親の介護を始めてから、食事を介助するようになり不安なことはありませんか?
とりあえず見よう見まねで介助をしてはいるけれど、習ったわけでもないし、食事介助には事故もあるっていうし…
「もし自分の介助で窒息や誤嚥を招いてしまったら…」
不安は尽きませんよね。
そんな不安は要介護者にも伝わるもの。
そうすると、本来楽しい時間であるはずの食事を、要介護者は楽しむことが出来なくなってしまいます。
今回は安全で楽しい食事を守るため、食事介助の正しい手順や安全に食べてもらうための注意点について記していきたいと思います。
この記事は、食事介助の仕方に不安のある方、食事介助のコツを知りたい方に読んでいただきたい内容です。
要介護者と介助者の両方が食事を楽しい時間にするため、共に学んでいきましょう。
「食べること」は生きることに欠かせない行動の一つです。
なぜなら、身体は必要な栄養を摂取しなくては生きていけません。
また、食べることには「楽しみ」という要素もあります。
美味しいものを食べた時や食事をとる時の会話は、気持ちを明るくさせ生きる活力に繋がります。
さらには食事をする時の行動が、脳や筋肉への刺激になり、認知機能や食べる力の低下を防ぐでしょう。
しかし高齢になると、食べること自体が難しくなってくる要因がでてきます。
- 身体的な衰え
- 咀嚼や嚥下機能の低下
- 認知機能の低下
例えば、筋力の低下により箸やスプーンを持つことが難しくなったり、体力も衰え食べること自体に疲れてしまうことがあります。消化器官も弱り、胃液が出にくかったり腸の動きが悪かったりして、消化吸収の効率も落ちます。
さらには食べ物を嚙み潰す咀嚼機能が弱くなり硬い物が食べ物が噛めなかったり、飲み込む嚥下機能が低下して上手く飲み込めないこともあります。
それらが原因となり、誤って気道に入ることもありえます。
また認知機能の低下により、食べ物を食べ物と認識できなかったり、味覚の衰えや空腹感の喪失など様々な症状が出てきます。
これらのような要素が重なると、食事への欲求も少なくなってしまいます。
終いには食事をすることが難しくなり、低栄養状態に陥る危険があるのです。
食事介助の基本は「本人に出来ることはまかせ、出来ないところを手伝うこと」です。
これは介助全般の基本ですね。
時間がないから、忙しいから、と本人の口元に次々とスプーンを運ぶのは絶対にNGです。
高齢者の食事の事故を防ぎ、食事を美味しく自分から食べてもらうためには「食前、食中、食後」とそれぞれコツがあります。
- 声掛け・体調の確認
- 排泄を済ませる
- 環境づくり
- うがい・歯磨き、口の体操
- 正しい姿勢
まずは声掛けをしましょう。
「〇時ですよ。ご飯にしましょう。」などと声をかけ、食事が始まる認識を持ってもらいましょう。
なぜなら高齢になると、日中でもうたた寝をしたり、意識がいまいちハッキリしていない時もあるからです。
ハッキリした意識下で食事をとってもらい誤嚥を防ぎましょう。
また、体調も確認してください。
例えば「食欲はあるか?体調は悪くないか?」などを確認し、平常時と変化があるならメニューを変える必要があるでしょう。
食事の前には必ず排泄を済ませましょう。
なぜなら食事中にトイレに行きたくなると、トイレを我慢してしまったり、急いで食べてしまうことがあるためです。これらの行為は病気や事故のもとになります。
また、認知症の方が食事中にトイレに立ってしまうと、食事をしていたことを忘れることもあります。
その後、食事を続けてくれない可能性もありますので、中断しないよう注意しましょう。
食事に集中できるよう環境を整えましょう。
なぜなら食事への注意力が散漫になると、誤嚥の可能性が高まるからです。
テレビなどは消し、散らかっているところは片づけましょう。
時間がない時は布などで目隠しするだけでもOKです。
また、ポータブルトイレなどが置いてある場合は、換気などの匂い対策を講じてからにしましょう。
うがいや歯磨きをして口の中の細菌を減らしましょう。
なぜなら、誤嚥したとしても細菌を減らしておくことで、肺炎になるリスクを下げることができるからです。
また、口の中が刺激されることで唾液の分泌が良くなり、食事をしやすくなるでしょう。
さらに口腔体操や嚥下運動などと呼ばれる、お口の体操をすることも唾液の分泌を促します。
食事に必要な口回りの筋肉も鍛えられるため、習慣化するとよいでしょう。
こちらは日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会公式サイトで公開されている口腔体操です。
参考にしてください。
できるところから頑張りましょう。
