地域包括支援センターとは-役割と利用方法

「地域包括支援センターって何するところ?」

「そういえば近所にあるけど、入ったこともないよ」

なんて方いませんか?介護に携わらなければ、その名前すら知らない人も多いでしょう。

そのような現状であるため、当然センターの役割やその利用方法が分からない方も多いと思います。

今回は地域包括センターの役割や業務内容と合わせて、その活用方法まで紹介していきます。

介護を始めたばかり方、これから介護について考え始めた方などに読んでいただけると幸いです。

地域包括支援センターの役割

地域包括支援センターとは、介護などの分野で高齢者を支える「総合相談窓口」です。

高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的として設置されています。

厚生労働省は2025年(令和7年)を目途に、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい生活を人生の最後まで続けることが出来るよう、「地域の包括的な支援とサービス提供体制」の構築を目指しています。

地域包括センターは、その中核を担う機関として各市町村に設置されているのです。

また地域の包括的な支援とサービス提供体制を「地域包括ケアシステム」と呼びます。

このシステムの実現に向けて、高齢者の権利擁護や総合相談、地域支援体制づくり、介護予防の援助などの活動をしています。

そのため、介護や福祉、医療、保健などの分野で困っていることがあれば、センターに相談してみましょう。

専門知識を持った職員が相談に応じてくれます。

地域包括支援センターの利用対象者と設置場所

センターを利用できる人

地域包括支援センターは、地域に住んでいる65歳以上の高齢者が利用できます。

さらにその高齢者の家族と支援活動に関わっている方も対象となります。

また、高齢者と家族(支援者)が離れて住んでいる場合は、注意が必要です。

相談は高齢者が住んでいる場所の地域包括支援センターに行いましょう。

センターの設置場所

地域包括支援センターは、日常生活圏ごとに設置されているのが原則です。

というのも、地域包括ケアシステムは市町村が定める日常生活圏域ごとに構築されるもの、とされているからです。

日常生活圏域とは、30分で駆け付けられる圏域であり、概ね中学校区ほどになります。

そのためセンターはその支部も合わせると、全国で7000箇所以上にのぼります。

また、センターは設置した市町村が直接運営しているケースと、社会福祉法人や医療法人、民間会社などが自治体から委託されて運営しているケースがあります。

割合的には市町村直営が2割、委託型が8割ほどとなっています。

地域包括支援センター

主な4つの業務

地域包括支援センターの主な業務は下記の4つになります。

地域包括支援センターの主な業務
  1. 総合相談支援業務
  2. 権利擁護業務
  3. 介護予防ケアマネジメント
  4. 包括的・継続的ケアマネジメント

また、センターによっては市町村からの委託により「在宅医療・在宅介護」を担っていることもあります。

これらの業務をこなすため、センターには保健師や社会福祉士、ケアマネージャーなどが配置されています。

1.総合相談支援業務

地域包括支援センターは、地域にある様々な社会資源…医療・福祉施設、介護制度などを活用し、高齢者の困りごとを解決するのに適したサービスを案内しています。

高齢者の生活上の困りごとに対する総合案内所ともいえるでしょう。

また高齢者本人だけでなく、その家族からも相談を受け付けています。

特に初めての家族介護は分からないことだらけです。

その悩みに対して、専門的知識を交えて一緒に解決策を考えてくれるでしょう。

さらに介護保険に関する手続きの申請なども受け付けているので、一石二鳥です。

電話で相談する女性

2.権利擁護業務

高齢者の権利擁護をすることも重要なセンターの役割です。

ちなみに、権利擁護とは「アドボカシー」ともいい、認知機能の低下や知的・精神的障害のため、物事に対する判断が不十分だったり、自分の意志を上手く伝えられない人のために、代理人が自己決定のサポートをしたり、代弁して権利を擁護することを言います。

高齢者の権利擁護には下記のようなものが当てはまります。

  • 詐欺や悪徳商法への消費者被害への対応
  • 高齢者虐待の早期発見や防止
  • 介護放棄
  • 介護保険サービスの契約や利用
  • 金銭管理(金銭の不当な使い込みや引出しの防止)

虐待防止に関しては本人や家族だけでなく、近所の方からの情報なども受け付けています。

さらには成年後見制度の手続き支援も行っています。

認知症にかかってしまった時の介護保険の契約や金銭管理、法律上の手続きなどに備えています。

このような各種の支援制度の利用についてセンターからアドバイスを受けることが出来ます。

3.介護予防ケアマネジメント

介護認定で要支援判定を受けた方や、支援や介護が必要になる可能性の高い人に対して、介護予防を目的とした支援を行っています。

身体的な症状の悪化を防ぎ、自立した生活の継続を目指しています。

要支援の認定を受けた方には、介護予防につながる介護保険サービスの利用プランを相談しながら決めていきます。

また介護認定で「非該当」の方や介護予防に取り組みたい方には、身体の状態や日常生活、地域活動状況を把握分析して、課題を見つけ出します。

その上で「運動器の機能向上」「閉じこもり予防」「認知機能低下予防」など、各種の介護予防教室などを行なったり、介護予防サービスを紹介したりします。

4.包括的・継続的ケアマネジメント

センターは高齢者が暮らしやすい地域にするため、地域住民から地域全体の医療・介護・福祉などの専門家までの幅広いネットワークを作り、その地域の高齢者の相談対応や課題解決を行います。

