「介護をするため、仕事を辞めるかどうか悩んでるんだけど…」
「仕事と介護を両立する方法ってないの?」
ある日突然、親や配偶者に介護が必要になってしまったら…
その時、介護に何の準備もしていなかったら…
介護への不安や負担が増大し、仕事との両立が困難となってしまうでしょう。
そして、介護が原因で会社を辞めてしまう「介護離職」が増えています。
介護離職は、介護者の負担を減らす意味で目先の対応として有効な面もあります。
しかし、後々大きなデメリットを生む可能性も大いにあるのです。
今回は「どうして介護離職を選択してしまうのか」その原因と「どうすれば仕事と介護の両立ができるのか」その対策について紹介していきたいと思います。
この記事は「将来の介護について不安がある方」や「実際に介護離職を検討している人」、「介護による離職を回避したい人」などに読んでいただけると幸いです。
家族が要介護者状態となり介護に専念するため、介護者が本業である仕事を辞めてしまうことを「介護離職」言います。
介護の頻度が高まると、日常生活のほとんどに介助が必要になってきます。
しかし、介護者が仕事をしていると、就業している日中の時間帯は介護が出来ません。
さらに仕事で疲れ切っているところに、家庭で介護が待っているのは、精神的にも、肉体的にも大きな負担がかかります。
このようなことから、仕事を辞めてしまい介護離職してしまうケースも多いのです。
しかし、離職は収入が無くなり生活が困窮するため、おススメできるものではありません。
また、収入がなくなった介護者は生活保護を求める場合も多く、社会問題の一つにもなっています。
さらには、介護離職する層は40~50代と働き盛りの世代が多いのが特徴。
キャリアを積んだ中堅社員が抜けることは、育ててきた企業にとっても多大な損失を与えることになります。
それでなくとも高齢化社会が進む日本にとって、働き手となる現役世代の離職は社会全体にとっての損失であると言えます。
各個人にとっても、企業や社会にとっても、介護離職は回避すべき大きな問題の一つなのです。
2017年の離職者数は約735万人。
そのうち看護や介護を理由に離職している人(介護離職者)は、約9万人とおよそ2%程度です。
しかし、2007年の介護離職者は約5万人であり、この間の10年で2倍弱に増えたことになります。
ちなみに2019年には10万人を超える人が介護離職しています。
高齢化はこれからもさらに進むため、離職者数の増加することになるでしょう。
なお、離職者の男女比をみると約8割は女性であり、明らかな差が見受けれられます。
日本には約630万人の介護者がいます。
そのうちのおよそ6割に当たる約365万人が、仕事をしながら介護を行っています。
つまり、介護者の6割の方が仕事と介護を両立出来ていると言えますが、多くの介護者が多くの負担を感じているのが実情です。
いつ離職してもおかしくない離職予備軍と言い換えることも出来ます。
そのため、早急な対策が求められています。
- 仕事と介護の両立が難しい職場だったため
- 見通しが立たない介護に不安だったため
- 体力的に両立が厳しいため
- 自分以外に介護を担う人がいないため
- 自身が介護に時間を割きたかったため
このうち「仕事と介護の両立が難しい職場だった」という理由が、原因として多くを占めています。
つまり、勤務先の制度面や環境面がハードルとしてあり、国や企業による就労環境の改善が重要であると言えるでしょう。
また、企業によっては制度面が整えられていたとしても、従業員に周知され適切に運用されていなければ意味がありません。
企業側は、制度を広報し、正しい運用までしっかりと行うことが大切です。
個人が気を付けるべきは、まず「介護パニック期」を脱出することでしょう。
介護には「4つの時期」があると言われています。
それが「パニック期」「環境調整期」「生活期」「看取り期」の4つです。
それぞれの説明は下記のとおりです。
内容 | |
---|---|
1.パニック期 | 家族の病気やケガが発覚した時から 事実を受け入れるための心理的負担が大きい 今後の治療や介護方針相談をする時期 |
2.環境調整期 | パニック期からある程度状態が落ち着いた時 介護保険の申請をして、今後の暮らしの環境を整える時期 |
3.生活期 | 介護保険サービスを活用して、実際に生活する時期 |
4.看取り期 | 最後の過ごし方を決める時期 |
