「救急外来」という言葉を聞くと、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?
そもそも「救急」という響きから、「重症の患者さんが運ばれてきて治療するところ」と考える人もいれば、「夜間や休日になど、病院が閉まっている時でも診察してくれるところ」と考えている方もおられます。
どちらも間違いではありません。
しかし、それらのイメージは正確でもありません。
そのような正確でないイメージのためか「期待する医療が受けられなかった。」といって、怒って帰る人もいるのです。
そこで今回は、救急外来とはなんなのか?
利用される皆さんに、医療従事者視点から事前に知っておいて欲しいことをまとめてみました。
この記事は…
- 夜間休日に体調を崩したことがある人
- 救急外来を過去に受診したことがある人
- 救急外来を利用するかもしれない全ての人
つまり、全ての方にお読みいただきたい内容です。
救急外来とは、夜間帯や休日など通常は病院やクリニックなどが閉まっている時間帯に、緊急度の高い病気やケガに対して治療を行うところです。
そのため、救急外来は365日24時間…年中無休で患者を受け入れています。
逆に言えば、救急外来は緊急の外来患者を受け付けるだけの準備しか整えていないのです。
そのため、緊急性のない方が救急外来を利用すると、重症の方に医療の手が回らなくなります。
さらに、救急外来受診には一般外来と様々な違いやデメリットがあります。
利用前に注意点として知っておきましょう。
まず、初めに知っておいてほしいのは「多くの病院には専属の救急医は少ない」という事実です。
多くの医療ドラマや映画の中では、多くの救急の専門医がいて、診療を行っています。
しかし、そのような病院はごく一部だけです。
では、通常の救急医療はどのようなシステムとなっているのでしょうか。
現在、日本で一般的な救急医療は「各科相乗り型」と呼ばれるシステムになっており、各科の医師が持ち回りで診察を行っています。
つまり、夜間や休日の救急外来にいるのはいつも別の医師がいることになります。
しかもローテーション表に従って勤務していますので、救急外来には希望する科の専門医がいない可能性もあります。
それどころか希望する専門医がいる方が稀と言っても良いでしょう。
また、救急外来は多くの病院で「研修医の教育現場」となっています。
夜間休日の救急外来は、ベテラン医師と研修医数名が当直しており、ベテラン医師の監督下で研修医が診療することが普通です。
救急外来は緊急性を判断し、軽症者には応急処置のみ行い一般外来へ引き継ぐのが目的。
ですので、研修医にとっては全身を診察し、正確な診断を行う能力を磨く良い実戦経験の場所なのです。
もちろん、診断が難しい症例はベテラン医師自身が行います。
不必要に診断結果を心配する必要はありません。
ですが、救急外来を受診する方は、「専門医がいない場合が多い」「研修医の診察が多い」などと言った事情があることを分かっておきましょう。
救急外来は、なぜか「待たずに診てもらえる」と誤解している方もいらっしゃいます。
もしかしたら「救急」という名前のせいかもしれません。
しかし、実際には待ち時間は一般外来と同程度か、それ以上の所がほとんどです。
というのも、夜間休日は開いている医療機関が少なく、どうしても救急外来に患者が集中するから。
本来なら個人医院で十分な方も、「かかりつけが開いていない」という理由で来院されます。
特にゴールデンウイークや年末年始などの連休中は、酷く混みあいます。
2~3時間待ちというのも普通です。
さらに、救急車などで重症患者が搬送されると、当然ながら緊急性の高い方が優先されます。
そのため、待ち時間はさらに著しく増えることになります。
また、救急外来は特性上、緊急度によって優先順位がつけられ、後から来た人が先に診察されることもままあります。
症状の軽い人ほど、後にまわされることを覚えておきましょう。
病院の方針にもよりますが、救急外来では診断書を書かないことが普通です。
というのも、専門医が診察しないケースが多く「診断書を出さない」と規則で決められているところもあります。
例えば、交通事故などで救急外来に搬送され、後日診断書の為に来院される方もいます。
救急外来の待合室で長時間待った挙句、医師から診断書は出せないと言われて、怒り出す方もいたりするのです。
このような場合、事前に電話で問い合わせしておけば、良いでしょう。
通常は同じ病院の専門科を外来受診すれば、スムーズに診断書を書いてもらえます。
また、救急外来で処方される薬は多くて2、3日分だけです。
なぜなら、「救急外来は一般外来のつなぎ」だからです。
つまり、救急外来が応急処置のため出した薬が無くならないうちに、一般外来を受診することが前提となっています。
