生前契約とは-生前事務委任契約で安心の老後生活を

生前事務委任契約とは

「一人暮らしで、病気をしてしまったらどうしよう…」

「アパートを契約するにも、入院するにも、保証人が必要なんだけど…」

このような悩みを抱える高齢者の方が多くいらっしゃいます。

なぜなら、人は高齢になると身体機能や判断能力が衰えてきます。その程度により、日常生活や財産管理に支障をきたす場合も多くあるからです。

そんな時、親族のサポートを受けることができれば、不安の解消に繋がりますが「遠くで暮らしている子供たちに、迷惑をかけたくない。」と考えている方もいらっしゃるでしょう。

特に一人暮らしをされている高齢者や老夫婦世帯には、サポートを得られない生活に漫然とした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回はこのような悩みを解決する生前契約サービス…特に「生前事務委任契約」について解説したいと思います。

この記事は…

  • 日常生活に不安のある高齢者の方
  • 軽度の認知症、もしくは認知症の恐れがあると診断された方
  • 遠距離で一人暮らしをしている高齢者のご家族
  • 生前契約に興味のある方

…などに、お読みいただけると幸いです。

生前契約とは

病気や老化により適切な判断力が無くなった時や死後に備えて、身元の引取りや財産の管理などを任せる制度を「生前契約と言います。

これにより、自分に十分な判断能力がある時に自分の意思で、判断能力をなくした場合に備えておくことが出来ます。

万一の場合、どのような療養や看護を希望し、サポートしてもらうのか…

そして、最後の看取りや葬儀はどのように執り行いたいのか…

これらを子供や親族に迷惑かけることなく決めておきます。

つまり生前契約とは、「いつまでも自分らしい生き方をするため」と「最後まで自己責任で生きるため」の制度です。

主に身寄りのない方や、親族に負担をかけたくない方に利用されています。

ガッツポーズをするシニア女性

生前契約の種類

契約の種類
  • 生前事務委任契約
  • 任意後見契約
  • 死後事務委任契約

生前契約は主に3つの種類に分けられます。

ひとつ目が、判断力が十分にあるうちから、財産管理や病院・保健の手続きをサポートする「生前事務委任契約」。

ふたつ目が、病気などにより判断力が低下した方をサポートする任意後見制度」。

みっつ目が、自分の死後に生じる事務仕事を依頼する「死後事務委任契約」。

この記事では、ひとつ目の「生前事務任意契約」に焦点をあてて解説します。

生活関連の手続きもサポートする生前事務委任契約

不動産の管理や金融取引の代行などのイメージがある「生前事務委任契約」ですが、そのサポート内容は多岐に渡ります。

従来は家族が担ってきていた内容を、生前事務委任契約の受任者(契約を履行する人…つまりサポートしてくれる人)が請け負います。

まずは、その契約内容を見ていきましょう。

生前事務委任契約の内容

生前事務委託契約のサポート内容
  1. 生活・療養看護
  2. 財産管理
  3. その他の生活支援

1.生活・療養看護

生活や医療・介護に関する手続き全般をサポートします。

例えば、病院での入退院の手続きや介護施設との契約などになります。

さらには公的機関…市役所などへの要介護認定の申請や介護サービスの利用契約手続きも委任することが出来ます。

また、契約や手続きのみならず、医療費や介護施設の利用料など「支払い」に関してもサポートを受けることが可能です。

  • 医療機関の受診に関する支援
  • 入退院の手続き、介護施設との契約代行
  • 生活・療養看護などに関わる費用の支払い代行
  • 介護保険利用の契約・変更・解除などの代行
  • 社会福祉サービス受給手続きとサービス内容の確認
  • 手術承諾の代理
  • 賃貸住宅入居時の身元引受保障