正しい姿勢をとらせてあげることによって、誤嚥を防ぐことに繋がります。
イスなどに座っている場合と、ベッドなどで食事をとる場合の姿勢があります。
まず、自分で座る姿勢を保つことのできる人は、食卓に座って食べることを心がけます。
その際の注意点は5つ。
ベッドでの姿勢は頭の後ろに枕などを置き、リクライニングの角度に気を付けてください。
特に首がやや曲がる角度を保てると、誤嚥しにくくなります。
また、リクライニングの角度は一般的に45~60度とされています。
ただし、個人のとれる体勢などにより適切な角度は違いますので、相談しながら決めるようにしてください。
さらに食べこぼしてもいいよう、エプロンなどをつけてあげると良いでしょう。
- 横に座って介助
- 水分補給をしておく
- 少量ずつ口に運ぶ・急かさない
- 箸やスプーンは下から
- 30分以内に終わらせる
横に座って目線の高さを合わせることは、食事介助で最も基本の事柄です。
忙しいからと言って、立ったまま介助すると、要介護者は上を見上げる姿勢となります。これが、むせやすく誤嚥を誘発する原因となるのです。
したがって、食事介助の際は、必ず横に座って行いましょう。
高齢者になると唾液の分泌量が少なく、口の中が乾いていることが多いです。
乾燥は食べ物を飲み込みにくくするため、前もって水分をとってもらい、飲み込みやすくしましょう。
さらに最初は水分の多い物から食べ始めるのも良いでしょう。
誤嚥を防止するため、食べ物は少量づつ口に運びましょう。
目安はティスプーン1杯と言われています。
しっかりと飲み込んだのを確認してから、次を運びましょう。喉ぼとけを観察していると飲み込みを確認できますよ。
また、食事を次々と口へ運ぶと、喉に溜まり窒息や誤嚥の原因となります。
高齢者のペースに合わせて、介助するよう心がけましょう。
また、食事は高齢者の状態にあったものを用意しましょう。
※介護食の種類と区分への内部リンク貼り付け
箸やスプーンなどの食器は口の下から運びましょう。これもやはり食事介助の基本です。
上や水平から与えると、これも高齢者の顎が上を向くことになり、誤嚥の原因となります。
食べ物は口の手前に入れ、口を閉じたタイミングでスプーンを取り出しましょう。
また、食べ物の温度に注意しながら、バランスよく口に運んであげましょう。
一度の食事は30分以内に終わらせることを心がけましょう。
食事ペースはあくまで高齢者に合わせなければいけません。
しかし、あまりにも食事時間が長いと疲れてしまい、誤嚥の原因になりますし、最悪食事自体を嫌がる可能性もあります。
- 食事内容の確認
- 口腔ケア
- すぐに横にならない
食べ終わったら、食事の内容を簡単でも良いので記録しておきましょう。
例えば、何をどの程度食べたのか、食べ終わるまでの時間、食事の好き嫌いなどを把握することで、食事対策やメニューを考えるのに役立ちます。
特に食事をヘルパーなどにも任せている場合は、記録を残しておくことで情報を共有することができます。
食事後は口腔ケアを行い、口の中に何も残っていない状態にします。
これにより誤嚥を防ぎ、同時に口腔内を清潔に保つことができます。
食べ物が残っていると雑菌が繁殖し、虫歯や歯周病の原因となります。
場合によっては、これが食事を拒否する元凶ともなりかねません。
具体的には、歯磨きしてもらったり、入れ歯を洗浄したりして口腔ケアを行います。
最後は口の中に何も残っていないことを確認して終了です。
食べてすぐ横になると、胃から内容物が逆流してしまうことがあります。
よって、食後30分~1時間程度は横にならないでいてもらう事が大切です。
逆流すると口の中に残り、誤嚥の原因となります。
いかがでしたか?
紹介した「食前・食中・食後のコツ」をしっかり意識しましょう。
そうすれば、知らず知らずのうちに、正しい食事介助が身についていることでしょう。
また、食事中には「会話」も楽しい食事に不可欠な要素です。
慣れていないと、無言の「間」が結構あったりします。
その無言が気まずいモノでなければ問題ありませんが、大抵は身内であっても気まずいですよね。
プロの介護士などは、食事のメニューや好みなどをきっかけにして、コミュニケーションをとっています。
家族や親せきなどの身内であれば、趣味や昔話などもしやすいと思います。
注意点は「食事を飲み込もうとしている時に、話しかけない」ということ。
返事が誤嚥の原因となりかねませんからね。
タイミングを見計らって声掛けしてください。
コツをつかんで、要介護者にも介助者にも安全で楽しい食事にしましょう。
この記事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。