これらの時期は順序良く進むわけではありません。
なぜなら、要介護者が新たな病気を発症するなど、健康状態によりその都度治療や介護方法を変えていく必要があるからです。
つまり1~3番は繰り返しやってきます。
そして離職する時期については、いわゆる「介護パニック期」に多いと言われています。
特に介護の初期段階での「パニック期」は要注意です。
なぜなら介護サービスに対する知識のない介護者は、なんでも自分でやらなければならないと誤認してしまうケースがあります。
そして、その負担の多さから不安が増大し、離職を選択してしまうという流れです。
介護離職を防ぐために、まずはいかにして「パニック期」を脱出するか…
つまり要介護者の治療や介護方針について、いかに見通しをつけるかが重要になります。
住んでる自治体や勤める会社の支援制度を把握しておくと、見通しをつけるのにとても役立ちます。
ここまで介護離職について、個人はもちろん企業や社会に対しても問題となっていると記してきました。
ですが、少なからずメリットも存在します。
対比して見ていきましょう。
- 仕事負担の消失
- 介護に集中できる
- 介護費用の軽減
離職の最も大きいメリットは仕事の負担が無くなる事でしょう。
これにより、離職当初は精神的に随分気楽になることと思います。
仕事をしながら介護も行なっていると、時には仕事中に介護の連絡が入る事や、訪問サービスの手配をしなければならないこともあるでしょう。
外では仕事、家では介護…これでは心身ともに疲弊していくばかりで身が持たない。
そう思われている(思われていた)介護者も多いのではないでしょうか。
離職すれば、仕事の負担は無くなる上、その分のリソースを介護に充てることが出来ます。
特に、仕事の都合で遠方から通いで介護をしていた人は、介護に集中することが可能になるでしょう。
また、在宅介護を行っていた人は、今まで訪問サービスで補っていた介護を自身で行うことができるようになります。
その分、介護費用の軽減に繋がりますし、要介護者の希望を叶えやすくもなるでしょう。
- 収入の減少が激しい
- 社会との繋がりが薄れる
- 介護ストレスによる病気、放棄、殺人
- 再就職の難しさ
一方で、離職には大きなデメリットも存在します。
その最たるものが、収入の激しい減少です。離職により主な収入源が無くなるので、致し方ありません。
収入が無くなること自体がストレスにもなります。
当初は貯蓄の切り崩しや親の年金で遣り繰りが可能でしょう。
しかし、将来的に困窮する可能性は少なくありません。
生活に困り、結局再就職を志す人も多くいます。
ですが、一度仕事を辞めてしまうとキャリアが途絶えてしまうため、再就職が想像以上に難しくなります。
就職できたとしても、離職前の待遇はほとんど望めません。
このことは離職前に覚悟が必要です。
また、離職して介護に専念するという事は、介護以外に対して疎遠になっていく事を意味しています。
社会とのつながりが薄れる焦燥感。
さらには介護に専念するあまり、要介護者との距離が近づき過ぎ、そのことがストレスになる場合もあります。
そのため介護に疲れて自身が病気になったり、介護を放棄してしまう事例も…
果ては、要介護者を殺してしまうケースさえもあります。
自身の時間を確保するなど、介護疲れのケアをしっかりと行うことも忘れないようにしましょう。
介護離職を経験した人の実に8割が後悔すると言われています。
そうならないためにも、個人で出来る予防策を覚えておきましょう。
まずは介護が実際にはじまる前に、介護知識を蓄えておく必要があります。
なぜなら、前述した介護離職率の高い「パニック期」を乗り切るためです。
事前にどのような介護サービスが存在し、どのくらいの費用がかかるのかがわかっていれば、今後の計画が建てやすくなります。
そうすれば不要な離職をせずとも、介護が可能なことに気付くことが出来ます。
一口に介護知識といっても色々ありますが、まずはどのような介護サービスがあるかを知ることから始めましょう。
将来困りそうな部分を補えるサービスがあることが判れば、それだけで気が楽になるのではないでしょうか。
また、費用に不安がある場合は、介護保険の制度について勉強しましょう。
保険が適用されると、介護サービスを原則1割の負担で受けることが出来ます。
また、行政や会社による支援制度に、どのようなものがあるのかを把握しておくのも良いでしょう。
有効に活用してこその制度です!