たまに、高血圧や糖尿病など定期的に処方されている薬がなくなって、救急外来を受診する方もいます。
その場合でも、救急外来では長期にわたる処方は行いません。
数日分だけ処方し、その間に一般外来を受診してもらいます。
長期の処方を担当医以外が行うのは、患者さんにとってもリスクが高いと言わざるを得ません。
さらに担当医以外では、病状の多少の変化程度に気づけない可能性もあります。
定期受診は、担当医に診てもらうよう心がけましょう。
通常、救急外来の受診料は、一般外来で同じ治療を受けた場合よりも高くなります。
というのも、夜間休日の診療には別料金がかかっているからです。
例えば、時間外加算や休日加算、深夜加算といった計算式で、医療費が上乗せされます。
結論的に言えば、一般外来を受診できる時は、救急外来を受診する必要はありません。
ただ、お金が高くつくだけです。
前項にすこしだけ先述しましたが、救急外来のその目的は下記の2つあります。
- 専門科の医師へ引き継ぐための応急処置
- 緊急性を含めた専門科医師の診察の要否の判断
つまり当直の医師は、救急外来を受診した患者を診察・検査して重症度を判断。
軽症ならば、応急処置のみ行い、平日に専門の一般外来を受診するよう勧めます。
患者が重症もしくは緊急度が高ければ、その場で専門医を招集し治療を依頼します。
ならば、最初から「全ての専門医をそろえておけばいい」と思う人もいるかもしれません。
ですが、医療従事者のマンパワー不足と医療費のコスト問題から、そのような体勢を整えることは出来ません。
そもそも救急車で搬送されてくる患者さんですら、本当に緊急性のある人は少ないのが現状です。
そのような現状で、仕事のない医師を常駐させると無駄な人件費しかかかりません。
その人件費は医療費という税金で賄われ、将来的に増税という形で国民全体に負担を強いることになります。
その上、患者さん自身は自己負担割合も増やされ、二重の負担増となってくるでしょう。
さらに地方の総合病院では診療科が減ったり、病院自体が閉鎖になる地域もあります。
そんな中、医療従事者のマンパワーを確保できるわけもないのです。
あくまで、「軽症の方にとって、救急外来は一般外来へのつなぎでしかない」という事を忘れないでください。
救急外来は、「重症もしくは緊急性の高い患者の早期治療」が本来の目的なのです。
夜間休日に具合が悪くなってしまう方の中には…
「救急車を呼ぶほど緊急性は高くないが、応急処置をしてほしい。」
「救急外来を受診したいが、症状が微妙で迷った場合はどうすればいいの?」
と思う人もいるはず。
そのような時は、かかりつけ医に相談するか、医療相談サービスへ電話しましょう。
例えば「#7119」へ電話をかけると、「救急安心センター」へ繋がり、救急外来の受診判断や救急車の要請判断の相談に乗ってくれます。
「救急安心センター」が設置されていない都道府県では、各自治体で同様の相談窓口がありますので検索してみましょう。
詳しくはコチラの記事をご覧ください。
夜間や休日にも診察してくれる救急外来。
そのため「コンビニ受診」と呼ばれる受診形態が問題になっています。
コンビニ受診とは緊急性のない人が「日中は仕事があるから」とか「夜間の方が空いているから」などといった、自分の都合で救急外来を受診することを言います。
前述の通り、救急外来は軽症者に対してはつなぎの応急処置しか行いません。
にもかかわらず、コンビニ受診をする患者さんの中には、専門医の診療や検査などを要求してくる方もいて、対応に苦慮するケースも多いのです。
このようなケースは医師をはじめとして、医療従事者全員に苦痛を強いる行為です。
疲労や寝不足により、翌日の診療に支障をきたします。
さらには、本来の優先されるべき重症患者への対応が遅れてしまいます。
本当に必要な人が必要な時に医療を受けられるよう、コンビニ受診は控えましょう。
日中に具合が悪くなったら、一般外来を診療時間内に受診するよう心がけましょう。
というのも、救急外来を受診するより多くのメリットがあるからです。
- 専門科の医師に診察・検査してもらえる
- 救急外来に比べて待ち時間が少ない
- 診断書を出してもらえる
- 長期間の薬を処方してもらえる
- 救急外来より診療費が安い
このように救急外来のデメリットは、一般外来のメリットであると言えます。
とはいえ、コンビニ受診は止めなければなりませんが、救急外来を受診するなというわけではありません。
緊急性の高い方は救急外来へ、それ以外の方は一般外来へ…
つまり、救急外来と一般外来の適切な使い分けをすることが、病院受診において大切なのです。
いかがでしたか?
今回は救急外来を受診する前に、覚えておいてもらいたい注意点を解説しました。
この記事があなたの一助となれば幸いです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。