2.財産管理

自分が生活していくうえでの、資産管理を行ってもらえます。

例えば、銀行など金融機関への入金や不動産収入・年金受給の他、アパートなどの賃料や電気や水道など公共料金の支払いなどになります。

もしローンやクレジットなどの債務があれば、計画的にその返済も行います。

その他には、保険の契約や保険金の請求、さらには行政機関での各種申請・申告なども含まれます。

  • 生活資金の管理
  • 金融取引の代行
  • 不動産の管理・維持
  • 債務の返済行為
  • 保険手続き
  • 行政機関、税務署への申請・申告
財産管理

3.その他の生活支援

ゆとりある老後生活を送るためには、そのための資金計画が必要です。

また、自分が亡くなった後の葬儀や相続に関しては、しっかりしたヒアリングと定期的な更新が必要です。

そのため、資金計画の作成やエンディングノートの作成を、サービスの一環として取り入れている場合もあります。

  • 資金計画…キャッシュフロー表・資産負債の一覧表作成
  • エンディングノートの作成と更新

生前事務委任契約するメリット

多岐に渡るサポート内容ですが、生前事務委託契約をまとめると主なメリットは次の5つです。

生前事務委託契約の5つのメリット
  1. 各種支払いや手続きの負担を軽減できる
  2. 身元引受保証で契約等がスムーズ
  3. 詐欺や悪質な契約から身を守りやすい
  4. セカンドライフの資金枯渇を回避しやすい
  5. 看取りや葬儀、相続に関して熟考する機会になる

