日)
このような内容を、あらかじめホームページなどに掲載しておくことも重要です。
たとえば「留守番電話に氏名及び用件が録音されていない場合、折り返しはいたしませんのでご了承ください。」と記載しておくと良いでしょう。
「着信を入れたのに、折り返しがなかった。」などのクレームに対して、正当性を主張できます。
また利用者の「してもらって当然」という期待値を無意識的に下げることが可能なため、苦情そのものが少なくなるでしょう。
電話対応で「依頼」の他によくあるのが、「質問」です。
しかも、電話の内容を振り返ると、「決まった質問」が多いはずです。
いわゆる「よくある質問」というものです。
例えば…
- 料金はいくらぐらいか
- どこまで対応エリアか
- 車いすやストレッチャーは使えるか
- 付き添いは何人まで可能か
…などといった質問です。
これらはホームページにわかりやすく回答を記載しておきましょう。
Googleマップを活用している方は、Googleビジネスプロフィールにも記載してください。
こうすることで「質問」電話の何割かが減少するはずです。
結果として、本当に予約したい方からの電話が増え、対応効率が向上します。

また効率化に必須なのが、留守番電話を戦力にすることです。
留守番電話は、単なる不在通知ではありません。
なぜなら、使い方次第で「情報を整理してくれる重要なツール」と化すからです。
それにはまず、録音メッセージ機能を使って、具体的に案内をする必要があります。
例えば…
「お名前、ご利用希望日時、出発地と目的地、車いすの有無をお話しください。」
この一言があるだけで、本当に予約が必要な方の多くはメッセージを残してくれます。
そうすると、折り返し回数が減るほか、聞き返しも不要になります。
結果的に予約のミスも減り、トラブル減少にもつながります。
また電話対応の時には、聞き取りする内容をあらかじめ決めておきましょう。
いわゆる、聴取事項の「テンプレ化」ですね。
テンプレ化すると、いちいち頭で考える必要が無くなり、疲れが少なくなります。
聴取事項の例としては以下の通りです。
- 利用者名
- 電話番号
- 利用日時
- 出発地・目的地
- 介助内容
- 料金案内の有無
その際、聞く順番も固定しておくと、聞き漏らしが大きく減ります。
聴取事項は紙でもスマホのメモアプリでも構いませんので、確実に書き留めてください。
そして出来るだけ早いうちに、共有カレンダーなどを用いた予約表に打ち込みましょう。
聴取から打ち込みまでをルーティーン化しておくと、ミスの減少に繋がります。

電話対応を効率化するのは、自身の工夫だけではありません。
さらに、使える道具(ツール)はちゃんと使って効率の最大化を図りましょう。
- Web予約・問い合わせの併用
- スマートフォン標準機能の活用
- 転送・自動応答サービスの活用
まずはWebでの予約や問い合わせを併用する方法です。
介護タクシーの予約は、電話が主流ですが、なかにはWeb予約の方が都合の良い方もいます。
たとえば、利用者本人というよりは、ケアマネージャー、病院関係者、ご家族などの関係者です。
さらに言えば、Web予約はこれから確実に増えていくでしょう。
Web予約といっても、難しい事ではありません。
事業所のホームページにお問い合わせフォームを用意して、予約を受け付けるだけです。
ホームページがない方はLINE公式アカウントでも良いでしょう。
むしろLINEの方が喜ばれるかもしれません。
これらを用意することで、電話に集中していた予約対応を分散できます。
ただし分散しすぎは、かえって効率が悪くなるうえ、ミスにも繋がりかねません。
そのため、予約の入口は2~3つに絞り込みましょう。
次にスマートフォンの標準機能を活用する方法です。
特別なシステムを入れなくても、スマートフォンの標準機能は非常に優秀です。
例えば…
- 着信履歴からワンタップで折り返し
- ボイスメモで通話内容を記録
- カレンダーに即予約登録
- 連絡先に「病院」「ケアマネ」などのメモ
…などの活用方法が考えられます。
お使いの機種によっては更なる活用法もあるかもしれません。
まずは、無料で使える範囲を徹底的に使い切ることが大切です。

そしてここからが、電話対応効率化の“本命”です。
なぜなら、転送や自動応答などのオプションサービスは、人を増やすことなく「一次対応」を仕組み化する手段となり得るからです。
- 電話転送サービス
- 自動音声応答(ガイダンス)
- 番号選択(IVR)
固定電話番号や専用番号にかかってきた電話を、自動的に携帯へ転送します。
固定電話を用意している事業所であれば、このサービスを活用しない手はありません。
事務所にかかってきた電話を自身の携帯電話に転送され、予約を受け付ける機会損失を減少させます。
それだけでなく、固定電話は市外局番により所在地が明確になるため、携帯電話に比べて社会的信用度が高くなります。
このような固定番号を名刺やHPに載せられるため、はじめての利用者からの信頼感が高まるというメリットがあります。
また、営業時間外の転送の有無や転送までのコール数なども設定できます。
ただし転送料金がかかる場合があることや、運転中に電話に出られないという問題が解決しないことは、覚えておきましょう。
電話に出られない場合でも、あらかじめ録音した案内を流せます。
「ただいま運転中です」「留守電に内容をお残しください」と伝えるだけで、無言切断が減ります。
設定も比較的簡単で、高齢者の方にも分かりやすいサービスです。
また、低コストで導入可能なため、まだの方は導入を検討しましょう。
ちなみに音声案内には下記の例を参考にしてください。
「お電話ありがとうございます。介護タクシー〇〇です。
運転中・介助中のため電話に出られない場合があります。
留守番電話に、①お名前 ②ご利用日時 ③出発地と目的地 をお残しください。
折り返しご連絡いたします。」

また営業時間外のアナウンスも設定しましょう。
というのも、夜間や早朝の電話対応は、心身の負担が大きくなります。
営業時間外のため受付できない旨のアナウンスを設定しておくと、無理な深夜対応を減らせるうえ、自身の休息を守ることが出来ます。
「ただいまの時間は営業時間外です。
翌営業日に順次折り返しいたします。
お急ぎの場合は、留守番電話に内容をお残しください。」
「予約は1、料金確認は2」など、番号で用件を分ける仕組みです。
緊急度の高い電話を見極めやすくなりますが、高齢者向けには2〜3項目までに絞るのが現実的です。
例えば…
- 予約の方 → 1
- 料金・対応内容の確認 → 2
- 緊急性の高い当日依頼 → 3
…などに分けた場合、本当に急ぎの用件だけわかりますし、説明だけで済む電話を極力減らすことが可能です。
いかがでしたか?
一人で介護タクシーを開業・運営する場合、電話対応を“気合”で乗り切るのには限界があります。
そのためにも効率化する必要があり、決して事業者が楽をするためではありません。
電話対応の効率化は、心身に余裕を持ち、安全運転と丁寧な介助を保つための仕組み作りだと心得ましょう。
介護タクシーの予約受付にもデジタル化の波が来ていますが、未だに主流はアナログの電話予約です。
だからこそ工夫とツールで「対応できる形」に整え、負担を軽減しましょう。
この記事があなたの一助となれば幸いです。

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