任意後見制度は、認知症などにより判断能力が低下した方の生活を支えるのに、有効な制度です。
日本の平均寿命が延び、高齢化社会が進むにしたがって、認知症を患う人の割合も増えてきました。
来年の2025年には高齢者の5人に1人、日本人の17人に1人は認知症になるとも言われています。
そのような社会に暮らしている我々は、何かしらの対策を講じておく必要があります。
個人が出来る対策の一つとして有効なのが「任意後見制度」です。
この任意後見制度は、財産管理や身上監護を行い判断能力が低下した方の生活を支えます。
内容については何となく知っている、興味があったという方もいらっしゃるでしょう。
しかし、制度を利用するための契約方法や費用について知られている方は少ないと思います。
そこで今回は、任意後見契約の手続きの流れや費用について解説していきます。
この記事は…
- シニア世帯の夫婦や一人暮らしの高齢者
- 将来、認知症になった後の生活が不安な方
- 離れて暮らす高齢の親がいる方
- 任意後見制度を含む生前契約について興味のある方
…などにお読みいただけると幸いです。
繰り返しますが、任意後見制度とは判断能力が低下した時に、自身の代わりにしてもらいたいことをあらかじめ決めておく制度です。
おもに財産管理や身上監護といった、金銭や生活・医療介護に必要な契約に関わる各種の手続きを代行します。
詳しい内容やそのメリット、デメリットについては、前回の記事で紹介しております。
是非、ご確認ください。
また、「任意後見制度」は、生前契約の一つに含まれます。
生前契約とは、おもに「生前事務委任契約」「任意後見契約」「死後事務委任契約」の三つに分類されます。
まずは、本人が元気なうちから見守りや各種手続きのサポート行う「生前事務委任契約」。
次に、判断能力が低下してから財産管理や身上監護を行う「任意後見契約」。
最後に、本人が亡くなった後に、葬儀や火葬、財産整理を行う「死後事務委任契約」。
これらにより、継続した絶え間ないサポートを受けられることになります。
任意後見契約に興味を持った際は、合わせて他の生前契約についても検討しましょう。
ここからは、実際に契約する流れとかかる費用について見ていきましょう。
- 任意後見受任者を決める
- 契約内容を決める
- 契約を「公正証書」で締結
- 判断能力低下後、「任意後見監督人」選任の申し立て
- 家庭裁判所で審判の確定後、「任意後見人」となり支援開始
「任意後見受任者」とは、制度の開始後に任意後見人なる人のこと。
まずは後見人になる人を決めます。
任意後見人になるには、特定の資格などは必要ありません。
家族や友人、弁護士や司法書士、法人などと契約を結ぶことが可能です。
ただし、未成年者など、下記に該当する人は後見人になることは出来ません。
- 未成年者
- 破産者
- 行方不明者
- 家庭裁判所から法定代理人などを解任されたことがある人
- 本人に対して訴訟を起こした人、またその配偶者や直系血族
- 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある人
次に自身の判断能力が失われた後、後見人にしてもらいたい事を決めていきます。
後見人の業務はあくまで財産管理や身上監護の事務処理です。
ですが、契約内容は、判断能力が無くなった後にしたいライフプランを考えると良いでしょう。
例えば「介護が必要になった時には○○施設へ入居したい」「かかりつけは△〇病院がいい」など、具体的な名称を出しても構いません。
具体的な希望と金額を記載したライフプランを作成しておくことをお勧めします。
後見人はそのための事務手続きをして、生活をサポートするでしょう。
委任することが出来る内容は、財産管理や医療介護サービス締結といった事務と法律行為。それらに関する登記などの申請になります。
以上の範囲で、当事者同士の話し合いにより、自由に決めていくことが出来ます。
任意後見受任者と契約内容が決まったら、次は公正証書の作成に入ります。
本人と受任者が最寄りの公証役場に出向き、公正証書を作成します。
なお、公正証書によって締結されていない契約は、無効となります。
また、本人が直接公証役場に行けない場合は、公証人に出張してもらうことも出来ます。
作成には財産目録などの書類が必要なほか、手数料などに2万円程度かかります。
なお、本人に判断能力があるうちは、ひとまずここまで。
しかし、次項の「任意後見監督人」選任の申し立てに伴う、裁判所の求める書類の準備は大変な作業となります。
本人が元気なうちに進めておきましょう。
そして、契約を締結後、残念ながら本人の判断能力が低下した時、次のステップへ進みます。
次は家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立てします。
申し立てを行えるのは、本人、受任者、配偶者、四親等以内の親族となります。
なお、本人以外の申し立てには同意書も必要です。
また申し立てには、費用の他に裁判所が求める書類を準備する必要があります。
この準備が任意後見制度のなかで最も大変な作業と言われています。
繰り返しになりますが、本人が元気なうちから、本人や親族、任意後見受任者も一丸となって準備しておきましょう。
なお、申し立てに必要な書類は以下のサイトをご覧ください。
申し立て後、裁判所の調査や照会を経て、家庭裁判所は総合的に審理します。
その結果、任意後見契約の効力を生じさせる判断をされれば、任意後見監督人に選任する旨の審判書が送付されます。
そして、審判書の受理をもって任意後見契約の効力が生じることとなります。
受任者は「任意後見人」となり、本人の代わりに契約に基づいた支援を開始します。
まずは任意後見人の報酬額の相場です。
任意後見人には家族や親族が成る場合も多く、無報酬ということもあります。
しかし、弁護士や司法書士などの第三者には報酬を支払うのが一般的。
報酬は管理する財産が多ければ多いほど大変になるため、管理財産額で決めるケースが多いです。
管理財産額 | 報酬の目安(月額) |
1000万円以下 | 約2万円 |
1000~5000万円 | 3~4万円 |