1.各種支払いや手続きの負担を軽減できる

適正な財産管理を任せることができます。

また、金融機関や行政機関へ出向する手間や労力を省くことができます。

さらには近年普及しているWeb上での手続きもサポートしてもらえるため、IT機器に不慣れな方でも安心して手続きを行なえます。

特に、病床にふしており身体への負担も大きい入院手続きを任せることが出来るのは、ありがたいことでしょう。

手続きの代行

2.身元引受保障で契約等がスムーズ

一人暮らしや家族と疎遠になっている方には、身元の引き受けサービスも大きなメリットです。

なぜなら介護施設や賃貸住宅への入居の際には、身元引受保証が必要になります。

そればかりか、就職の際にも身元引受が必要なケースがほとんど。

また、病院の入院や手術に関しても承諾や保証が必要となります。

日常生活ではほとんど意識しませんが、意外に身元引受が必要になるケースは多くあるのです。

3.詐欺や悪質な契約から身を守りやすい

生前事務委託契約の受任者と相談することで、詐欺や悪質な契約から身を守りやすくなるでしょう。

近年は様々な詐欺や悪質な契約がまん延しています。

特に高齢者を狙った振り込め詐欺、助成金詐欺、悪質リフォーム業者などが多くいます。

これからか身を守るには、とにかく一人で判断しない事。

そのため契約や金銭が絡むことに関しては、受任者とよく相談して決めましょう。

詐欺・悪徳商法から身を守ろう

4.セカンドライフの資金枯渇を回避しやすい

生前事務委託契約を扱う会社の中には、契約者の退職後のライフプランを作成してくれるサービスもあります。

このサービスを利用することにより、将来の年間収入・支出を予測し、キャッシュフロー表と資産・負債の一覧表を作成してくれます。

これにより、将来の生活水準がわかり、余裕ある老後を過ごすための資産形成の指標となるでしょう。

このライフプランの作成は、ファイナンシャルプランナーの有資格者が行うため信頼性も高く、具体的な数字で表されるため、想像もしやすいでしょう。

また、セカンドライフは収入源が限られるため、早いうちからの取り組みと計画的な立ち回りが重要になります。

第二の人生を楽しみつつ、資金が枯渇しないライフプランを練りましょう。

5.看取りや葬儀、相続に関して熟考する機会になる

前項と同様に、エンディングノート作成のサービスを提供している会社もあります。

エンディングノートとは、親族への思いや感謝を綴るだけでなく、亡くなった際の葬儀や相続・財産などの関連事項を明記できます。

これにより、目を背けがちな「己の人生の最後」について、熟考する良い機会となります。

エンディングノートを書く男性

最後の看取りや葬儀の形式、相続についての希望を綴るだけでなく、財産の種類や所在を明記することで、残された親族への負担を軽減することが出来ます。

ただしエンディングノートには法的効力は発生しません。

そのため、希望する通りの相続を行って欲しい場合は「遺言書」の作成が必要になってきます。

任意後見契約との違い

また、生前契約の中には「任意後見契約」という、「生前事務委託契約」との類似制度があります。

実際、受任者の業務自体には大きな差はありません。

受任者は契約者(委任者)の代わりに生活資金の管理や各種手続き、身元引受などを行います。

では、何が違うのか?

具体的には「契約者の判断能力の有無」と「公正証書での作成」になります。

下記の表で確認しましょう。

生前事務委託契約

  • 契約内容は基本的に自由
  • 契約者本人に判断能力がある時に締結
  • 契約書を作成(必要であれば公正証書)
  • 本人に判断能力があるうちから利用可能

任意後見契約

  • 契約内容は基本的に自由
  • 契約者本人に判断能力がある時に締結
  • 必ず公正証書で作成
  • 契約者本人の判断能力が減退してから利用可能
  • 家庭裁判所で「任意後見監督人」選任の審判を受けなければならない

一番の違いは、任意後見契約は契約者本人の判断能力が減退してから、履行されます。

つまり履行されるときには、契約者本人による契約内容の確認が取れません。

そのため、公正証書で作成されるうえ、家庭裁判所へ「任意後見監督人」の選任の申し立てが必要になるのです。

ちなみに公正証書とは、公証事務を担う公務員に作成してもらう書類で、高い証明力を有します。

生前事務委任契約の流れと費用

ここからは、実際に生前事務委託契約を締結する流れと、その費用について説明します。

生前事務委任契約は原則、契約内容を自由に定めることが出来ます。

また、その報酬に関しても自由に設定できます。

ただし、契約を受ける受任者は、法人や弁護士や行政書士など士業専門家の事業主であり、料金プランが定められていることがほとんどです。

相談するシニア夫婦

一般的な契約の流れ

契約先が法人であれ、士業の事業主であれ、相手方はその道のプロフェッショナルです。

基本的には相手方の説明をよく聞いて、手続きを進めることになります。

その際、希望を伝え、疑問点は質問し、納得したうえで手続きを進めることが重要です。

生前事務委託契約の一般的な流れ
  1. 受任者となる相手方担当者からの詳細な説明
  2. 面談で、本人(委任者)の希望する契約内容を担当者に伝える
  3. 担当者と公証人が打合せして、契約書の原案を作成
  4. 作成された公正証書の原案を本人が確認する
  5. 本人(委任者)と相手方(受任者)が公証役場で公正証書を作成

法人との契約では、「説明会」が開催される場合や「サービスの利用登録申し込み」などが必要な場合もあります。

また、生前事務委託契約の場合は契約書でも法的に問題ありませんが、契約内容の改ざんや捏造を防ぐ目的で公正証書にするケースも多くあります

さらには、判断力が減衰した際の対応に困らないよう、「任意後見契約」も必ず結んでもらう法人もありますので、覚えておきましょう。

契約にかかる費用

各事務所で契約費用は自由に設定できますが、概ねの目安は以下の通り。

申し込み金約50,000円
契約事務手数料約200,000円
公正証書作成手数料約100,000円
公正証書証人費用約12,000円(当日払い)
 契約時にかかる費用

契約事務手数料は名称もマチマチで、事務所間で差額が大きいのが特徴。

また、契約後に月額や個別にかかる費用もあります。

事務委任報酬月額約10,000~100,000円
サポート費用一日 約10000円
半日 約7000円 
身元引受保証入院・入居等1件当たり 約5000円
緊急連絡1件当たり 約3000円
ライフプラン作成約50,000円
エンディングノート作成約50,000円
 月額および個別料金