具体的な活動は下記のとおりです。

  • 地域ケア会議の開催
  • 自立支援型ケアマネジメントの支援
  • 支援困難事例への指導やアドバイス
  • ケアマネージャーへの個別支援

少し意外かもしれませんが、地域のケアマネージャーへの個別支援も地域包括支援センターの重要な役割のひとつです。

というのも、ケアマネージャーは要介護者へのケアマネジメントを行っていますが、ケアマネージャーだけでは対応困難になる事例も少なくありません。

そのような時は、地域包括支援センターが連携し、ケアマネージャーの業務をサポートしています。

地域ケアマネージャー無くして、地域ケアマネジメントもありえないのです。

さらには、ケアマネージャーを対象とした研修会なども開催しています。

相談例と対応

前述の通り、地域包括支援センターには高齢者の「総合相談支援業務」があります。

つまり、高齢者の「よろず相談所」ともいえます。

しかし、どのようなことまで相談してよいモノか、迷う人も多いのが正直なところ。

どのような相談があり、どのような対応がとられたのか、例を見てみましょう。

相談

ケース1、自宅での一人暮らしを続けたい

一人暮らしをしていた70代のAさん。自宅内で転倒し骨折。

手術とリハビリを経て自宅へ戻れることになったが、以前のように家事をこなすのは難しく一人暮らしは困難となった。

センターの相談員は、介護保険の申請手続き支援し、ホームヘルパーの派遣など訪問サービスの利用を提案。

自宅での生活を継続できるよう支援した。

ケース2、神社にパジャマの高齢者が

散歩中だったAさん。近所の神社の境内にパジャマ姿の高齢者Bさんを発見。

以前にも同様のBさんを見かけており、地域包括支援センターへ相談した。

センター職員はBさん宅を訪問し、認知症を患っていることを確認。親族に介護制度を説明し、後に介護サービスを利用することになった。

ケース3、引っ越し先で友達がいない

一人暮らしから、別の街で暮らす息子夫婦と同居を始めた高齢者のCさん。

引っ越し先の見知らぬ土地で友達もいないため、引きこもりがちになったCさんを心配し、息子がセンターへ相談した。

相談員は地域のカルチャーセンターや交流スペースなどを紹介。多くのシルバーサークルがあることを知ったCさん。囲碁や将棋などの趣味を通じて新しい友人も増えたとのこと。

ケース4、虐待の可能性が

集合住宅に暮らすDさん。隣には高齢夫婦が住んでいたが、ある時連日で隣から怒声が聞こえてきた。

おかしいと感じたDさんはセンターへ相談。

センター職員が隣へ確認に行くと、在宅介護の疲れから夫が妻を虐待していることが判明。

すぐに担当のケアマネージャーや職員で会議が開かれ、妻は介護施設へ入居する運びとなった。

センター利用のメリット・デメリット

地域包括センター利用のメリット

一番大きなメリットは、介護に関する相談を効率よく対応してもらえることです。

職員の対応はもちろん、必要があればケアマネージャーや保健師、社会福祉士などのプロフェッショナルが相談に応じてくれます。

あなたの介護に関する不安に的確なアドバイスがもらえるでしょう。

ちなみに相談自体は無料です。

経済的な問題で介護サービスや介護相談に抵抗がある人も少なくありません。

そのような現状を考えると、相談が無料であることはメリットのひとつと言えるでしょう。

また、高齢者虐待などの問題を解決に導けることも、大きなメリットではないでしょうか。

あなたが高齢者の虐待に気づいたとしても、あなた自身で虐待行為をやめさせたりするのは困難でしょう。

しかし、地域包括支援センターは、高齢者の虐待や権利擁護を扱う機関であり専門家が在籍しています。相談いただければ、早期発見、迅速な対応が可能となるでしょう。

包括支援センターの車イス

地域包括支援センター利用のデメリット

センターは介護の「相談窓口」です。

センター自身で介護サービスを提供しているわけではありません。

相談したからと言ってセンター自体が悩みを解決してくれるわけではないのです。

あくまで介護・福祉などの必要なサービスを紹介して、適切な介護事業所や医療機関・行政機関を案内し調整連絡するのが役割だと覚えておきましょう。

それでも一つの不安や悩みに対して、解決してくれる事業所を自分で探すのは大変です。

利用者が地域包括支援センターを利用するメリットは大きいでしょう。

まとめ₋少しでも不安がれば相談を!

介護への明るい未来

繰り返しになりますが、地域包括支援センターは高齢者の総合相談窓口です。

高齢者にまつわる不安が少しでもあれば、相談してください。

たとえ本人や家族でなくても構いません。

「こんな悩みを相談してよいのかな?」「この程度のことで電話をかけても良いのだろうか?」などと思わず、相談してみましょう。

なぜなら少しの不安を放置しておけば、大きな問題へと発展しかねないからです。

小さなうちに問題の芽を摘み取ったと考えましょう。

そもそもセンターは地域の高齢者の生活を守るための機関なので、真摯な対応をしてくれるはずです。

いかがでしたか?

この記事があなたの一助となれば幸いです。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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