介護施設に色々な種類があるというのは、よく知られていることだと思いますが、その特徴やサービス内容まで知っている方は少ないでしょう。
そんな中「明日にでも介護を在宅にするか、施設にするか決めてくれ!」と迫られたら困りますよね。
でも、そのような話が実際にあるのです。
例えば、高齢の親御さんの手術が終わった一週間後。
入院先の病室で、術後の経過が落ち着いて一息つきたい時に、この話は切り出されます。
「容態が落ち着いたのなら、退院の日取りはいつにしますか?」と。
親御さんの状態にもよりますが、結局「介護をどうするか?早く決めてね。」という話と同義なのです。
親に介護が必要になるタイミングはわかりません。
いざ必要になった時、介護の方針を決めようにも、その知識がなければ決めようもありません。
今回はその介護知識の一環として、介護施設の種類と特徴について取り上げたいと思います。
選択を迫られたその時、困らないためにも事前に予習しておくことをお勧めします。
介護施設というと、老人ホーム、高齢者施設、高齢者福祉施設などとも呼ばれたりします。
しかし、どれも高齢者が入所する一般的な呼称のことで、正式名称は「老人福祉施設」であり、老人福祉法の第五条の3にうたわれています。
さらには老人福祉施設とは、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センターの7つであるとも明記されています。
しかし、高齢化社会が進む日本において、新たなる施設も色々誕生し、上記以外の名称も一般的に良く使われています。
よって、法律通り覚えるよりも、保険が適用となる「公的施設」か「民間施設」かで分け、さらに「要介護者向け」の施設か、「自立した人向け」の施設かで分類すると解りやすくなります。
公的施設・要介護者向け
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
民間施設・要介護者向け
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- グループホーム
公的施設・自立者向け
- 軽費老人ホーム
- ケアハウス
民間施設・自立者向け
- 健康型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者住宅
4分類で表にすると以上のようになります。
では、どのような違いがあるのか、その特徴やサービスを見ていきましょう。
公的な介護施設は「介護保険施設」とも呼ばれ、国や地方自治体などの公的機関が運営を行う施設です。
そのため、社会福祉の観点から介護度の高い人や低所得者層を優先して支援しています。
メリットは、民間施設より費用が安い事。
デメリットは費用の安さゆえに人気が高く、入居しづらい点が挙げられます。入居希望から待期期間が長くなることも珍しくありません。
要介護者向けとしては下記の3施設です。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
対象者 | 要介護度3以上(原則) |
費用 | 初期0円、月額5~22万円 |
提供サービス | 身体介護、生活支援 |
特徴 | 介護が必要な方の生活施設 長期利用前提、看取りあり |
特別養護老人ホームは通称「特養」とも呼ばれ、基本的に要介護度3以上の人が入居対象となります。
具体的には、寝たきりや認知症などを患っている人が対象です。
そのため長期利用が前提で、入居できれば終身まで利用が可能となっています。
しかし、介護保険の適用により費用も安いため人気が高く、出入りも少ないため入居待ちが多いのが現状です。
身体介護や生活支援などのサービスが受けられ、近年では定数を少なくしてより手厚い介護を行う「ユニット型特養」も出てきています。
対象者 | 要介護度1以上 |
費用 | 初期0円、月額8~20万円 |
提供サービス | 身体介護、生活支援 医療ケア、機能訓練 |
特徴 | 在宅復帰が目的でリハビリ重視 3~6か月の短期利用 |
介護老人保健施設は通称「老健」とも呼ばれ、要介護状態の人であれば利用できます。
「老健」の施設目的は、病院を退院した後すぐに在宅生活するのが困難な高齢者を、在宅復帰できるよう支援することです。
そのため、理学療法士や作業療法士が常務しており、質の高いリハビリが受けられます。
在宅復帰が前提のため、「老健」の入居期間は3~6ヶ月が目安の短期利用となっています。
対象者 | 要介護度1以上 |
費用 | 初期0円、月額10~20万円 |
提供サービス | 身体介護、生活支援 医療的介護、リハビリ、機能訓練 |
特徴 | 医学的ケアが充実 長期入居可能、看取りあり |
「介護療養型施設」や「介護医療院」などとも呼ばれ、2018年に新設された介護施設です。
要介護状態の方を対象として、在宅での生活が困難な場合に利用できます。
つまり医学的管理が必要な人が入居するため、医師の配置が義務付けられているのが特徴。さらには、看護師や理学療法士などの常駐もあり、看護ケアやリハビリも充実。
つまり、健康回復のためのあらゆるサポートが受けられます。
また、長期入居も可能で、看取りやターミナルケアも行われています。