月額料金は法人や士業など、どこに依頼するかで大きく変わる傾向があります。

法人では「月額10,000~30,000円+個別料金」、士業では行政書士「月額約40000~50000円」、司法書士「月額約100,000円」が一般的なようです。

多額の費用が必要

契約に関する注意点

前項をお読みいただいて判るように、生前事務委託契約には多額の費用が必要です。

専門性も高く、サービス内容についてよく確認しておく必要があります。

そのため、無用なトラブルの防止として、契約前に注意する点を挙げておきましょう。

契約前の注意点
  1. 契約先の法人や士業事務所が安全かどうか
  2. サービスが自分にあっているか
  3. 支払いが可能かどうか
  4. 契約後の見直し、解約についての確認

1.契約先の法人や士業事務所が安全かどうか

契約をする前に、サービス提供先の法人や事務所が安全なのか、専門性が高いかどうかを確認しましょう。

なぜなら、同じ司法書士や行政書士の看板を掲げていても、得意な専門分野は違うからです。

そのため、士業事務所の場合は、まずホームページを見て専門分野を確認します。

生前事務委任契約や任意後見契約等の内容が掲載されていれば、専門性が高く生前事務委託契約に明るい事務所と言えるでしょう。

法人についても同様です。

ホームページから事業内容を確認しましょう。

そして、電話等で問い合わせ、丁寧な対応かどうかを判断します。

初回相談は無料という法人や事務所が多いので、実際に話をして疑問点や不明な点に誠実に答えてくれるかどうかを見てみましょう。

専門の士業事務所かどうか?

2.サービスが自分に合っているか

自分の希望する生前事務委任契約のサービス内容を受けてくれるかどうかは、契約先の事務所や法人次第です。

そのため自分のニーズと、契約先のサービスがマッチしているかどうか確認しましょう。

一般的な士業事務所では、財産管理や生活・医療・看護の手続きといった基本的な生前事務委託契約のみという場合が多いです。

また、ライフプランやエンディングノートの作成といったサービスは、法人がオプションとして提供している場合が多くあります。

まずは自分の希望を明確にして、契約先を選定しましょう。

3.支払いが可能かどうか

生前契約には、契約時ばかりでなく、月額や手数料といった諸費用も掛かってきます。

専門家との契約のため、費用も多額になりがちです。

自分が利用するであろう期間を計算し、支払い可能な額かどうかを確認しておきましょう。

4.契約後の見直し、解約についての確認

生前事務委任契約は長期間におよぶことが多く、時間が経つにしたがって自分のニーズも変化します。

その際、契約内容の変更ができるか、場合によっては解約も可能かどうか、事前に確認しておきましょう。

その場合、費用がかかるかどうかも確かめておくと安心です。

~最後に~

生前事務委任契約は、一人暮らしで身寄りのない高齢者や、子供に迷惑をかけたくない高齢夫婦の強い味方となるサービスです。

特に入居や就職に関する身元引受保証は、自分一人ではどうにもなりません。

さらには、身体機能の衰えによる事務手続きの困難さを強力にサポートしてくれます。

ただし、そのためには事前の契約と少なくない費用負担が必要になります。

自分に合った内容を見極めて、契約しましょう。

自分に合った生前契約を結ぼう

また、判断能力が衰えた場合、自身が亡くなった場合の対策も考えておいたほうが良いでしょう

これを機に生前契約の「任意後見契約」と「死後事務委任契約」についても、検討をはじめることをお勧めします。

なお、ビスタサポートではNPOりすシステム様の生前契約をお勧めしております。

興味のある方は下記リンクからご覧ください。

https://www.seizenkeiyaku.org

いかがでしたか?

この記事があなたの一助となれば幸いです。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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