5000万円超 | 5~6万円 |
なお、身上監護などに特別困難な事情がある場合や、訴訟などがあった場合は、追加報酬が発生します。
また、公正証書作成にかかる費用や前述した任意後見監督人への報酬も必要です。
おもだった費用は以下の通りです。
公正証書作成費用 | 約2万円 |
任意後見監督人申し立て費用 | 5千円~1万円 |
任意後見監督人への報酬 | 月額5千円~3万円 |
上記の他、契約する法人や事務所によって別項目の費用がかかる場合が多くあります。
契約前に必ず確認しましょう。
開始時期によって、任意後見制度は契約が以下の3つの種類に分別されます。
- 即効型
- 将来型
- 移行型
即効型は契約締結後、すぐに家庭裁判所へ申し立てして、少しでも早い時期に任意後見制度をはじめるものです。
軽度の認知症などを患っているが、本人が判断能力を有している場合に行われます。
今後の判断能力の衰えが心配などといった事情により、開始時期を急いでいるケースがほとんどです。
ただし、スピードを優先するあまり、契約内容を熟考する期間が短く後にトラブルに発展するケースもあります。
回避するためには、制度や契約内容を正しく理解する必要があります。
そのためにも契約内容を決める際は、家族などと相談しながら行うと良いでしょう。
将来型は本人に判断能力がある時に契約を締結し、その後判断能力が不十分になった後に家庭裁判所に申し立てを行うものです。
この将来型は、契約の締結から任意後見が開始されるまで、年単位の時間が経過していることも多くあります。
場合によっては、任意後見制度が始まる前に、本人が無くなるケースもあるのです。
また本人が一人暮らしだったりすると、判断能力が低下していることに誰も気づかないケースや、長い時間の経過で受任者が契約のことを忘れてしまう、といったケースも起きています。
このようなことが無いよう、任意後見が開始されるまでに「見守り契約」を別途契約すると良いでしょう。
これにより本人と受任者が定期的に顔を合わせ、状況の確認と継続的な支援が出来る環境を用意しましょう。
移行型は任意後見契約で最も多く用いられています。
委任後見契約と同時に他の契約も行い、サポートの空白期間を作らないようにします。
よく締結されるのが以下の三つです。
見守り契約 | 本人の健康状態を把握するため、定期的に訪問し見守りを行う |
任意代理契約 | 財産管理や身上監護に関する委任契約 |
死後事務委任契約 | 本人の死亡後の葬儀や埋葬に関する委任契約 |
これらを契約することにより、本人に判断能力があるうちは見守り契約や任意代理契約でサポートすることが出来ます。
判断能力が不十分になった後は委任後見契約による支援を行い、亡くなった後でも本人が望んだ死後の事務処理を行います。
つまり、本人の状態に関わらず継続して支援を行えるため、多くのメリットがあります。
だたし、本人の判断能力が低下した後でも、受任者が家庭裁判所に任意後見監督者選任の申し立てを行わず、不正を行う恐れもあるので注意が必要です。
この場合の対策としては、受任者を監督する者をおく契約を盛り込んだり、受任者を複数名にしたりすると良いでしょう。
ここまでは契約や手続きについて説明しましたが、契約の終了の条件にも留意しておきましょう。
契約は以下の3つのパターンで終了となります。
- 契約が解除されたとき
- 任意後見人が解任されたとき
- 本人もしくは任意後見人が死亡したとき
任意後見契約の解除には可能ですが、任意後見監督人が選任される前か後かで手続きが違ってきます。
監督人の選任前であれば、本人もしくは受任者は公証人の認証を受けた書面により、いつでも契約を解除することができます。
しかし、監督人が選任された後は、契約の解除には家庭裁判所の許可が必要になります。
また、後見人の解任に対しても裁判所の許可が必要で、正当な事由がある場合に限られています。
例えば「後見人が職場や家庭の事情で遠方に引っ越しして、任意後見人の業務に支障がある場合」だったり、「後見人が本人もしくはその親族との間に不和が出て、業務を続けるのが困難になった場合」などです。
他にも、高齢や病気など身体的なものも正当な理由に当たります。
弊社ビスタサポートでは、NPOりすシステム様の「生前契約」をお勧めしています。
生前契約とは、当記事で紹介している「任意後見制度」を含めた、「生前事務委任契約」と「死後事務委任契約」の三つのサポートから成り立つ契約です。
全てにご加入いただくことで、契約者本人が元気なうちからサポートを開始し、判断能力が低下した状態はもちろん、亡くなった後の事後処理まで継続的なサポートが可能です。
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また、人が亡くなると必ず必要な葬儀や火葬などの「基本型死後事務」に、必要に応じて選ぶことができる「自由選択死後事務」を追加した、死後サポートも行っています。
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また第三者機関によって、契約内容の確認や預託金の管理も行われているため不正を防止し、利用者様にも高評価をいただいております。
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元気で判断能力があるうちに、判断能力が低下した時に備えておくのが任意後見制度です。
この制度は「最後まで自己責任ある大人でいるための老いの支度」ともいえるでしょう。
たとえ老いても「子供に迷惑をかけない、守ってあげたい」という親心の表れでもあるのです。
任意後見人はその思いをしっかりと受け止め、本人の意思を尊重し、生活や身体状態に配慮する義務があります。
そのため任意後見人には、信頼でき最善を考えてくれる人や実績のある法人・事業所を選ぶようにしましょう。
そして、残りの人生をどう生きていきたいのか、あなたの意思をしっかりと伝えましょう。
いかがでしたか?
この記事があなたの一助となれば幸いです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。