知識を蓄える間もなく介護が始まってしまった場合は、とにかく「介護のプロ」に相談しましょう。
会社の福祉厚生担当、病院のソーシャルワーカー、施設の介護福祉士やケアマネージャー、行政の福祉課、地域包括支援センターなどが考えられます。
とにかくまずは一人で悩まず、介護関係に繋がりのあるどなたかに相談してみてください。
相談に乗れる人ならそのままアドバイスがあるでしょうし、自分の領分とズレているならふさわしい方を紹介してくれるはずです。
それでも相談相手に迷ったら、まずは自治体の福祉課や地域包括センターに相談してみましょう。
特に地域包括センターは、そのために作られた専門の行政機関です。
利用しない手はありません。
現在、在宅介護を行っている人で、介護離職を検討している方もいらっしゃると思います。
そのような方は離職前に、要介護者を介護施設へ入居させることも検討するべきです。
寝たきりや要介護度の高い高齢者には特養老人ホーム、認知症の方向けのグループホーム、幅広い症状の方を受け入れている介護付き有料老人ホームなど、様々な施設があります。
これらの介護施設に入居できれば、介護者の負担を大幅に減らすことが出来ます。
確かに介護施設への入居は費用も多くかかりますが、入居するための資金は本業で稼ぐことが出来ます。
ところが、離職してしまうと本業が無くなってしまうため、資金を稼ぐことが出来ません。
さらには介護が終了し再度就職となった時に、希望通りの再就職ができるとも限りません。
介護が終了してからも、自分の人生は続くのです。
期間に見通しが立たないとはいえ、一時の事情で離職することは、その後の人生にとってリスクだと言えるでしょう。
前述の通り、国も介護離職を問題視しています。
そこで介護と仕事を両立する労働者の為に、「育児・介護休業法」を制定しました。
これにより、様々な支援制度を設けていますので、主な制度を紹介しましょう。
- 介護休業制度
- 介護休暇
- 勤務時間の制限
- 介護休業給付の支援
これらの制度を活用することで、介護離職を防げる可能性は大いにあります。
2週間以上にわたって介護を必要とする家族がいる際に、休暇を取得できる制度です。
対象となる家族1人に付き3回まで、通算93日分休暇をとることが出来ます。
ただし、同じ事業所に1年以上雇用されていることや、事業主を通して申請しなければならないことなど、条件があるため取得には注意が必要です。
なお、申し出を受けた事業主は、介護休業の開始日や終了予定などを厚生労働省に通知しなければなりません。
そのため、早い段階から知らせておくとよいでしょう。
家族の介護のために休暇を取れる制度です。
2週間以上にわたって…と制限が付いていた介護休業制度よりも、単発で利用できるのが特徴です。
対象家族が1人に付き年5日までの取得が可能です。
また半日での取得も可能で、その場合は10回まで利用できます。
例えば、ケアマネージャーとの面談や福祉用具のレンタルのための打ち合わせなど、半日で十分な時に利用しましょう。
取得には当日の申請も可能で、有給休暇のようなイメージで利用することが出来ます。
仕事の負担を減らし、介護と両立できるよう勤務時間を制限する制度もあります。
労働者が請求した場合、1回の請求につき所定外労働と時間外労働で1カ月以上1年以内の期間、残業を制限できます。また深夜業の場合は、残業の制限期間が1カ月以上6カ月以内の期間になります。
ただし、入社1年未満の場合や1週間の労働が所定労働日数に達していない場合などは、事業者が請求を拒むことが出来る場合もあります。
そのため、担当部署に事前に要件を確認してから請求しましょう。
介護休業給付とは、介護休業制度を利用した雇用保険の被保険者が、給付金を受け取ることが出来る制度です。