ただし大部屋であることが多く、プライバシー確保の難しさがデメリットと言えます。
また、公的な介護施設で自立者向けのものは2つの施設があります。
- 軽費老人ホーム
- ケアハウス
対象者 | 自立者・要支援1、2 |
費用 | 初期0~数十万円、月額6~30万円 |
提供サービス | 生活支援、生活相談 |
特徴 | 在宅での単身生活に不安のある人向け 個室住居の低額料金施設 |
軽費老人ホームはA型、B型、C型と区分けされており、C型はケアハウスとも呼ばれます。(ケアハウスにはまた違った特徴があるため、項目を分けて説明します。)
この施設は自宅での単身生活に不安があったり、家族からの支援が受けられない高齢者を対象としています。
利用には「夫婦どちらかが60歳以上で、身の回りの世話は自分で出来ること」が必要です。さらに「月収34万円以下」であることも条件です。
「軽費」という名前の通り、他の老人ホームに比べ費用が安く済むのが特徴。
なお個室住居となりますが、A型は食事提供があり、B型は提供が無いため自炊する必要があります。
対象者 | 一般型~自立、介護型~要介護1以上 |
費用 | 初期 数十万~数百万円、月額6~30万円 |
提供サービス | 生活支援、生活相談、身体介護(介護型のみ) |
特徴 | 入居に月収制限がない 生活支援の一般型と介護サービス付帯の介護型 |
ケアハウスは軽費老人ホームのひとつです。
そのため、単身生活に不安がある自立した高齢者を対象としており、低額料金で利用できる点は軽費老人ホームと同様です。
異なる点は、入居に月収の制限がない事と、一般型(自立型)と介護型に分かれていることです。
一般型の主なサービスは食事や洗濯、買い物などの生活支援です。
また、緊急時の対応も行ってくれますが、介護サービスは常設していません。
よって、介護が必要になった時には外部のサービスを利用する必要があります。
また要介護度3以上になってしまうと、別施設への転居を迫られることもあり注意が必要です。
介護型は生活支援に加え、トイレや入浴といった日常生活介助や通院への付き添いサービスなども含まれます。
要介護度1以上の方が入居でき、看取りまで行ってくれる施設もあります。
民間企業が経営している民間施設は公的施設よりも、サービスが充実しているのが特徴です。
家賃や食費を含めた月額の利用料は経営業者や施設ごとに大きく異なります。
そのため入居費を抑えた施設がある一方、反対に高級志向の施設などもあり、利用者のニーズに合わせたサービスが多く見られます。
主な要介護者向けの施設は3つ。自立者向けの施設は2つとなります。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- グループホーム
対象者 | 要介護度1以上(混合型は自立者可) |
費用 | 初期0~数百万円、月額15~30万円 |
提供サービス | 身体介護、生活支援、リハビリ、機能訓練 |
特徴 | 手厚い介護サポート、定額の介護サービス費 レクリエーション・設備の充実 |
要介護状態の65歳以上の方を対象とした施設です。
そのため専門の介護スタッフによる24時間の介護サービスが受けられます。
また、生活介助だけでなく、看護やリハビリなどサポートが必要によって受けられるので、サービス面で不足を感じることは少ないでしょう。
さらにはレクリエーションや設備が充実している施設も多いのが特徴です。
その分費用は高めですが、介護保険サービスが定額のため「月額費用がわかりやすい」などのメリットがあります。介護サポートがより多く必要な方向けの施設と言えます。
要介護者向けの施設ではありますが、実は自立した人も入居することができます。要介護者のみが入居できる介護専用型と、自立者も入居できる混合型の2種類があります。
対象者 | 自立~要介護度5 |
費用 | 初期0~数百万円、月額15~30万円 |
提供サービス | 生活援助、食事サービス |
特徴 | 介護は外部サービス 介護度が低い方に向いている レクリエーション豊富 |
住宅型有料老人ホームは自立者から要支援・要介護者まで幅広く入居することが可能です。
食事や清掃、買い物などの生活支援を受けることができますが、介護サービスが付帯していません。
よって、介護が必要な方は外部の介護サービスを利用することになるため、利用した分の費用がかかってきます。
そのため、介護度の低い方に向いている施設と言えます。
事実、比較的自立者が多く入居しており、レクリエーションも豊富です。
各施設により、入居条件が異なっていることが多いため、事前の確認が必要となります。
対象者 | 認知症を患っている方 |
費用 | 初期0~数十万円、月額10~20万円 |
提供サービス | 認知症ケア、身体介護、生活援助、 |
特徴 | 5~9人のユニットで生活 家事を分担して行う |
グループホームは認知症を持つ高齢者のための施設です。
認知症に対して知識・経験を持つ介護スタッフが、24時間の適切なサポートを行います。
入居者は5~9人でユニットと呼ばれるグループを作り、スタッフからのサポートを受けながら生活します。
これは環境の変化が苦手な認知症の方が、顔なじみの中で落ち着いて生活できるよう配慮されたシステムと言えるでしょう。
また、食事の準備や洗濯などの家事を役割を分担し、支え合いながら生活するのも大きな特徴です。
自分で出来ることは自分で行い、認知症の進行を緩やかにする狙いがあります。このような性質上、ある程度身の回りのことをできなければなりません。
そのため症状の悪化により、退去しなければならないケースもあります。
また自立者向けの施設は2つとなります。
- 健康型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者住宅
対象者 | 自立者 |
費用 | 初期0~数億円、月額10~40万円 |
提供サービス | 食事提供、生活支援 |
特徴 | 充実した共有スペース レクリエーションも満載 |
健康で介護の必要がない方を対象とした施設です。
サービスは食事提供、掃除、洗濯などの生活支援のほか、希望者にはイベントやサークル活動なども提供されます。
また、快適な生活が送れるよう、施設内にフィットネスやプール、温泉、カラオケルームなど様々な共有スペースが整備されているのが特徴です。
食事提供を受けながら、健康的にシニアライフを楽しみたい方のための施設と言えます。
しかし、自立した方のみの施設であるため、認知症を発症したり、要介護状態になってしまった時には退去しなければなりません。
対象者 | 自立~要介護度3まで |
費用 | 初期0~数十万円、月額10~30万円 |
提供サービス | 生活相談、安否確認 |
特徴 | バリアフリー構造マンション型住宅 自由度の高い生活 |
サービス付き高齢者住宅は略して「サ高住」とも呼ばれ、要介護度の低い方を対象としたマンション型の住宅です。
介護施設ではなく、あくまで住宅として扱われています。
また、高齢者が暮らしやすいようバリアフリー構造となっており、共同設備として食堂や談話室なども設けられているのが一般的です。さらには、生活相談や安否確認のためのスタッフも配備されています。
基本的に外出や外泊に制限がないため、自由度の高い生活が送れるのが特徴です。
また、このサ高住は「一般型」と「介護型」に分られます。
「一般型」は介護スタッフがいない場合が多く、介護が必要な場合は外部サービスを利用する必要があります。
それに対し「介護型」は担当の介護士が常駐している場合が多く、外部サービスを頼む必要がありません。
それぞれの介護施設の特徴を紹介しましたが、「要介護度」と「費用」も施設を選ぶ上で重要な要素です。
そこで、比較しやすいようおおよその目安を一覧にまとめました。
要介護度の目安 | 初期費用 | 月額費用 | |
---|---|---|---|
特別養護老人ホーム | 要介護度3以上(原則) | 0円 | 5~22万円 |
介護老人保健施設 | 要介護度1以上 | 0円 | 8~20万円 |
介護療養型医療施設 | 要介護度1以上 | 0円 | 10~20万円 |
軽費老人ホーム | 自立者・要支援1、2 | 0~数十万円 | 6~30万円 |
ケアハウス | 一般型…自立 介護型…要介護1以上 | 数十万~数百万円 | 6~30万円 |
介護付き有料老人ホーム | 介護専用型…要介護度1以上 混合型…自立者も可 | 0~数百万円 | 15~30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 自立~要介護度5 | 0~数百万円 | 15~30万円 |
グループホーム | 認知症を患っている方 | 0~数十万円 | 10~20万円 |
健康型有料老人ホーム | 自立者 | 0~数億円 | 10~40万円 |
サービス付き高齢者住宅 | 自立~要介護度3まで | 0~数十万円 | 10~30万円 |
ここで紹介した要介護度や費用はあくまで目安でしかありません。
なぜなら介護サービスが外部委託のため、別途料金がかかる施設も少なくないからです。
また公的施設が民間施設よりも安いことがわかります。
初期費用などは一目瞭然ですね。
民間施設では入居費に100万円以上の金額を提示されることも多いようです。入居を希望する場合は、前もって準備する必要があるでしょう。
介護施設を分類すると「公的施設」か「民間施設」かで分けられます。
さらに「要介護者向け」か「自立者向け」かという視点でみていくと、検討する初期段階にはちょうどいい目安となります。
それからそれぞれの特徴を捉え、「要介護度」や「費用」などの点から、自分のケースに当てはめていくと良いでしょう。
また、同じ種類の施設であっても、人材や設備の違いにより受け入れ条件も異なります。
実際に選ぶ際には個別の施設に問い合わせ、気になる点も解決しておきましょう。
まずは介護施設の種類と大まかな特徴を、知識として蓄えておき、将来焦らずにすむように準備しておきましょう。
私たち「介護タクシービスタ」は、地域の介護・医療支援を担う者として、皆様の介護や医療に関するお悩みを一つでも多く解決できればと思っています。
この記事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。