つまり、経済的に支援して介護離職を防ぐのが目的です。
下記の条件を満たせば、正社員以外でも利用することが出来ます。
担当部署に確認してみましょう。
- 雇用保険の被保険者であること
- 介護休業を取得した前2年間のうち、12カ月以上雇用保険に加入していること
- 家族の常時介護が2週間以上必要な状態であること
- 職場復帰を前提とした介護休業であること
以上を満たせば、休業前の給与の67%が、最長93日を限度に3回まで支給されます。
なお、申請は会社を通してハローワークで行う必要があります。
また申請には、介護休業終了の翌日から2カ月後の月末までと、期限が設けられています。
重要なのが、この給付金は「介護休業が終了してから支払われる」ということです。
そのため、収入が無くなる介護生活中の経済的計画は、しっかりと立てておく必要があります。
労働人口の減少により、企業も介護離職により従業員を失うデメリットは無視できません。
ここでは、一般企業で行っている防止策を紹介していきます。
自社と比較、参考にしてみましょう。
- 介護制度の周知
- メンタルヘルスケア
- 相談窓口の設置
- 勤務形態などの見直し
支援制度を設けていても、労働者に知られていなければ、活用されず意味がありません。
実際に介護休暇、短時間勤務などの制度を知らないまま、両立に苦しんでいる多くの労働者がいます。
そのため企業内においても積極的に周知・声掛けし、制度の活用を求める必要があります。
制度を活用により両立が上手くいけば、介護離職を減らし人材の喪失を防ぐことが出来ます。
さらに制度の活用に躊躇や後ろめたさが無くなれば、離職を検討する割合も減少するでしょう。
また相談できる手段を整えておくのも有効です。
例えば…
- 定期的なヒアリングの実施
- メンタルヘルスカウンセラーの定期訪問
- 24時間対応のフリーダイヤル相談サービス
- 介護相談窓口の設置
介護のことを気軽に相談できる環境は、精神的な疲弊を軽減することができるでしょう。
またこれらの機会は、社員の要望を汲み上げるための情報収取にも役立ちます。
要望に沿った勤務形態に見直すことが出来れば、離職率は一段と減少するでしょう。
短時間勤務やフレックス勤務、リモートワーク、時差出勤など、適した措置を設けることが出来ます。
複数の制度を設け、個々の労働者にあった柔軟に働ける企業であることが望まれます。
今回は介護離職について、その原因と対策を紹介しました。
個人でできる対策として
- 介護知識についての勉強
- プロに相談
- 介護施設への入居
の3つをあげました。
また補足として、職場にも自分の情報を伝えておくことをおススメします。
家族に介護が必要なこと、自分がどのような状況に置かれているかを話しておくことが大切です。
そうしておけば、周囲からも声掛けがしやすいですし、役立つ介護支援制度を教えてもらえるかもしれません。
なにより、周囲の理解も得られ、休暇取得などの制度利用もしやすくなります。
つまるところ、介護サービスや支援制度を利用し、介護負担を下げることが離職対策として重要だと言えます。
そのためにも、介護知識の勉強は必要ですし、わからない時はプロに相談し、一人で抱え込まないように気をつけましょう!
いかがでしたか?
この記事があなたの一助になれば幸いです。
最後になりましたが、介護タクシービスタは介護・医療支援を担う企業として日々活動しています。
移動でお困りの際は是非お声がけください。そのお悩みビスタが解決します。
あなたの介護負担を下げることをお約束いたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。